「レース=女性向け」は古い? ワコールが男性下着に取り入れ大ヒット、レースボクサー誕生の背景

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2023年02月08日 10:30  ORICON NEWS

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発売のたびに完売になる「レースボクサー」(画像提供:ワコール)
 多様性という価値観が広く認知され、「男らしさ」や「女らしさ」よりも「自分らしさ」が尊重される時代になった。コスメや脱毛、ネイルといったかつては女性向けのイメージが色濃かった商品やサービスもボーダーレス化し、身だしなみや清潔感に止まらない"美"を追求する男性が急増している。大手下着メーカー・ワコールが2021年末に発売した男性用アンダーウェア「レースボクサー」は発売のたびに完売になるヒット商品だ。「レース=女性向けという価値観はもはや古い」という社内の議論から生まれた商品だという。

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■想定以上の反響 購買層も若者だけじゃなく5、60代まで広がり「男性消費者の下着への意識が格段にアップデートしている」

 大手下着メーカー・ワコールが2021年末に発売した男性用アンダーウェア「レースボクサー」が、一時は生産が追いつかないほどのヒット商品となっている。フロント部分は透けにくいようにし、全面にレースをあしらった美しくエレガントなデザインは、従来の男性用下着にはなかったもので、2022年度グッドデザイン賞にも選考された。

「今は男性も美を追求する時代です。ところが下着においては女性向け商品と比べて選択肢が少なく、中でも"美"の価値を届けられるアイテムはほとんどありませんでした。そこで着目したのが、女性用下着を主力とする弊社が長年にわたって向き合ってきたレースという素材です」((株)ワコール・メンズインナー商品営業部 課長の溝口曜さん)

 レースの美しさは本質的なもの。レース=女性向けという価値観はもはや古いのではないか。とはいえ、単なるレースで作ったセクシーパンツと思われたくない――。そうした社内の議論から開発された「レースボクサー」だが、その反響は予想を上回るものだったという。

「まずはテストマーケティングの意味合いからクラウドファンディングサイトのMakuakeで先行予約をしたところ、目標金額の10倍以上を達成。レギュラー販売が始まってからも3ヵ月分が10日で売り切れるなど、当初は追加生産と完売の繰り返しに追われました」(同上)

 では実際にどういう層が購入しているのか。

「昨年2月に京都のファッションビルで行ったポップアップショップでは若い方の購入が目立ちました。関心を示されるミドル世代もいましたが、どこか照れもある様子も見受けられました。ところが昨年末に行ったポップアップでは、ごく自然に購入される5〜60代の方がとても多く、たった半年で男性消費者の下着への意識が格段にアップデートしていることに私たちも驚かされました」(同上)

■繊細なレースを“男性向け”に落とし込む苦労も「これほど適切な素材はない」

 レースのボクサーパンツという斬新なデザインが注目されるが、決して奇を衒った商品ではない。メーカーとして最もこだわったのは美しさと機能性の両立だ。

「レースの最大の特徴は装飾性もさることながら、通気性の良さにあります。ムレや締め付けもなく、直接肌に触れるアイテムにこれほど適切な素材はありません。お客さまからも圧倒的に『レースがこんなに快適だとは知らなかった』という声が多いですね。ムダな厚みの出ない縫製でアウターに響きにくいのも、ファッションにこだわる方にはうれしいポイントのようです。おかげで、見たときに驚いて、履いて驚く。2度の感動を与えられる商品に仕上がりました。いい意味で見た目とはき心地のギャップが大きかった」(同上)

 “レースは女性だけのものではない”そうした信念から開発されたレースボクサーだが、一方で「男性向け」を強く意識した側面もあった。

「レースは繊細な素材。レースに慣れていない男性が力を込めて履き上げてしまうと、生地の穴あきに繋がる懸念がありました。そこでレースボクサーのために、女性用下着よりも強度と伸度を増したオリジナルのレースを開発。肌触りの良さとフィット感、動きやすさを追求した素材づくりは、開発でも特にこだわったところです」(同上)

 履き心地の良さと快適性からリピーターやまとめ買いも多い。今年1月には主に量販店で商品を展開しているブロス バイ ワコールメンから迷彩とペイズリーの新デザインが発売された。

「多くの男性にレースの魅力を体感していただきたいのですが、やはり抵抗感がある方もいます。そこで男性に馴染みのある柄をレースに落とし込みました。裾部分は直線的なカッティングで、よりアウターにラインが出にくい設計となっています。この2柄タイプについては、より身近に手に取っていただけるよう一部量販店でも販売します」(同上)

■“男らしさ”から“自分らしく”へ 10年間で男性用下着もやっと“日用品”の域から脱却

 女性用下着では老舗のワコールで、男性用アンダーウェアへの取り組みが始まったのは1991年のこと。2013年には男性の下着に対する意識を刷新することを掲げたブランド「ワコールメン」が誕生した。

「男性用下着は長らく日用品の域にとどまっていました。そこをアップデートするべく、ワコールメンが立ち上がった当時は機能性、いわばギアとして要素を商品開発の軸としていました。PRのビジュアルも"男らしさ"を全面に打ち出したものが多かったですね」(同上)

 10年前は「男らしさ」「女らしさ」という価値観もポジティブに捉えられていた。しかし現代は誰もがジェンダーに縛られることなく、「自分らしく」いられる時代だ。

「機能性は大前提として今後もこだわり続けていきます。それに加えて肌の一番近いところに触れる下着には、心までエンパワメントする力があります。美しいものを纏うだけで自信が溢れ、言動までエレガントになることを多くの女性は気付いていますよね。レースボクサーはそうしたこれまでの男性下着になかった価値までお届けできる商品だと考えています」(同上)

 メンズコスメ市場は右肩上がりで伸びており、近年はメンズネイルやメンズパールがトレンドになっている。美しくありたいという心にジェンダーは関係なく、その思いをバックアップしてくれる商品やサービスは今後ますます充実していきそうだ。
(取材・文/児玉澄子)

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  • 元総理秘書官なら…気持ち悪っ…って言うかも???(大笑)������������ӻ�����������������ӻ�����������������ӻ�����
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