
欧州サッカー最新フォーメーション スペイン・ドイツ・イタリア編
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欧州サッカー2022−23シーズンの後半戦。各国リーグの優勝争いも激しくなり、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントもスタートする。ここでは、鎌田大地活躍のフランクフルトほか、日本からの注目も高い、スペイン、ドイツ、イタリアの5チームの現在の戦いぶりを紹介する。
(※データは2月7日時点)
【レアル・マドリード】
ラ・リーガ:2位
(20試合/14勝3分3敗/40得点17失点/勝点45)
チャンピオンズリーグ:グループF1位通過
(6試合/4勝1分1敗/15得点6失点/勝点13)
ラウンド16でリバプールと対戦
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FW:ヴィニシウス(アセンシオ)、ベンゼマ、バルベルデ(ロドリゴ)
MF:クロース(セバージョス)、モドリッチ
MF:カマビンガ(チュアメニ)
DF:メンディ(カマビンガ)、リュディガー(アラバ)、ミリトン、ナチョ(カルバハル)(ルーカス・バスケス)
GK:クルトワ(ルニン)
名将カルロ・アンチェロッティの復帰1年目にチャンピオンズリーグ(CL)とラ・リーガの2冠を果たしたチームは、夏にカゼミーロを放出し、オーレリアン・チュアメニを加え、中盤の底の若返りに着手。次点に倍の差をつける欧州制覇14回を誇る白い巨人は、今季も盤石の強さを見せ、CLのグループを首位通過し、ラ・リーガでも首位を争っている。
冬の市場では微動だにせず、欧州制覇最多4回の経験を持つ泰然自若の指揮官は、プレミア勢の巨額投資について訊かれると、「だからといって、欧州の競争力が落ちるとは思わない。昨季のCLもヨーロッパリーグ(EL)もイングランドのチームが優勝したわけではない」と余裕のコメント。左サイドバック(SB)に負傷者が重なれば、本来はセントラルMFのエドゥアルド・カマビンガを配して対処するなど、高いクオリティーは維持されている。
【バルセロナ】
ラ・リーガ:1位
(20試合/17勝2分1敗/42得点7失点/勝点53)
チャンピオンズリーグ:グループC3位。ヨーロッパリーグ・プレーオフへ
(6試合/2勝1分3敗/12得点12失点/勝点7)
ヨーロッパリーグ・プレーオフでマンチェスター・ユナイテッドと対戦
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FW:ガビ(デンベレ)、レバンドフスキ(アンス・ファティ)、ラフィーニャ(フェラン・トーレス)
MF:デ・ヨング、ペドリ
MF:ブスケツ(ケシエ)
DF:バルデ(マルコス・アロンソ)、クリステンセン(エリック・ガルシア)、アラウホ、 クンデ(セルジ・ロベルト)
GK:テア・シュテーゲン(イニャキ・ペーニャ)
夏にロベルト・レバンドフスキやラフィーニャ、ジュール・クンデらを巨額で獲得したにもかかわらず、今季もCLのグループステージを勝ち上がれなかった──2シーズン連続のGS敗退はクラブ史上初。
一方、国内では好調を維持し、リーグ戦では敵地でのクラシコで喫した敗北が唯一の黒星で、首位に立っている。スペイン国王杯では準決勝でマドリーと対戦する。またヨーロッパリーグのプレーオフではマンチェスター・ユナイテッドと相見えることとなり、ここでも厳しい戦いが組まれている。
冬の移籍期間には、メンフィス・デパイとエクトル・ベジェリンを期限付きで放出し、ジェラール・ピケは引退。逆方向の移籍はひとつもなかった。
【バイエルン】
ブンデスリーガ:1位
(19試合/11勝7分1敗/56得点18失点/勝点40)
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チャンピオンズリーグ:グループC1位通過
(6試合/6勝/18得点2失点/勝点18)
ラウンド16でパリ・サンジェルマンと対戦
FW:シュポ=モティング(テル)
