
リクルートブライダル総研の「婚活実態調査2022」によれば、結婚相談所、ネット系婚活サービス、婚活パーティー・イベントなどを利用して結婚したのは、およそ15%。そのうち、ネット系婚活サービスを利用して結婚に至った人が一番多い実態があるという。
また、そういったサービスを利用した人の半数近くが結婚に至っているそう。コロナ禍において出会いが減ったのも大きな要因だが、「効率よく相手を探せる」のがネット系の婚活サービスだったりマッチングアプリだったりするのだろう。
効率よく……に疑問
「私も婚活系のマッチングアプリに登録しているんです。でもなんだかやりとりに疲れてしまった」そう言うのは、ミウさん(33歳)だ。相手を絞り込み、メッセージのやりとりをする過程が「めんどう」になってきたのだという。
「自己紹介みたいなことをしなければいけないけど、もうコピペでいいかなと思うくらい(笑)。友だちには、そんなことじゃ婚活、乗り切れないよと怒られました。効率がいいといわれているけど、本当にそうかなあ。2年続けてきて疲労困ぱいです」
会えることになったとしても、今度は「どういう自分を演出したらいいか悩む」そうだ。友人たちは理想の自分をイメージして、相手の好みの「枠内」に入るようカスタマイズしている。だが、ミウさんにはそんな器用なことはできないらしい。
|
|
だけどたまたま同じ漫画好きでも、知り合った男性は、たいてい自分のほうがより深くその漫画を理解しているということを誇示してくる。好きな漫画でマウントをとられたら楽しくない。だから漫画好きということは伏せているんです。そうなると趣味の欄に書くことがほとんどない」
本当は食べ歩きや料理も好きなのだが、それを趣味欄に書くと、すぐに「じゃあ、手料理食べさせてよ」ということになる。女性が料理好きと聞くと、「家庭的ということをアピールしたいの?」と言ってくる男もいると、ミウさんは困惑する。
「男たちの心の闇が透けて見えるんですよねぇ(笑)。リアルな世界でたまたま知り合った人と恋に落ちるなんてことは、もう現実にはなかなかないんでしょうか」
ネットでの婚活は、距離の縮め方が難しいのかもしれない。リアルな世界なら、相手の表情や場の雰囲気から、なんとなく「推し量る」こともできそうだが、効率を重視するネットの世界では、押し引きの加減が量れないのではないだろうか。
リモートワークが主で、あまり外に出る機会もなかったミウさんだが、これからはもっと外に出てリアルな世界で知り合いたいとつぶやいた。
ネットとリアルの差が激しい
マッチングアプリで知り合ったものの、なかなか会うタイミングが合わず、やっと会えたのは3カ月後だったという経験をもつショウコさん(35歳)。
|
|
文字を書くなら何度も推敲できるし、考えながら言葉を選ぶこともできる。だが実際に会ってしゃべるときは、いちいち言葉を熟考できない。つい普段使いの言葉が出てきてしまう。
「たとえば仕事が忙しいという話になったとき、メッセージだと『大変だね、ショウコさんは頑張っちゃうタイプなんだろうけど、体に気をつけてね』という優しい言い方だったんです。実際に会うと、『でもさぁ、そもそもどうしてそんなに忙しいの?』と、あたかも私の仕事が遅いとか要領が悪いんじゃないかと言いたげな様子。
ちょうど産休、育休に入った人が同じ部署でふたりいて、さらにひとりが辞めたんだよねと言ったら、『タイミングを考えずに妊娠する女性っているよね』という暴言。いや、それは個人の生き方の問題だから、妊娠した人が問題なのではなく、補充しない組織の問題。
『そんなときに限って辞める人は何を考えているんだろう』と言うけど、辞めたのはその人の親が亡くなったから。実家に帰って家業を継ぐことになったのよと説明しました。事情を知らずに決めつけたような言い方をするのがどうも癪に障って」
つい、「職場にはいろいろな人がいていろいろな事情があるからね」とまとめるように言うと、「だけど組織があって人がいるわけだから」と意外な返事。
「そうなの? 私は人がいて組織があるんだと思うし、人がいて国があるんだと思う。考え方が真逆だねと言ってみました。すると彼は『オレら、どうせ社畜じゃん?』って。まあ、あなたがそう思うのは勝手だけど、私はそうは思ってないからと席を立ってしまいました。
|
|
友人にそう嘆くと、いいなと思ったらなるべく早めに会って見極めたほうがいいと言われたという。
「マッチングアプリ、私は向いてないのかな。でもそうしていると、いつまでたっても出会えないんですよね、このご時世。友人たちのアドバイスを聞きながら、もうちょっと頑張ってみようと思います」
ショウコさんは苦笑しながらそう言った。
亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))