吉見一起に聞くWBC侍ジャパンの投手起用法。「先発ローテーションは?」「クローザーは?」「大谷翔平の使い方は?」

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2023年02月07日 11:21  webスポルティーバ

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 現役時代、5年連続2ケタ勝利を挙げるなど中日のエースとして大活躍した吉見一起氏。その吉見氏に3月に開催される第5回WBCの侍ジャパンの投手起用について語ってもらった。1次ラウンドの先発は? クローザーは? そして大谷翔平の投手起用は......?




【固定観念を覆す栗山采配】

── 日本ハム時代の栗山英樹監督とは、セ・パ交流戦で対戦したことがあると思います。指揮官としてどんな印象をお持ちですか?

吉見 やさしそうな印象ですが、内に秘めるものは熱いですし、采配、選手起用に関しては厳しさを感じます。日本ハムで11年間監督を務められ、リーグ優勝2回、うち日本一1回の実績もさることながら、常に新しいことを試みる印象があります。リリーフ投手を先発で起用する"オープナー"や大胆な守備シフトなど、野球界のためにこれまでの常識や固定観念をとり払うイメージがありますね。

── その栗山監督率いる侍ジャパンですが、第5回WBCが3月に開催されます。そこで吉見さんの考える「第1先発」候補から聞かせてください。1次ラウンドは、5チームずつの4グループの中から2チームが勝ち上がります。日本は東京プール(プールB)に参戦し、3月9日に中国、10日に韓国、11日にチェコ、12日にオーストラリアと戦います。1次ラウンドの球数制限は65球です。

吉見 1次ラウンドの"第1戦先発"の4人は、中国戦にダルビッシュ有投手(パドレス)、韓国戦に山本由伸投手(オリックス)、チェコ戦に佐々木朗希投手(ロッテ)、オーストラリア戦に今永昇太投手(DeNA)です。

── 大谷翔平(エンゼルス)は投手ではなく、打者での起用ということでしょうか。

吉見 レギュラーシーズン以外で投げるのか否かという球団との契約があると思いますし、投げている映像を現時点でまだ見ていないので、1次ラウンドの先発からは外させてもらいました。ただ、大谷選手のかつての恩師である栗山監督だけに、1イニングだけ抑えで投げさせるとか、そのような起用はあるかもしれません。

【第2先発に必要なこととは?】

── 開幕戦となる中国戦をダルビッシュ投手にした理由を教えてください。

吉見 野球というのは、最初の試合が大事です。普通に考えれば中国に負けることはないと思いますが、同じ勝ちにしても「勝ち方」「流れをつくること」が問われます。ものすごく大事で難しいところではありますが、実績を考えて、ダルビッシュ投手か、それとも山本投手か。国際経験が豊富で、かつチームのリーダー格であるダルビッシュ投手が適任だと思います。65球という球数制限はありますが、1イニング15球程度と考えれば、4〜5回はいってくれるのではないでしょうか。

── 2戦目は、1次ラウンドで最も手強いと思われる韓国が相手です。

吉見 ここに東京五輪で開幕投手(ドミニカ共和国戦)を務め、準決勝の韓国戦でも登板して好投した山本投手をもってきたいと思います。そしてチェコ戦は未来のエースの期待がかかる佐々木投手、オーストラリア戦には昨年11月の強化試合で同国相手に好投した今永投手です。

── 先述したように、1次ラウンドは65球の球数制限があるため、必然的に「第2先発」が必要になってきます。

吉見 第2先発として起用したいのは、伊藤大海投手(日本ハム)、高橋宏斗投手(中日)、宮城大弥投手(オリックス)、戸郷翔征投手(巨人)、高橋奎二投手(ヤクルト)の5人です。国際試合の大舞台は緊張すると思います。強心臓、堂々としたマウンドさばきが必要になってきます。そのなかで伊藤投手は、東京五輪でのピッチングが印象に残っています。頼もしい存在です。

 高橋投手は中日の後輩ということで、彼のことは性格も含めいろいろ聞いていますが、投げる時の顔つき、打者に向かっていく気持ちがいいです。また宮城投手は昨年の日本シリーズで、淡々とですが攻めの投球を続けていました。ボール自体もすばらしいですが、気持ちの強さも感じました。

【クローザーは一択で決まり】

── 守護神には誰を指名しますか。

吉見 栗林良吏投手(広島)の一択でいいと思います。東京五輪でも全5試合に登板して2勝3セーブ、自責点1とほぼ完璧な内容でした。栗林投手はペナントレースでも2年連続30セーブ以上。2021年の被本塁打はわずか1で、防御率0.86。22年は被本塁打0と驚異的なストッパーぶりです。社会人のトヨタ自動車の後輩にあたりますが、そのことは関係なしに彼の安定感に期待したいと思います。あえて言うなら、場面、状況によって大谷選手をリリーフとして起用してもいいのかなと思います。

── そのクローザーにつなぐセットアッパーも重要になってきます。

吉見 中継ぎの一番手は、湯浅京己投手(阪神)です。183センチから最速156キロのストレートを投げ下ろし、球威も角度もあります。それにドロンとしたカーブがあって、緩急も使えます。昨年43ホールドを挙げ、最優秀中継ぎ投手に輝いた勢いをそのまま持ち込んでほしいですね。

 ほかにも、昨年32セーブを挙げた松井裕樹投手(楽天)、サイドから球威のある球を投げ込む大勢投手(巨人)、長身から落差の大きなフォークが武器の宇田川優希投手(投手)が控え、どんな展開になっても対応できる投手が揃っています。

── 準々決勝(東京ドーム/3月16日)はトーナメント方式です。ここで台湾、オランダ、キューバ、イタリア、パナマのなかから勝ち上がってきた2チームのどちらかと戦います。

吉見 当然、どこが勝ち上がってきても侮れません。とにかく、この準々決勝で勝たないとアメリカで行なわれる準決勝に進めないわけですから、ものすごく重要になります。日本は準々決勝に進出すれば試合は16日になりますので、9日に先発したなら中6日、10日の先発なら中5日になります。登板初戦の投球数が65球以内なら中5日でいけるだろうという考えがあります。

 一方で、投げることに変わりはないし、時期的に少し登板間隔をあけたほうがいいという考え方もあるでしょう。もし準々決勝に山本投手を投げさせるつもりなら、9日に山本投手、10日にダルビッシュ投手にしてもいいと思います。もしくは、主力投手を3イニングずつとか2イニングずつ投げさせてもいい。あくまで戦況を見ながらの起用になりますが、いろんな選択肢を考えておいたほうがいいでしょうね。いずれにしても、投球術に長けているダルビッシュ投手が軸になることは間違いないでしょう。

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  • 浮わついたところがなくて、対戦相手だけでなく日程も考慮して想定しているのはさすが。
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