芸能界で「ネアカ」復興? 閉塞感漂うリアルと裏腹、“とにかく明るい”が重要項に

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2023年02月07日 08:40  ORICON NEWS

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令和のバラエティ界で勢いを増す「ネアカ」タレント陣(C)ORICON NewS inc.
 錦鯉、ゆうちゃみ、村重杏奈、エルフ・荒川など、昨年出てきたタレント勢には「ネアカ」(=根が明るい性格)を持ち味とする逸材が多かったように感じる。変わらず活躍を見せるフワちゃん、めるる、アンミカ、なかやまきんに君なども、やはりネアカで陽キャ、圧倒的な明るさが目立つ。対して、ネクラや陰キャ推しでブレイクするパターンは、近年減少傾向にあるようだ。

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■トーク力<人間性? 「2022ブレイクタレント」の共通項は“圧倒的明るさ”

 『M-1グランプリ2021』で念願の優勝を果たし、“一発屋”で終わることなく、『2022年ブレイク芸人ランキング』(ORICON NEWS調べ)でも1位に輝いた錦鯉。同ランキングでは、2位になかやまきんに君がランクインされており、『2022ユーキャン新語・流行語大賞』でも「ヤー! パワー!」がノミネート。昨年のお笑い界は、何より「ネアカ」が取り柄とも言える彼らが新風をもたらした。

 女性タレントで言えば、飛躍を見せたのが“ゆうちゃみ”だ。『2022ブレイクタレント』(ニホンモニター)によると、テレビ出演数は昨年から149本増で女性1位。これまでも入れ代わり立ち代わり、バラエティ界に人気ギャルタレントは存在していたが、益若つばさで言えばカリスマ性、若槻千夏で言えば毒舌、鈴木奈々はリアクション、ゆきぽよは破天荒っぷり、藤田ニコルはおバカキャラ、みちょぱは聡明さなどがブレイクのきっかけとなっていたところ、ゆうちゃみに関しては、とにかく根っからの明るさが唯一にして最大の武器になっているように思える。これはめるるにも通ずることだが、毒舌や自虐発言なども見られない。

 「もちろんあくまで画面上の話で、元気や明るさを持ち味にしつつも、暗い過去を背負っている方も数多くいるとは思います。しかし、昨今人気のタレントさんは、作られたキャラや芸として完成させた“陽キャ”というよりは、元からの性格がとにかく明るい“ネアカ”が多い印象です」と話すのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。

 「だから無理がなく自然で、使う方も起用しやすいし、観てる方も安心して楽しめる。誰かと比べたり、妬んだりすることのない“ネアカ”は、他人を下げたり傷つけたりする発言もあまり出てこないですよね」。不祥事で一発アウトな今、「ネアカ」支持の背景には、“人の良さ”も担保されているところがあるのかもしれない。

■“浅く”見られていた「陽キャ」は一発屋扱い…「陰キャ」旋風沸いた平成バラエティ

 一昔前で言えば、陰キャや闇発言で一線を画したタレントが続出していた。いまや芸能界を風靡している有吉・マツコも毒舌トークでトップまで上り詰め、指原莉乃はネガティブキャラで大勢のAKBメンバーの中から頭角を現し、田中みな実は自虐・こじらせキャラで“女に嫌われる女”から女性の憧れの対象へと昇格した。

 思えば芸人界でも、千鳥やかまいたち、霜降り明星、四千頭身や宮下草薙といった第七世代、マヂカルラブリー、ニューヨーク、シソンヌに至るまで、がんがん前に出てはしゃぐキャラというよりは、テンションを抑えた秀逸なトークが評価されるパターンが多かった。

 昭和のバラエティでは、ドリフターズや明石家さんま、とんねるずなど、クラスの人気者的存在の「陽キャ」がテレビを席巻していた。そこに登場したのが、ダウンタウンだ。「陰キャ」とは言わないが、ボソボソした喋りと尖った笑いで物事の本質をついていく、そのシュールさが“深くて格好いい”という風潮になった。

 すると「陽キャ」=ダサい、浅いといった見られ方をされるようになる。なぜなら、平成以降に出てきた芸人のほとんどがダウンタウンの影響を受け、憧れて育ってきたからだ。次々とブレイク芸人を生んだ『エンタの神様』出演陣も「陽キャ」が多かったが、かつてのなかやまきんに君がそうだったように、“一発屋”扱いもしばしばあった。

 一方で、南海キャンディーズの山里亮太、麒麟の川島明、ピースの又吉直樹、オードリ―の若林正恭、ハライチの岩井勇気など、“じゃない方芸人”の発掘とともに、「目立たないけど、実はすごい」といった評価が世間にも浸透し、「陰キャ」=格好良い風潮が助長された。

■“親近感”より“別次元”、世知辛い現実生きる現代人…何事にもめげない「タフさへの羨望」

 芸人界随一の「ネアカ」、アンタッチャブル・山崎弘也も、かつては「陰キャ」路線だった。本人も過去に“ダウンタウン病”を告白していたが、ガヤも入れることなく、すかしたクールキャラで息を潜めていた時代がある。しかし今日の目覚ましい活躍は、「ネアカ」解禁にこそある。

 ここ数年で山崎の立ち位置は「ガヤ芸人」の域を超え、唯一無二の存在感までをも確立したように感じるが、昨今の芸能界における「ネアカ」重宝の理由を、衣輪氏はこう分析する。

「コロナ禍やウクライナ戦争、円安不景気などで世の中に閉塞感が漂う中、自粛明け後も在宅時間が多くなった人が増え、テレビの中に“明るさ”を求める人が増えたのではないでしょうか。ザキヤマさんはじめ、出川哲郎さんやなかやまきんに君さん、アンミカさんやフワちゃんさんなど、どんな時でもとにかく明るく、腐らない、めげない、病まない姿勢は日頃の鬱屈を吹き飛ばしてくれる。飽和状態にあった“陰キャ疲れ”や、ネアカが持つ“タフさへの羨望”も、視聴者の支持につながっているのかもしれません」

 凡人には毎日を陽気に生きることが難しくなったこのご時世において、これまで侮られがちだった「とにかく明るい」ことが“超人”として見なされ、支持や崇拝の対象となっているのだ。

 音楽界にしても、「不景気にはアイドルが流行る」という定説があるが、AKBブーム以来、視聴者に寄せた陰キャ発言をするような“親近感”売りのアイドルが日本に増えた。K-POPアイドルに比べて、黒髪清楚+身近な制服衣装で画力も弱い。そんな中、ド派手なファッションで圧倒的なきらびやかさを発し、ステージは別世界を演出するようなK-POPブームが再燃した。

 「推し活」然り、世知辛い今を生きる現代人が芸能界に求めるのは、“親近感”や“等身大”ではなく、現実逃避すら叶えてくれる“異次元”なのだろう。“明るい”は、いまや決して浅くない。むしろ、生きる力をもたらしてくれる何よりも大切なファクターになっている。


(文/西島亨)

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