3年間続いているマスク生活。政府による「屋内外問わず個人の判断に委ねる」との方針変更で街中の光景も変わるだろうか(photo Getty Images) 政府は、5月8日に新型コロナを5類感染症に引き下げると発表した。マスク着用は「個人の判断に委ねる」方針。外す、外さない、あなたはどうする? AERA 2023年2月13日号の記事を紹介する。
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すでに報道されている通り、政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の位置付けを5月8日に「5類」に引き下げると決定。季節性インフルエンザなどと同じく、感染後の行動は自主的な判断に委ねられる。今回の方針変更で注目が集まっているのが「屋内外問わず個人の判断」となったマスクの着用だ。
「マスク生活は従来通りかな」と話すのは、都内在住の女性。運動が趣味で、毎日スポーツジムに通っている。トレーニング中、スマートウォッチが示す最大心拍数(220−年齢)は190を超える。46歳の女性にとって「190超え」は、「呼吸が追いつかず、終わった後ぶっ倒れるきつさ」。それでも感染するのが嫌で、マスク着用を守ってきた。コロナ禍になって入会したので、トレーニング中の必死の形相はだれにも見せたことがない。「今さら、みなさまにお見せできません」と女性。
心理学者で医学博士の鈴木丈織さんは「マスクはもはや顔の一部」と言い、こう続ける。
「マスク生活は惰性になっており、外すことに生理的に違和感を覚える人は多いでしょう。しかも、この3年間で植え付けられたコロナへの潜在的な恐怖感があるし、今後どんな変異株が出てくるかわからない。すぐに外す気にはならないのでは」
筆者の友人知人に限っていうと、聞こえてくるのは、マスク生活の楽ちんさだ。「すっぴん、あるいは最小限の化粧で出かけられる」「なんなら寝起きの顔でも電車に乗れる」「髭剃りを毎日しなくなって、肌荒れがなくなった」「マスクを着けている方がかわいく見える」「マスク警察も最近は見かけないので、屋外で息抜きでき、マスク生活が苦じゃなくなった。メリットが大きいかも」といった声も。
■人の目気にする国民性
女子大学生を対象に、顔のコンプレックスに関して調査した桜美林大学リベラルアーツ学群教授の山口創さんはこう話す。
「コンプレックスを感じる部位として最も多かったのが、鼻と顔の輪郭でした。それらが隠せるマスク着用は、暑くて息苦しい季節を除き、続行するのではないでしょうか。私の大学の学生さんからも『マスクを外すのは恥ずかしい』という話をよく聞きます。また日本人は同調を意識する国民性があり、周囲が外さなければ、5類になっても外さないままでしょう」
米ニューヨーク在住のジャーナリスト、シェリーめぐみさんは「国民性」に深くうなずく。
「日本人は人の目を気にする国民性で、アメリカ人ほど顔を隠すことへの抵抗が少ない。もともとインフルエンザの季節にはマスクを着けるお国柄で、インフルエンザと同じ5類と言われたら、逆にマスクを着けてしまうのでは、と思っている」
■マスク見かけない米国
世界最多の感染者数を記録したこともあるニューヨークでは、公共交通機関を含めマスク着用義務はすべて解除され、現在は医療機関、老人ホームのみで着用が義務付けられている。シェリーさんは言う。
「昨年末から今年初めにかけてオミクロン変異株が大流行し、屋内でのマスク着用が推奨されました。それによって一時はマスクをする人が微妙に増えたかのようでしたが、現在は屋外ではまず見かけません。地下鉄の中で1〜2割といったところ」
シェリーさんは最近、取材で米ラスベガスに行った。国内線の飛行機は超満員であるものの、マスクを着用する人はいなかった。ラスベガスでもマスク姿は見かけなかった。
「ニューヨーク以外で言うと、マスク離れは南部の共和党州ほど早く、ピーク時でもマスクをしない人がかなりいました」
フロリダ州では昨年春、自治体が決めたマスク着用義務を裁判所が差し止め。自治体が個人にマスクを強要するのは憲法違反との判断となっている。フロリダ州知事で、来年の共和党大統領候補ナンバーワンと目されるデサンティス氏は、マスクとワクチン義務付けを恒久的に禁止する法律を提案している。バイデン政権はコロナをめぐる国家非常事態宣言を5月11日に解除する方針を明らかにしている。
「アメリカ人の間ではすでにコロナはエンデミック(一定期間で繰り返される流行)という認識です」(シェリーさん)
(ライター・羽根田真智)
※AERA 2023年2月13日号より抜粋