
離婚後、教育資金、老後資金が用意できるか不安です
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、離婚協議中の47歳、会社員女性。2人の子どもを引き取り、養育費の支払いは期待できず、教育資金や自身の老後資金について不安で仕方がないとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
カモミールさん(仮名)女性/会社員/47歳
兵庫/持ち家・マンション
家族構成
子ども2人(ともに中学生)、母親(74歳)相談内容
将来生活が破綻するように思っています。離婚予定です。私の名義で新築マンションを購入したばかりで、養育費は現在14万円を別にもらっていますが、恐らく払わなくなることが容易に想像できます。これから子どもたちが大学進学を控え、それを乗り越えていけるのか、老後1人で暮らしていけるのかどうか、不安しかない毎日です。
家計収支データ
カモミールさんの家計収支データは図表のとおりです。
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家計収支データ補足
(1)離婚について現在、離婚調停中。財産分与・養育費で揉めている。訴訟まで行く可能性あり。すでに1年前から別居。それまで住んでいた自宅(夫名義)は現在、売却手続き中。財産分与については、上記データには含まず。
(2)住宅ローンとその他コスト
・借入額/3000万円
・返済期間/33年
・現在の金利/1.4%(フラット35)
・固定資産税額/年額9万4000円
(3)今後ボーナスの使い道について
ボーナスは毎年金額の変動が大きく、基本的にはアテにせず、あくまで予備費、何もなければ貯蓄という位置づけ。
(4)家計収支について
相談者コメント「今は生活に追われていて、貯蓄という概念が自分の中にありません。毎月大赤字と思っています。今は離婚前で生活費用として毎月14万円が入っていますが、貯蓄とは到底思えないほど毎月ギリギリな生活です」
(5)養育費について
相談者コメント「離婚調停中で揉めているところですが、法的な算定額は14万円です。大学卒業22歳まで払っていただく交渉をしています。弁護士さんが入る前には、転職をして養育費は払わないなどと話しており、離婚後すぐに雲隠れしそうだなと思っています」
(6)加入保険について
・本人/個人年金保険(65歳10年確定、年金月額400米ドル)=毎月の保険料3万2000円
・本人/医療保険(終身、掛け捨て)=毎月の保険料4000円
・本人/収入保障保険(勤務先で加入)=毎月の保険料3000円
(※)他に、子ども2人の学資保険(18歳満期、満期金200万円)は離婚成立後、引き継いで支払う予定。
(7)教育費の内訳
・進学塾/8万円(2人分、多いときはさらに5万円ほどかかる)
・学校費用/2万7000円(2人分)
(8)食費の内訳
食費10万円、外食1万円、勤務先の昼食代2万円
相談者コメント「高額なのは、特別な理由はありません。子どもは食欲旺盛で肉が中心。普通に安いスーパーで買い物しているのに、高額になり、非常に困っています……」
(9)雑費の内訳
主に衣類(月1万〜3万円)、日用品(月3万〜4万円)、その他ペット費用(エサ代、ペット保険、予防接種、その他)
(10)同居の母親について
同居のため、生活費はいっしょ。医療保険、衣類、通院費等は本人が出している。健康面で大きな支障はなく、家事の多くをこなし、普通の家庭の主婦と変わらないことに、相談者は大変助かっている。
(11)定年と退職金について
定年は65歳。再雇用で70歳まで勤務可能。退職金は企業型確定拠出年金。マッチング拠出は現在限度額まで積み立てている。
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上の子は高校から私立の可能性もあり。
FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:養育費にかかわらず、家計の見直しをアドバイス2:食費と雑費で少なくとも8万円減を
アドバイス3:定年65歳のメリットを活かそう
アドバイス1:養育費にかかわらず、家計の見直しを
まず、かかる教育費をざっと試算してみます。大学を私立文系とすると約400万円ですから、2人で800万円。高校は、上のお子さんが私立に進学した場合で300万円。下のお子さんを公立高校とし、150万円程度とします。その他コスト(通学費、教科書代、私立理系のケースなど)も考慮すると、目安として1500万円程度は見ておいた方が無難でしょう。
次に貯蓄ですが、問題は離婚後の養育費をどの程度考慮するか。カモミールさんの想定では、早々に養育費はストップするとのこと。弁護士さんが間に入っているようなので、その点で受け取れるようアドバイスを得られると思いますが、ここではいくつかのケースを想定してみます。
