三笘薫をフル出場させることを優先。連続決勝弾を呼び込んだ監督采配とブライトンの戦い方

1

2023年02月05日 17:21  webスポルティーバ

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 プレミアリーグ第22節、ブライトンはボーンマスを1−0で下し、自己最高位かつヨーロッパリーグ出場圏をうかがう6位の座をがっちりとキープした。ブライトンのクラブ史を辿れば、まさにミラクルに値するこの快進撃を語る時、三笘薫の存在はいまや欠かせぬものになっている。

 前戦のリバプール戦(FAカップ4回戦)に続き、三笘はこの試合でも決勝弾を叩き出した。時間は後半42分。前戦の一撃が後半のアディショナルタイム(47分)だったので、2試合連続、終盤で劇的なゴールを奪ったことになる。

 その派手な活躍に目を奪われるが、それ以前に最終盤までピッチに立ち続けていることにあらためて驚かされる。三笘のフルタイム出場はこれで公式戦4試合連続だ。カタールW杯明けでは9戦中6戦となる。選手交代枠が5人となったいま、90分間、フルタイム出場するアタッカーは世の中にそう多くない。フルタイム出場には現実的に無理が生じるからだ。

 プレッシングに参加することより、90分間、ピッチに立っていることを1番に求めたくなる選手。わかりやすい例は、アルゼンチン代表としてプレーするリオネル・メッシになるが、ブライトンにおける三笘もそうした特別な選手に見えてきた。




 4−2−3−1の左ウイングが、試合開始直後から相手のディフェンダー(右SB)に、普通にプレスをかけ続ければ、後半なかば過ぎると脚いろは衰える。交代のタイミングを迎える。どうすれば、そうした事態を避けることができるか。三笘を終盤までピッチに立たせておくことができるか。この日のロベルト・デ・ツェルビ監督の采配には、その点に腐心する姿が透けて見えた。

 三笘は前半、大きな活躍はしていない。なによりボールに触れる絶対数が少なかった。左サイドの高い位置で、相手の右SBに1対1を仕掛けるアクションは、せいぜい1、2度に終わった。それは、左サイドでコンビを組む、SBペルビス・エストゥピニャンの位置取りと深く関係していた。

【前半と後半で違ったブライトンの戦い方】

 エクアドル代表の左SBはふだんより低い位置で構えた。右SBタリク・ランプティと比較すると、それは一目瞭然だった。イングランド人の右ウイング(4−2−3−1の3の右)、ソリー・マーチとコンビを組むガーナ代表右SBが高い位置をキープしたのに対し、三笘とエストゥピニャンの左サイドは、低い位置で構えた。ブライトンは自発的に3バックに近い変則の4−2−3−1を取った。おそらく三笘がハイペースにならないように。可能な限りピッチに立たせておくために。

 ブライトンは、三笘とエストゥピニャン同様、マーチとランプティの右もいい関係にある。両ウイングと両SBが4角を占めるフレーミングに安定性があるところがブライトンの魅力と言えるが、ボーンマス戦の前半は右サイドをフィーチャーしながら試合を進めた。

 ところが、後半に入ると傾向は一転する。時間とともにエストゥピニャンの位置が高くなり、その結果、三笘のポジションも、まさに真打ち登場という感じで、せり上がるように高くなった。後半42分の決勝ゴールはその産物だった。一般的なチームならベンチに下がっていたはずの三笘がその時、なおピッチに立ち続けていたこと。これがブライトンの勝因となる。

 そのワンプレー前にも三笘はチャンスを掴んでいた。自ら放ったシュートをGKがセーブ。ブライトンは左CKのチャンスを得た。三笘の決勝弾はそれらの流れで生まれた。

 得点はヘディングだった。しかし中央で最初から構えていたわけではない。エストゥピニャン、三笘、ドイツ人MFパスカル・グロス、エクアドル代表の20歳、ジェレミー・サルミエントの4人で左サイドを支配した結果だった。

なかでも三笘が、対峙するイングランド人右SB、アダム・スミスを十分威嚇しておいたことが大きかった。豪快な出会い頭のヘディング弾というより、技巧的なアクションとパスワークから生まれた計算されたゴールだった。

 カタールW杯において、5バックのウイングバックという低い位置で、1試合平均約40分しかプレーさせなかった森保采配と、4−2−3−1の左ウイングで、直近の4試合でフル出場させているデツェルビ采配と。三笘をいかに有効活用するかという視点で見た時、どちらが最適解であるかはわかりやすい。

 それはともかく、一般的にウイングは、「アシストは多いが得点力はいまひとつ」と言われがちなポジションだ。センタリング、クロス、折り返しで終わることが多いため、自ら得点を挙げにくい。久保建英にはその傾向がなきにしもあらずだが、最近の三笘はウイング的な要素に加え、ストライカー的な要素も強めている。ウイングのポジションで構えながら、ゴールを量産するセンスに磨きがかかっている。

 メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、キリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマン、古くはアリエン・ロッベン、ティエリ・アンリ、アンドリー・シェフチェンコ、ロビン・ファン・ペルシーなどが、ウイング兼ストライカーの系譜に該当する選手。日本では、しいて挙げれば三浦知良となるが、タイプ的にレアであることは確かだ。三笘が眩しく映る理由はそこにある。華のあるウイング兼ストライカーが、サッカーを面白くすることはハッキリしている。三笘の活躍と、三笘を追いかける選手に目を凝らしたい。

    ランキングスポーツ

    ニュース設定