板倉滉&吉田麻也、カタール後のリアルな声「どんなFWにも負けちゃいけない」「個の部分で足りてないのは間違いない」

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2023年02月08日 11:31  webスポルティーバ

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 カタールの地で日本代表を後方から支えた両雄が、敵となって激突した──。

 ブンデスリーガ第19節。板倉滉が所属するボルシアMGが吉田麻也のシャルケを本拠地に迎えた。

 ボルシアMGの現状は、やや苦しい。

 前線のマルクス・テュラム(フランス)やヨナス・ホフマン(ドイツ)から板倉の相棒ニコ・エルヴェディ(スイス)まで、11人ほぼ全員が各国の現役・元代表で構成されるほど、個々の能力は傑出している。にもかかわらず、前節終了時点で7勝4分7敗と星取表は芳しくない。

 この日のシャルケ戦も、エンドが変わるまではボルシアMGが優位に進めた。前半終了間際のテュラムが抜け出した場面や、吉田に頭で防がれたクリストフ・クラマーのシュートなど、決定的な機会も少なくなかった。

 しかし、終わってみればスコアレスドロー。守備の人間である以上、無失点でゲームを終えるのは最も大事なことだ。だが、勝ち点3を奪えなかったことで、板倉の表情は曇りがちだった。




「前半とか全然、悪くなかったですけどね。相手がマンツーマンでくるなかで、動きを増やしてすごく(マークを)外せていたし、ボールを保持しながらどうにか1点を......という形はずっと作れていたので。

 守備をしていても怖いシーンはなかった。とにかく攻撃でどうやって崩していこうかっていうところにフォーカスしていました。けど、やっぱりああいう(押している)展開のなかで1点を取れないと、後半ああいう(ピンチを迎える)形になるっていうのは想像どおり。自分たちで試合を難しくしたなっていうのはあります」

 板倉個人に目を向ければ、パフォーマンスはこれまでと変わらず目立つものだった。

 後半38分にトム・クラウスの突破を許したことをのぞけば、守備での大きなミスは見られず。攻撃では前半27分の果敢なオーバーラップにはじまり、CKからのヘディングなど、前半だけで計3本のシュートを放った。

【板倉滉が主張したかったこと】

 増すばかりの風格──。板倉本人は自らの現在地について、どう考えているのだろうか。

「1対1も自分のところでしっかりガチっと奪いきれる力を、もっともっと伸ばせていけたら存在感も出ると思うし、さらに一歩ステップアップできる。

 まずはこのチームでしっかり出続けて結果を残すこと。練習からすごくいいメンバーとできているし、成長するにはすばらしいチームだと思っているので。しっかり出続け、チームが勝つことを優先に考えていけたら。

 ワールドカップを終えて、その前からもそうですけど、1試合1試合を大事に戦わないとなっていうのはすごく感じている。いろんなフォワードがいて、いろんなタイプの選手がいるなかで、ディフェンスとしてはどんなフォワードがきても負けちゃいけない。

 これだけいい雰囲気でやれているのは、自分にとってすごいポジティブなこと。このチームで結果を出すことによって、上に行けると思っている。自分のパフォーマンスもそうですけど、チームが勝つことで自分の価値も上がっていくと思っています」

 一方の吉田は、ドローという結果に"晴れ晴れ"とはいかないまでも、その表情からは安堵の色がうかがえた。

 今シーズン、2部から昇格してきたかつての名門シャルケは、ここまでリーグ最少の2勝。第10節に自動降格圏へ転落すると、その翌週からは最下位が定位置になった。

 今年1月のリーグ再開後も、初戦のフランクフルト戦に0-3で敗れ、ライプツィヒ戦は今季2度目の6失点で完敗を喫した。いわば、目もあてられない状態が続いていた。

 ところが、前節ケルン戦に続き、今節ボルシアMG戦も無失点で90分間を戦い抜いた。攻撃陣が沈黙に終わったため、獲得した勝ち点は2試合で2ポイント。ただ、1試合平均2.4失点だった姿は、過去のものになろうとしている。

 要因のひとつは、冬の移籍市場終盤で守備戦力の補強を行なえたことだ。1月26日にはロリアン(フランス)から吉田とCBコンビを組むモリッツ・イェンツを、そして同31日にはクラブ・ブルージュ(ベルギー)からボランチのエデル・バランタをそれぞれ期限付きで獲得した。

【吉田麻也も目に見える変化】

 新加入選手の効果を、吉田は早くも実感する。

「バジェット(予算)がないなかでやりくりしなきゃいけないし、そのなかでいい選手を見つけてくるのは簡単じゃないと思いますけど、(移籍期間の)最後のほうでようやくキーとなるところ、自分が欲していた6番(守備的MF)を取ってくれたんで、それはでかいですね」

 守り方にも変化が見られる。「個の部分で足りてないのは間違いない。だからみんなでカバーしあって頑張らないといけない」と話していたライプツィヒ戦から一転、ケルン戦、そしてボルシアMG戦は、これまでの極端なマンツーマンからの脱却が見られた。

「ライプツィヒにやられて『やっぱり無理じゃん、このやり方』っていうのがあまりにも露骨に出たことによって、うまく修正できたかな。けっこう目に見える変化が出たんで、やりやすくなったね。明らかにピッチのなかで難しさを感じる場面が少なくなった。

 ゴールキックの時とかで(相手にマークを)ハメにいく時、横のスライドやカバーを早くして中間にポジションを置いて、大外の選手を切ったりすることによって距離感を近くしたり。ボールがこぼれた時にカバーできる位置くらいに。

 今までは1対1で『俺は俺』『ここ(自分の横にパスを)通されても関係ないよ』って戦い方をしていたから。だから、フランクフルト戦の時とかもそうだったけど、入れ替わったりすると一気に厳しくなる」

 長いリーグ戦を戦うなかで、不振を極めるチームがたった2試合で劇的に状況を上向かせるのは、そう簡単なことではない。肝心なのは、小さな改善を積み重ねていくことであり、この試合のように接戦でポイント(勝ち点)を拾っていくことだ。

「達成困難」と予想されたシャルケの1部残留。今もなお厳しい状況下にあることに変わりはないが、吉田にもかすかに希望の光が見えはじめた。

 ブンデスリーガ後半戦。カタールW杯を終えて再びドイツに戻ってきた板倉滉と吉田麻也は、各々苦しい立場の所属クラブで一層「ディフェンスの要」として、その責務と向かい合っている。

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