MF:コマン(マネ)、ムシアラ(フラーフェンベルフ)、ミュラー、サネ(ニャブリ)
MF:キミッヒ(ゴレツカ)
DF:デイビス(リュカ・エルナンデス)、デ・リフト(ブリント)、ウパメカノ(パバール)、カンセロ(スタニシッチ)
GK:ゾマー(ノイアー)
一時代を築いたロベルト・レバンドフスキと夏に別れを告げ、序盤戦は新加入のサディオ・マネに、セルジュ・ニャブリらを組ませる2トップを採用していたが、ブンデスリーガで勝利から遠ざかった初秋に1トップへ移行。そうなると収まりがよいのはやはりマキシム・シュポ=モティングで、今はこの長身FWが攻撃の起点になっている。
冬にはGKヤン・ゾマー、DFダニー・ブリントと負傷者の補填をした上で、マンチェスター・シティで出番を求めていたジョアン・カンセロを驚きの一本釣り。移籍直後のマインツとのカップ戦では、この多機能型SBを得たことにより、昨季に用いた超攻撃的な3−2−4−1をさらに先鋭化させた3−1−4−2を試して4−0と圧勝した。若き戦術家ユリアン・ナーゲルスマンの手腕にも、引き続き注目が集まる。
【フランクフルト】
ブンデスリーガ:5位
(19試合/10勝5分4敗/40得点26失点/勝点35)
チャンピオンズリーグ:グループD2位通過
(6試合/3勝1分2敗/7得点8失点/勝点10)
ラウンド16でナポリと対戦
FW:コロ・ムアニ(ボレ)
MF:ゲッツェ(アリドゥ)、リンドストローム
MF:マックス(レンツ)、ソウ(ローデ)、鎌田(ヤキッチ)、クナウフ(ディナ・エビンベ)
DF:エンディカ(トゥーレ)、スモルチッチ(長谷部)、トゥタ
GK:トラップ(ラマイ)
昨季、42年ぶりにヨーロッパリーグを制し(前回は前身のUEFAカップ時代)、クラブ史上初のCL出場権を手にし、今季のグループステージでは初戦を0−3で落として出だしに躓きながら、最終節に敵地でスポルティングを逆転で下し、2位に滑り込んで決勝トーナメントに進出。この試合でCL3試合連続得点を決めた鎌田大地は今季、中盤の低めで先発し、途中から高めに移行することが多い。
鎌田が親しみを込めて「コロちゃん」と呼ぶ新戦力ランダル・コロ・ムアニは、すんなりと新天地に馴染み、ここまで全公式戦で12得点10アシストを記録。利他的なストライカーは、フランス代表にも名を連ねるようになり、カタールW杯でも準決勝以降に1得点1アシストをマークした。
2014年ブラジルW杯ファイナルで決勝点を挙げたマリオ・ゲッツェや、39歳の大ベテラン長谷部誠も健在だ。
【ナポリ】
セリエA:1位
(21試合/18勝2分1敗/51得点15失点/勝点56)
チャンピオンズリーグ:グループA1位通過
(6試合/5勝1敗/20得点6失点/勝点15)
ラウンド16でフランクフルトと対戦
FW:クバラツケリア(ラスパドーリ)、オシムヘン(シメオネ)、ロサーノ(ポリターノ)
MF:ジエリンスキ(エルマス)、アンギサ(ガエターノ)
MF:ロボトカ(エンドンベレ)
DF:ルイ(オリベラ)、ラフマニ(ファン・ジェズス)、キム(エスティゴー)、ディ・ロレンツォ
GK:メレト
夏にカリドゥ・クリバリ、ロレンツォ・インシーニェ、ドリース・メルテンスと、長年に渡って攻守の主軸を務めてきた面々を放出した時は、熱い地元サポーターがフロントに楯突いたが、蓋を開けてみれば、奇跡的な快進撃を続けている。
CLのグループステージでは今季最多の20得点を記録し、リバプールやアヤックスを抑えて首位で突破。セリエAでも次点のインテルにすでに勝ち点13差をつけ、早くもスクデットが見えてきている。しかも得点や失点はもちろん、ボール保持率やシュート数、アシスト数でもトップに立つ完璧な足取りだ。
補強戦略も見事の一言。2020−21シーズン開幕前に獲得したビクター・オシムヘンはここ2年半で急成長し、今季は目下、得点ランキングのトップに立っている。
また今夏に迎えたクビチャ・クバラツケリアは旧ソ連地域を除き、ほぼ国際的に無名の存在だったが、緩急自在のドリブルと鋭いキックで頻繁に決定機に関与。現在、リーグ最多アシストを記録するジョージア代表を、一部のファンは"クバラドーナ"と呼び、かつての英雄と重ね合わせている。