今後、算定された額=月14万円を受け取れる場合、毎月8万4000円(確定拠出年金のマッチング拠出分1万2000円、社内積立3万円は含まない)を貯蓄に回すことができます。合わせてボーナスから30万円貯蓄できれば、年間130万円が貯められます。
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一方、まったく支払われなくなると、その時点で現状、毎月の収支はわずかですが赤字に陥ります。確定拠出年金と社内積立も余裕資金がなくなるため、続けるには結果的に貯蓄を取り崩す必要があります。
つまりは、社内積立の現在の残高が不明なので、明確にはいえませんが、養育費を予定どおり受け取れても、必要な教育資金が準備できない可能性も否定できません。離婚についていろいろ時間を取られ、心身ともきつい時期ではあると思いますが、これをキッカケに、家計の見直し、貯蓄率のアップを目指してほしいところです。
アドバイス2:食費と雑費で少なくとも8万円減を
では、具体的にどう見直すのか。手をつけるべきは、カモミールさんも気づかれていると思いますが、食費と雑費となります。それだけで計21万円。給与の40%を占める金額です。理由はどうであれ、多いといわざるをえません。食費の13万円ですが、外食1万円、勤務先の昼食2万円はいいとして、家庭でのいわゆる食費に10万円は、食べ盛りのお子さんがいるとしても、コストは下げたい。
予算制にしてその中でやりくりしてはどうでしょう。例えば、週1万5000円と決めれば、月3万〜4万円節約できます。同居のお母さんの協力も得ながら、工夫していくべきです。
雑費については、とにかく本当に必要なもの以外は買わない、という意識を持つこと。場合によってはお子さんに我慢を強いることもあると思います。そこは支出の優先順位を考え、低いものは買わないことを習慣づけるしかないでしょう。理想としては、半分の4万円程度に抑えたいところです。
また、現在10万円を計上している教育費ですが、今後は先に試算した教育資金が含まれていきますので、その資金を貯めることにより、毎月の教育費は実質減っていきます。児童手当が数年後になくなるため、その分、世帯収入は下がりますが、それでも貯蓄はしやすく(家計支出が低く)なるはずです。
また、学資保険については契約者を変更して、今後カモミールさんが保険料を支払ってくよう進めていると思いますので、その保険料(月2万円程度)も結局は教育資金の用意となり、家計としては問題ありません。
家計の見直しがスムーズに進めば、今のカモミールさんの収入だけでも月7万円程度、さらに高校入学以降、現在の月10万円の教育費も実質、教育資金のための貯蓄とほぼイコールになるので、貯蓄ペースは格段に上がります。ボーナスも含めると、下のお子さんが大学卒業までに1500万円貯めることも可能です。
そのためにも、確定拠出年金のマッチング拠出は教育資金の準備が終わるまで、中断した方がいいでしよう。もし、つみたてNISAもされているならこれも停止します。
アドバイス3:定年65歳のメリットを活かそう
最後に老後ですが、資金の準備として、まずは教育資金が優先となります。心配される気持ちはわかりますが、必要以上に悩むのはかえって逆効果。幸い、定年が65歳ですから、老後資金を準備する期間が10年近くあります。また、公的年金受給となるまで収入を得られるため、無収入無年金の期間がないことが確定しているのも安心材料。定年まで、貯蓄ペースもおそらく月20万円は可能でしょう。ざっと2500万円程度は新たに貯めることができます。
気になるとすれば住宅ローン。完済が80歳のとき。ただし、これも状況を考えると仕方がありません。個人年金保険からの年金や確定拠出年金を一括で受け取り、それを原資に繰上返済するのも、選択肢のひとつでしょう。
ともあれ、今は家計管理まで十分に気が回らず、心配だけが先行している状態だと思われます。
確かに、養育費が受け取れなければ、マネープランとしては大きなダメージですが、それでも家計をしっかり見直していけば、教育資金も老後資金もさほど心配は要らない程度に準備できると考えます。
収入は決して低くありません。必要以上に不安にならず、家族で協力し合い、貯蓄家計を目指してください。
相談者「カモミール」さんから寄せられた感想
生活環境が大きく変わりつつある日々の中で、毎日の生活に追われて、親子共々世帯年収が現在の2倍以上だった以前の感覚が抜けないままです。今後の生活には不安ばかりでしたが、今回アドバイスをいただき、家計を見直すことで教育費、老後資金も心配がないとわかり安心できました。しかし、食費、雑費の削減が絶対であることがわかりましたので、家族みんなで話し合い、まずは家計の健全化を図ろうと思います。ありがとうございました。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:清水京武
(文:あるじゃん 編集部)