「安倍さんは挑戦者がいなかっただけ」 森田実さん 90歳前後の年齢、つまり「アラウンド90」の面々に、働き続ける理由や、元気でいられる秘訣などを聞いた。今回は政治評論家の森田実さん。
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取材場所の喫茶店に現れた森田実さん(89)は、ビシッとしたスーツ姿。かつて「めざましテレビ」などに出演していたころは和服姿だったが、スーツでも一分の隙もないダンディーないでたち。政治評論家たるもの、アラウンド90にしてもかくあるべしといったところか。
「事務所のスタッフが4人いたんですけど、全員亡くなりました。私よりも年下だったのに」
寂しそうに語る森田さん自身も、84歳だった2017年の夏に倒れるなど3度もの長期入院を余儀なくされたという。
「84歳のときは熱中症。冷房が嫌いだからつけずに書斎にいたら、バッタリと。女房がお茶を持ってきて気づいて救急車を呼んでくれました。あと1時間遅かったら危なかったといわれました」
さらに虚血性心不全の手術を受けて2カ月間、肺炎を起こして1カ月間の入院をするなど、この4年間は病との闘いの連続だった。
しかし政治評論家としての活動をやめようとは思わない。
「政治ほど面白いものはないですよ(笑)。今はひとりでやっています。私の力が必要だというところがありましたら、どんなことでもお手伝いをしたいと思っています」
森田さんは東大時代(6年間在籍)に共産党員として活動していたが、その後、党を除名され、ブントを結成した。出版社勤務などを経て、フリーの政治評論家になったのは、1973年のことだ。
「日本の政治はこの50年間、坂を静かに転がり落ちています。この間に行われた改革はことごとく失敗。でも自民党はごまかしだけはうまくなった。近年は官僚もよく協力をするので、その傾向がさらに強まっています」
そんな自民党に、先の総選挙でも野党は勝てなかった。
「岸田(文雄)さんというのは、何があるというわけでもないゼロの人。それなのに枝野(幸男)さんが勝手に自分で沈没した。政権交代を自己目的にして共産党と連合したから。ゼロの岸田さんがマイナスの枝野さんに勝っただけ」
では立憲民主党の新代表になった泉健太氏はどうなのか?
「直接話をしたことはありませんが」と前置きしたうえで、「京都(泉氏の地元)の人にいろいろ聞きました。如才なく、愛想がよくて、中身のない人だそうです(笑)。でも中身のなさは、人がよければ補えるんですよ。するとチャンスが回ってきます」。
評論家生活半世紀のベテランは、野党への期待をそう表現した。
(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2022年1月21日号
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