Valveから発売された小型ゲーミングPC「Steam Deck」は、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」のゲームを気軽に持ち運んでプレイできるのが特徴だ。OSは「SteamOS 3.0」(Arch Linuxベース)で、デスクトップ環境は「KDE Plasma」が用意されている。
価格も、64GBのeMMCなら5万9800円(税込み、以下同様)、512GBのSSDでも9万9800円と10万円を切り、昨今のWindows搭載ポータブルゲーミングPCに比べて手頃だ。
一方でSteam Deckは、サポート対象外ながらWindows 11用のドライバーを公式サイトで公開している。万が一の場合にもリカバリー方法が公開されているので安心だ。
将来的にはSteamOSとWindowsのデュアルブートも目指していると言うが、現時点ではSteamOSではプレイできないゲームタイトルもあるので、Windowsを試すのはアリだろう。
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・持ち運べるポータブルPC「Steam Deck」を使うときに気を付けたいこと
●Steam DeckをWindows PCとして使うには?
今回はWindows 11 HomeをSteam Deck本体の内蔵SSDにインストールするのではなく、別途用意したmicroSDカードに導入する形で試している。導入方法は下記の通りだ。
なお、ここではSanDiskのmicroSDカード「Extreme PRO」(256GB)を使用した。最大転送速度が毎秒200MB、最大書き込み速度が毎秒140MBというスペックだ。
まずはマイクロソフトのWebサイトから「Windows 11のインストールメディアを作成する」を選び、ダウンロードした「mediacreationtool.exe」を起動する。そこからダイアログボックスを進めて起動メディアを作成しよう。
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ここではISOファイルの作成を選んだが、USBフラッシュドライブを選べばほぼ自動で起動メディアを作ってくれる。
ISOファイルが用意できたら「Rufus」を使って、Windowsを起動できるメディアを作成する。この作成にはかなりの時間がかかるので少し待とう。
続いてValveが公開している、Steam Deck用のWindowsドライバーをダウンロードし、microSDメモリカードの中に「Driver」といったフォルダを作って解凍しておく。ダウンロードするのは以下のファイルだ。
・APUドライバー:Aerith Windows Driver_2209130944.zip
・Wi-Fiドライバー:RTLWlanE_WindowsDriver_2024.0.10.137_Drv_3.00.0039_Win11.L.zip
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・Bluetoothドライバー:RTBlueR_FilterDriver_1041.3005_1201.2021_new_L.zip
・SDカードリーダードライバー:BayHub_SD_STOR_installV3.4.01.89_W10W11_logoed_20220228.zip
・オーディオドライバーその1:cs35l41-V1.2.1.0.zip
・オーディオドライバーその2:NAU88L21_x64_1.0.6.0_WHQL DUA_BIQ_WHQL.zip
そしてSteam Deck本体にWindows 11のインストールメディア(USBメモリ)を差して、ボリューム調整ボタンの「−」を押したまま電源ボタンを押す。すると「Boot Manager」が立ち上がるので、「EFI SD/MMC Card」の表示を十字ボタンで選び、Aボタンを押して決定する。
Windowsのセットアップがスタートしたら、後はWindowsのインストール手順に従って進めていけばWindows 11の導入は完了だ。Windowsが起動したら、先ほどのドライバーをインストールすればよい。
●Windowsのベンチマークテストを走らせてみる
せっかくWindows 11がインストールできたので、ベンチマークテストを実行した。とはいえ、Steam Deckの内蔵ストレージからではなく、microSDカードでのテストゆえ、結果は参考程度に見てほしい。
Steam DeckはAMD製のZen 2アーキテクチャで作られているCPU(4コア8スレッド、動作クロック2.4〜3.5GHz)と、8CUのRDNA2 GPUで構成されたAMD APUを採用している。4〜15Wで動作するため低消費電力であり、長い時間ゲームをプレイすることが期待できる。Steam Deck本体で動作しているOSは、Arch Linuxをベースとして作られたSteamOS 3.0だ。
まずは3DMarkについて実行してみた。DirectX 12ベースのテスト「Time Spy」で1690、DirectX 11ベースのテスト「Fire Strike Extreme」で2218、「Fire Strike」で4404、「Night Raid」で1万5698というスコアだ。
この値を以前テストした、Zen 3アーキテクチャのRyzen 5 5560U(6コア12スレッド)を搭載する「AYANEO AIR」の結果と比べると、TDP 15W時のAYANEO AIRの記録を上回っている。
Windows 11はmicroSDカードから起動しているなどシステムが異なるため、一概に差を述べることはできないが、それを差し引いても、それなりの実力を示したことになる。
バッテリーの動作時間をテストするPCMark 10 Battery Profileの中からGamingを実行してみたところ、1時間20分という結果だった。こちらもWindows 11での結果のため参考程度にしてほしいが、一般的なポータブルゲーミングPCと大差のない結果となった。
●ドッキングステーションやUSB Type-Cハブを使えば用途が広がる
Steam Deckは上記で紹介したようにWindowsで利用する場合の他に、SteamOSで動作するデスクトップモードが用意されており、キーボードやマウスを接続してPCのようにも使える。しかしこの場合、ネックとなるのが入出力ポートだ。
Steam Deckに用意されているインタフェースはUSB Type-Cポート1基のみとなっている。このため専用で用意されているドッキングステーションをできれば用意したい。ドッキングステーションにはUSB3.1 Gen1 Type-Aポート×3、HDMI2.0出力ポート×1、DisplayPort 1.4出力ポート×1だけでなく、有線LAN用のRJ-45コネクターも用意されている。しかし価格が1万4800円もするので、二の足を踏む人も多いだろう。
そういう場合は、USB Power Delivery対応のUSB Type-Cポートハブを利用するとよい。今回筆者が用意したのはラソスの「L-CH8」という製品だ。USB Type-Cポートを2基(うち1基がUSB Power Delivery対応)、USB3.0 Type-Aポート×3に加えて、SDメモリーカードスロット、microSDメモリーカードスロットが用意されているので、筆者が常に使っているノートPCでも活用できる。
4K表示に対応したHDMIポートもあり、キーボードとマウスをつなげればまさにPCとして使うことができるわけだ。似たような製品は他にもあるので、自分に合った機能を持つUSBハブやドッキングステーションを使えばよいだろう。
●コスパのよいポータブルゲーミングPCとし遊びがいのある1台
Steam DeckはさまざまなWebサイトで話題になっている通り、Steamのゲームタイトルを手軽に遊べるモデルとして、とてもよくできている。動作もキビキビとしており、Windowsを搭載したポータブルゲーミングPCに比べて低い画面解像度も、特段気にならない。Steam Deckでプレイできないタイトルはあるものの、設定などをカスタマイズすることで遊べるものも多い。
将来的にWindowsとのデュアルブート環境もサポート予定であり、まだまだ荒削りではあるが、遊びがいのあるモデルという意味でもユニークな製品だと思う。
直近では、ONE-NETBOOK Technologyから7型のポータブルゲーミングPC「ONEXPLAYER mini Gold」が8万9800円で発売された。CPUはPentium Gold 8505(Pコア1基2スレッド/Eコア4基4スレッド/最大4.4GHz)だが、メモリは16GBでストレージは512GBとなっており、このレンジのポータブルゲーミングPCも面白くなってきそうだ。
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