“優良助っ人”に共通点? マクガフが指摘「ヤクルトの外国人選手」成功率が高い理由

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2023年02月09日 18:00  AERA dot.

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昨シーズンまで4年間ヤクルトでプレーしたマクガフ
 球団史上初のセ・リーグ3連覇、そして日本一奪回を目指し、今年も沖縄・浦添の地で春季キャンプをスタートさせたヤクルト。昨年は25年ぶりのシーズン80勝に到達したが、オフには守護神のスコット・マクガフら4人の外国人が退団し、新たにキオーニ・ケラ(29歳)、ディロン・ピーターズ(30歳)、ライネル・エスピナル(31歳)という3人の外国人投手を獲得した。


【写真】ヤクルトの“史上最強クラス”の助っ人といえば ヤクルトの外国人といえばマクガフのみならず、先発ではサイスニード、野手ではホセ・オスナとドミンゴ・サンタナもチームの連覇に大きく貢献。過去10年ほどのスパンで見ても、2018年には先発のデービッド・ブキャナンがチーム最多の10勝を挙げ、2016年は中継ぎのジョシュ・ルーキがリーグ3位の39ホールドポイントをマーク。2015年はオーランド・ロマン、ローガン・オンドルセク、トニー・バーネットの救援トリオ「ROB」がリーグ優勝の投の原動力となり、野手ではウラディミール・バレンティンが本塁打王3回、打点王1回に輝くなど、多くの選手が活躍してきた。


 もちろん中には働けなかった選手もいるのだが、少なくとも外国人がまったく戦力にならなかったというシーズンはない。その理由はどこにあるのか? 2019年の来日以来、4年間で通算236試合に登板して59ホールド、80セーブを記録し、今季からはメジャーリーグのダイヤモンドバックスと契約を結んだマクガフに聞いた。


「前にも話したかもしれないけど、1つはマイクだね。彼が良い選手を選んでるんだよ。マイクに(獲得候補の)リストを送っているのはトニーとAGだから、この2人も実にいい仕事をしている」


 マクガフが指摘したのは、まずは「マイク」こと奥村政之編成部国際グループ担当部長の存在である。奥村氏は1990年代にはマリナーズでマック鈴木、ドジャースでは野茂英雄の通訳を務め、ダイエー(現ソフトバンク)を経てヤクルト入りすると、2000年代後半からは実質的に1人で外国人選手のスカウティングを担ってきた。


 現在のヤクルトはそこに「トニー」こと前出のバーネットと、「AG」こと元外野手のアーロン・ガイエルという、2人の球団OBが編成部アドバイザーとして在籍。現地でスカウト業務を行うなど奥村氏を補佐しているという。


「マイクとトニーとAG。この3人は単に実力のある選手というだけでなく、日本(の野球)にフィットする選手を選んでるんだろうね」


 そう話すマクガフ自身もそうだが、前述のサイスニード、サンタナ、オスナもまさに「日本の野球にフィットした選手」という印象がある。


「今はどの球団もしっかり調査をしているし、どこもいい(外国人)選手を連れてきてるはずなんですよ。それでも(日本で)活躍できる選手とできない選手がいる。それは、1つは日本の野球に合うか合わないかだと思うんですね」


 以前、ある球団のフロントからそんな話を聞いたことがある。ヤクルトもまた、日本の野球にフィットするかどうかという点を選手の性格面も含めて見極めていると言えそうだが、マクガフはそれに加えてヤクルトという球団の「環境面」にも言及する。


「(奥村氏らが)日本にフィットしそうな選手を見つけてきたら、チームも温かく迎えてくれる。それも首脳陣が率先してね。何かを変えるように言われることもないし、リラックスさせてもらえるから、日本に来たばかりでも違和感なくシーズンに入れるんだ」


 それは監督やコーチに限った話ではない。2019年に来日したマクガフがすんなりチームに溶け込めたのは、2人の大ベテランの存在も大きかったと振り返る。


「選手でいえばマサ(石川雅規)とノリ(青木宣親)。英語ができるセンパイ(先輩)が投打にいたから、彼らを通じて投手とも野手とも話をすることができた。それもありがたかったね」


 マクガフ自身も、後からヤクルトに入団する外国人には人種を問わず分け隔てなく接し、異国の地でストレスなく過ごせるように気を配るなど、外国人選手のまとめ役になっていたとも聞く。サイスニード、サンタナ、オスナといった選手の活躍の陰には、マクガフの存在もあったのだろう。


「ハハハ、そう思ってもらえたら嬉しいね。確かに彼らのためになればと思ってたけど、みんなグッドガイだし日本に対するリスペクトも持ち合わせていたからね。(活躍の理由は)そこじゃないかな」


 日本に対する「リスペクト」。おそらくはそれも大事な要素だろう。そこには単に「敬意を表する」というだけでなく、日本の野球に順応しよう、日本の野球に学ぼうという姿勢も含まれる。


「彼はメジャーも経験してますけど、一番良いのは日本の野球を取り入れようとしているところじゃないですか。外国人って、日本の野球に順応しようとするのか、しないのかで全然違いますから。彼の場合はすごく日本の野球を勉強しようとしてるし、日本の野球に合わせたスタイルにしようとしているんで、そこが一番じゃないですかね」


 来日1年目のマクガフを、ヤクルトの石井弘寿投手コーチがそう評していたのを思い出す。そういう意味ではマクガフも、日本で成功するべくして成功した選手だったのかもしれない。


 しっかりとしたスカウティングのもと、日本の野球にフィットするであろう選手を獲得して異国の地でも力を発揮できるように環境を整え、選手自身も日本の野球に順応しようと努力する──。それでも必ず成功するとは限らないのが難しいところではあるが、現代の日本プロ野球で外国人選手が活躍するにはどれも欠かせない要素と言っていい。


 マクガフに代わる守護神候補に挙げられるケラに、先発ローテーション入りが期待されるピーターズとエスピナル。まだキャンプも序盤であり未知数の部分は多いが、彼らが日本の野球にフィットして持てる力を存分に発揮できれば、ヤクルトは球団初の3連覇にグッと近づくことになるはずだ。(文・菊田康彦)


●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004〜08年『スカパーMLBライブ』、16〜17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。


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  • ヤクルトは助っ人は活躍してること多いけど,野手はサンタナとオスナが入る前は,しばらく外れが多かった記憶があります
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