エレコムがゲーミングデバイスブランド「ELECOM GAMING」を立ち上げたのは既報の通りだ。そのブランドから、ゲーミングキーボードとマウスのシリーズとして「V custom」が登場した。
今回発売されたのは、有線ゲーミングキーボードの「VK300」「VK310」「VK200」「VK210」、無線ゲーミングマウスの「VM600PE」「VM500」の6製品だ。価格は全てオープンプライスで、エレコムダイレクトショップの価格はVK300が1万5980円(青軸と茶軸)、同1万6980円(銀軸)、VK310が1万5980円(青軸と茶軸)、同1万6980円(銀軸)、VK210が1万1980円(青軸と茶軸)、同1万2980円(銀軸)、VK200が1万1980円(青軸と茶軸)、同1万2980円(銀軸)、VM600PEが1万4980円、VM500が9980円となっている(いずれも税込み)。
この中からVK300(茶軸と銀軸)、VK310(青軸)、VM600PEの4モデルを試せたのでレビューしていこう。キーボードの配列は日本語のみで、英語配列モデルは用意されていない。
・エレコムのゲーミングデバイスに“本気”の新ブランド登場!
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●コンパクトで必要十分なキーを備えた65%キーボード「VK300」
まずはキーボードのVK300から始めていこう。VK300はいわゆる“65%キーボード”で、サイズも約322.4(幅)×124.7(奥行き)×36.2(高さ)mmと、フルサイズのキーボードに比べるとかなりコンパクトだ。PCとの接続は有線のみで、USB Type-C→USB Type-Aケーブルが付属する。ケーブルの長さは1.5mほどあり、十分な長さだろう。
ケーブルはパラコードケーブルのため、とてもしなやかで、机の上のどこに置いても邪魔になることはない。重さは公称で約691g、実測は銀軸が694.5g、茶軸が695gで、キー入力しても動かないような適度な重量を持つ。キーピッチは約19mmだ。
キーボードは日本語配列のみとなり、キー数は71だ。キーストロークは銀軸が約3.5mm、茶軸と青軸が約4mmだ。アクチュエーションポイントも軸により異なり、銀軸が約1.4mm、茶軸と青軸が約1.9mmとなっている。この0.5mmの差は結構大きく、銀軸だと押し込んだ瞬間に入力されるような感触だ。入力時のキー音は青軸が大きめなのは当然だが、銀軸も意外と大きい。茶軸は静かめの入力音で、夜に作業していてもさほどうるさくない。
茶軸と銀軸の入力感触の差だが、茶軸はキータッチがまろやかだが、ぐっと押し込む必要がある。音はそれなりにするが、くぐもった音で入力音は一番マイルドだ。一方の銀軸は、音はそれなりにするものの、押し込み感が一番少ない。スコスコ感は一番で、軽いキータッチを求めている人向けだ。
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WASDキーによるシビアなキャラクター操作が必要な場合は、銀軸を選んだ方がよいだろう。茶軸の場合はしっかりとしたキーの反発を感じられるので、確実にキー操作をしたい場合は茶軸に軍配が上がる。
なお、青軸についてはカチャカチャという音が耳障りだが、クリック感は一番ストレートに感じられる。また、キースイッチのホットスワップはいずれも対応していない。
キートップ表面は「ネオクラッチキーキャップ」と呼ばれ、少しカールがかかる形になっており、指の滑りがないように作られている。実際にキーボードを見ると分かるが、ゲームプレイでよく使うWASDキーはもちろん、それぞれのキーごとに触る指に合わせて微妙なくぼみがある。このため指にとてもフィットして気持ちよくキー入力ができる。
パッケージには「キーキャップグリップシート」が付属し、これを使うとキートップのグリップをより高められるようになっている。また、キーボードは2色の樹脂を一体成形するダブルインジェクション方式で作られているので、長期間の利用にも耐えるという。
VK300は65%キーボードなので、60%キーボードよりもキーボード面の面積が1キー分だけ横に広く、削除されがちな矢印キーやPage Up/Page Downの他、PrintScreenキーも独立して用意されている。ゲームしている際に、自分がプレイしている瞬間のスクリーンショットを撮ることもあるので、ここはうれしいところだろう。
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ちなみに筆者は仕事で画面キャプチャーをよく撮るため、それに必須なPrintScreenキーを独立したキーとして設けられていることはありがたい。またスペースキーが広いのもVK300のよいところだ。日常で使う文字入力の際にはスペースキーが広い方が使い勝手がよい。
●スタンドは1段階でRGB LEDイルミネーション機能を搭載
Enterキーの右側にもキーが配置されているため、この手のモデルでは誤ってEnterキーを操作する際にその横のキーを押してしまうこともある。しかしVK300の場合は少し間隔が開いており、入力中の誤操作も少ないように感じた。各キーはキーロールオーバーに対応しているので、どのキーを同時入力してもしっかりと認識してくれる。
こうした入力を実現しているのがV customシリーズのキーボードに採用された「ELECOMN S.P.S Engine for Keyboard」だ。これは応答速度(Speed)、精度(Precision)、安定性(Stability)を高めた新開発のゲーミングキーボード用のエンジンとなる。キーボードではポーリングレート1000HzでデータをPCに送信しているが、この新エンジンによりキースイッチの反応に合わせて最適に入力を検知し、精度と安定性の向上を図ったという。
VK300とVK310は1677万色のRGBライティングに対応する。光り方の調整はエレコムが無償配布しているユーティリティー「EG Tool」で制御できる。EG Toolについては後述するが、光り方はどちらかというと控えめな印象だ。暗い部屋であれば分かると思うが、明るい場合は他の人からはRGBライティングで光っているとは気付かれないだろう。
