都市部で「園庭」のない保育園が増加 「窓は開けにくくなり、音も日当たりも風通しにも影響」と専門家

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2023年02月02日 11:30  AERA dot.

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AERA 2023年2月6日号より
「子どもの声がうるさい」などと苦情を受け、長野市が公園の廃止が決めた報道は大きな話題になった。子どもと騒音の問題が注目を集める中、都市部では園庭のない保育園の増加も無視できない問題だ。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。


【写真】近隣住民からの苦情を受け、長野市が3月末での廃止を決めている青木島遊園地*  *  *


 現在、国は園庭を持たなくても保育園の開設を認めている。そのため、都市部で新設される園は、園庭の無い園も多い。保育園を考える親の会の「100都市保育力充実度チェック」によると、2017年度の園庭保有率は100市区平均で76.6%だったが、22年度は69.8%に。東京23区平均では53.6%から39.8%へと大幅に低下した。千代田区、中央区、文京区、港区は園庭がある園は2割に満たない。


「園庭がないことで隣の敷地と建物が近くなり、窓を開ければすぐ隣の家、という状況を生んでしまいました。そうなると窓は開けにくくなる。園庭はいろんな意味でバッファーになっていたはずなんです。子どもが遊ぶだけの役割に留まらず、音も日当たりも風通しにも影響を与えます」(「こどものための音環境デザイン」代表理事の船場ひさおさん)


 園庭がない場合、近隣の公園などで外遊びをさせるしかなくなる。同じような園がいくつもある地域では、小さな公園に何十人もの園児がひしめく状況も生まれている。そんななか、新たに認可保育所を開設する際に、なるべく園庭を設けることを条件に増園を進めてきたのが東京都三鷹市だ。


「自前の園庭があれば、遠くの公園にわざわざ連れていく必要がありません。立地的に難しいという園も一部ありますが、保育の質の確保の観点から園庭設置をお願いしてきました」(担当者)


 このかいあってか三鷹市内の保育所は園庭保有率が84.3%(22年度)だ。


 住宅街と比べて騒音苦情が少なく見える駅近の園。通勤にも便利なため、親にとっては利点も多いが、子どもにとっては問題もある。船場さんは、幹線道路沿いや高架下の保育施設が増えていることに懸念を示す。


 幹線道路沿いにある保育園の昼寝中の室内音を調べると、窓を閉めた状態でも、ダンプカーの通過などで音が10デシベルも上がった。昼寝中の子どもが音で起きてしまうこともあった。


「高架下の園では、音に加えて保育室が振動するところもあります。子どもは疲れると寝てはくれるのですが、眠りの質が懸念されます」(船場さん)


 保育施設と音の環境を研究する片岡寛子さん(電気通信大学特任助教)は、狭い園庭にもかかわらず、拡声器で子どもたちに声を掛ける園に遭遇した。その保育園は幹線道路沿いでかつ高架下にあり、そうでもしないと保育士の声が聞こえないからだ。


「保育施設から出る騒音は気にしなくていいですし、駅近で送迎も便利です。でも、騒音に曝露(ばくろ)された環境で子どもが育つと、集中力が下がるという研究もあります。子ども目線の立地とは言えません」(片岡さん)


 船場さんの研究では、音環境の整っている施設とそうでない施設では、子どもたちの行動にも違いが見られた。


「まず子どもの声の出し方が違います。吸音材を使った音環境を整えた園の子どもたちは、集中して遊び込みやすくなり、穏やかで落ち着く傾向にあります。反対に吸音されていない騒がしい環境にいると、一つの遊びに集中する時間が短い、走り回る子どもが増えるなどの傾向がみられます」(船場さん)


 こうしてみると、子どもと騒音の問題は施設の「外」だけでなく、「内」の問題にも波及している。(フリーランス記者・宮本さおり、ライター・大楽眞衣子)


※AERA 2023年2月6日号より抜粋


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