将来的なメジャー移籍が報じられている楽天・松井裕樹 コロナ禍もあり一時は落ち着いていたメジャーリーグの年俸が再び高騰し始めた。今オフは同リーグでFAとなった大物だけではなく、日本人選手も国内では考えられない額の契約を勝ち取った。
【ランキング】2022年セ・リーグ個人年俸上位20傑はこちら 年俸上昇の流れはこれからも続くと見られ、今後は日本の移籍市場にも大きな影響を及ぼしそうだ。
「NPBのキャンプで、スカウトなどのMLB関係者の数が増加した。昨オフから各球団、そういった人材の雇用が活発化しているとも聞く。過去の実績関係なく、可能性のある選手なら獲得に動くケースが増えるはず」(在京テレビ局スポーツ関係者)
2000年代は投手はもちろん、野手ではイチロー(マリナーズほか)の活躍もあり日本人選手の価値がメジャーリーグで上昇。井口資仁(ホワイトソックスほか)、田口壮(カージナルスほか)、松井稼頭央(メッツほか)、福留孝介(カブスほか)、岩村明憲(レイズほか)ら日本のトップ選手がこぞって海を渡った。
当時メジャーは夢の舞台であり、かつメジャー球団側からも日本人選手は確実なパフォーマンスを発揮できると評価され、米国への移籍が激増した。しかし、近年は坂本勇人(巨人)、柳田悠岐(ソフトバンク)、山田哲人(ヤクルト)などメジャー移籍が噂されていた日本のトッププレイヤーが所属チームと長期契約を結び、生涯日本でのプレーを選ぶケースも増えていた。
だが、その流れも変わりつつある。昨シーズンのオフには野手では吉田正尚(前オリックス)、投手では千賀滉大(前ソフトバンク)、藤浪晋太郎(前阪神)の3人がメジャーへ移籍。今シーズン、どんなプレーを見せてくれるか楽しみだが、話題となったのはその契約額だ。
「2人(吉田と千賀)は以前から高評価されていたが、想像を上回る好条件での契約だった」(MLBアジア地区担当スカウト)
吉田は5年総額9000万ドル(約119億4000万円)でレッドソックスと契約。年平均は約24億円で、オリックス時代の年俸4億円(推定)から約6倍の大幅アップとなった。一方、千賀は5年総額7500万ドル(約99億5000万円)でメッツと契約。こちらも年平均は約20億円となり、吉田ほどではないがソフトバンク時代の年俸6億円(推定)から約3倍以上のアップとなる。
さらに日本では苦しんでいる印象もあった藤浪ですら、そのポテンシャルが評価され年俸325万ドル(約4億3000万円)に出来高の付いた1年契約を勝ち取った。
「藤浪がアスレチックスと結んだ契約には驚いた。投手としての潜在能力は高く復活の兆しは見せつつあった。しかし調子が悪かった時期を考えると獲得のリスクは高い。年齢的にも決して若くはないが、投資に値する投手という判断だろう」(MLBアジア地区担当スカウト)
このようにメジャーに移籍した選手たちが大型契約を勝ち取る光景は間違いなく、日本でプレーする選手にも影響を与えただろう。「これだけ貰えるのであるならば、メジャーに行こう」と考える選手が増えてもおかしくない。
「日米の年俸差がここまであれば、選手も現実的になる。例えば、藤浪がアスレチックスで活躍して満額近くの出来高を手にすれば6億円近くになり、NPB上位の選手と変わらない。あれだけ苦しんでいた投手が環境の変化で大金を手に入れられる。まさにアメリカンドリームです」(在京テレビ局スポーツ関係者)
「MLB全体の景気の良さが(年俸高騰の)要因の1つ。コロナ禍が収束しつつあり、MLBの昨年の収益は過去最高となった。各球団が攻めの姿勢で補強費に金額を注ぎ込むようになった。可能性がある選手にどんどん投資するはず」(在米スポーツライター)
今シーズンのオフには、今季中に海外FAの権利を得る可能性のある松井裕樹(楽天)、ポスティングシステムを利用して今永昇太(DeNA)、高橋光成(西武)のメジャー移籍が噂されている。だが他にも海外FAの権利を有している選手などもおり、“まさか”の選手の移籍もあるかもしれない。
「米国球団が本気になっている限り、好条件の提示が進むはず。お金が全てではないが、NPBと比べ物にならない大金。選手生活は決して長くないので、一攫千金で米国を目指す選手が増えてもおかしくない」(大手エージェント会社)
今年は3月にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開催されるが、そこも“見本市”となるはずだ。NPB所属の侍ジャパン選手にとっては自らを売り込む大チャンス、全力でプレーする姿が見られるだろう。
「日本のためにプレーするのは当然だが、活躍してMLBスカウトの目に止まれば、米国行きの足がかりになる。仮にシーズン中で結果を残せなくともインパクトは大きい。MLB所属選手がケガを恐れWBC参加を躊躇するのとは真逆です」(在米スポーツライター)
最近は野手がメジャーで苦戦することが目立つが、吉田の契約を見ても、トッププレイヤーであれば投資を惜しまない姿勢があるのは明確だ。既にメジャーに移籍している鈴木誠也(カブス)などとともに、吉田が今季活躍することがあれば、さらに移籍市場で日本人選手の価値は上がるだろう。投手の松井、今永、高橋に加え、今シーズンのオフには日本人選手の多くが米国に活躍の場を求めるかもしれない。