キーボードのチルトは1段階のみとなる。実測で約9度傾くので、平板な状態よりもチルトで持ち上げた方が打ちやすい。ただしキーボード部分に厚みがあるため、できればリストレストを導入したいところだ。
本体右側面にUSB Type-Aポートが用意されており、ここにVM600PEなどのマウスをつなげて利用できる。このUSB Type-Aポートには、電波障害の原因となるPCからノイズをブロックすると、遅延低減が施されている。このあたりにもエレコムの気合が感じられる。
●テンキーレスで独立したファンクションキーを備えた「VK310」
一方のVK310は、フルサイズのキーボードからテンキーを除いた、いわゆる“テンキーレス”モデルだ。用意されるキー数が90とVK300の71より多いため、独立したファンクションキーを始め、Home/EndやPage Up/Page Downなどのキーも用意されている。
キー配列以外の相違点として、VK300にあったUSB Type-AポートがVK310にはない。内部のスペース的には余裕があるので設けられると思うのだが、省略されてしまったのは残念だ。
VK310のサイズは約366.1(幅)×142.6(奥行き)×37.3(高さ)mm、重量は公称値で約955g、実測値で960g(青軸の場合)だった。キーピッチは約19mmだ。VK300と同様に茶軸/銀軸/青軸があり、軸ごとのキーストロークやアクチュエーションポイントは同じだ。本体のチルトも1段階で、傾斜が約9度なのも変わらない。こちらも有線接続のみで、ケーブル長もVK300と同様だ。
試用したVK310の青軸だが、一般的なキーボードと同じくクリッキーなタイプだ。ただしWebサイトにあるスペック表を見ると、アクチュエーションポイントが約4mm、動作圧が50g、タクタイル圧が60gと、全て茶軸と同じになっている。このため実際にタイプした際の感覚もあまり茶軸と変わらない。茶軸にクリッキーな音が加わったのが、VM310の青軸と言ってよいだろう。
続いて、ワイヤレスマウスの上位モデルを見ていこう。
●必要十分なボタンを備えるワイヤレスゲーミングマウス「VM600PE」
VM600PEは、左右のクリックボタンとホイールクリックに加え、側面のボタン2個とホイールの隣に用意されている2個のボタン、底面のボタン1個と、計8個のボタンを操作できる無線マウスだ。
PCとの接続は付属のUSB Type-C→USB Type-Aのケーブルで行う他、2.4GHz帯を使った無線接続でも利用できる。無線通信用のレシーバーはマウスの底面に収めることができ、有線で使っている場合でもなくす心配がないのがよい。
無線での連続動作時間は、最長約95時間となっている。
ボディー形状は右利き用に特化されており、右手で持つとしっくりとくる形状となっている。サイズは約66.5(幅)×123.5(奥行き)×42(高さ)mm、重量は公称値で約75gだ。
左右のクリックボタンには、「Mag-Infinity」と呼ばれる光学スイッチが配置されており、電気的な接点がないため高耐久をうたう。光学式スイッチは一般的に、もっさりとした感触になるのでしっかり押し込んでクリックする必要があるが、メカニカルスイッチに比べて意図しないダブルクリックとなるデバウンスがないのがよい。またスイッチの反応速度も速いなど、有利な点も多い。
VM600PEには底面に2つセンサーがあり、1つはマウスの移動を検知する最大2万6000DPIのセンサー(PixArt PAW3395 DM)に加えて、リフトオフを検知する「Dセンサー」が用意されている。
マウスのソールは底面に5点配置されているが、とても滑りはよく、軽快にマウスさばきを行える。マウスソールは底面の滑りをよくするように追加ソールが付属するが、特にこれを装着しなくても困ることはないだろう。そのあたりは好みによって対応すればよい。
マウスの性能を測る「MouseTester Software」で、センサーのトラッキング能力を調べてみた。その結果が下の図だ。いずれの解像度でも、きっちりとトラッキングできていることが分かる。
最後に、ユーティリティーの「EG Tool」をチェックする。
●キーボードとマウスの設定を変更できるユーティリティー「EG Tool」
ユーティリティーの「EG Tool」は、キーボードやマウスの設定を変更するためのソフトだ。キーボードの場合は、キーアサインの変更やゲーミングモード時に無効化するキーの設定、ライティングエフェクトの変更を行える。
VK300はキーの数が限られるため、あまり使わないキーに自分の好みのキーを設定する方がよいだろう。個人的にはEnterキーやBackSpaceキーを押す際に右上のPrintScreenキーにどうしても触れることが多かったので、Delキーと入れ替えて設定した。
マウスの場合は8個あるボタンの割り当ての他、5種類のDPI設定、ポーリングレートの設定、ライティングの設定、マウスパッドの最適化、5段階のリフトオフ距離設定ができる。
マウスのボタンは、ホイール下にある6番と7番のスイッチにデフォルトでは何も割り当てられていない。他のマウスでもこの位置にスイッチが配置されていることが多いが、筆者の場合はこのスイッチにはDPIステージ切り替えを割り当てることが多い。
●エレコムの“本気”が詰まったゲーマー向けのキーボードとマウス
ここまでエレコムのV Customシリーズについて見てきたが、長年キーボードやマウスを扱ってきているだけあって、ゲーマー向けの製品としてはそつなく仕上がっている。キーボードに青軸/茶軸/銀軸の3つを用意したり、製品のランクをいくつかに分けて設定したりするなど、選択肢が幅広いのもよいし、価格もゲーミングデバイスでは手頃なので求めやすいのもよいところだ。
設定ツールのEG Toolも、必要最小限の設定ができればよいように作られていて扱いやすい。ゲーミングキーボードやゲーミングマウスをこれから求めようとしている人には、うってつけのデバイスだといえよう。
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