マウンドでもサングラスを着用 オリックス・田嶋大樹の「無意識の領域で投げる」取り組み

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2023年02月26日 06:54  ベースボールキング

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ベースボールキング

サングラスをかけて25日の紅白戦に登板した田嶋大樹 [写真=北野正樹]
◆ 猛牛ストーリー【第63回:田嶋大樹】

 2023年シーズンはリーグ3連覇、そして2年連続の日本一を目指すオリックス。今年も監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第63回は、田嶋大樹投手(26)です。6年目の今季はオフから「フォームを固める」をテーマに、基本に立ち返りました。自主トレ期間中からマウンドの傾斜を使ってボールを投げ、小学生以来というシャドーピッチングにも取り組んでいます。

 「無意識の領域で投げたい」と、投球に集中するため取り入れたツールがサングラスと“ノイキャン”と呼ばれる雑音低減イヤホン。サングラスはマウンドでも着用し、視線を気にすることなく投球に集中しています。


◆ 追い求めた“投球フォームの安定”

 「意識せず投げるのではなく、無意識に良いフォームで投げたい。無意識の領域にいきたいのです」

 理想とするフォームに近付くためのアプローチは、人それぞれ。6年目の左腕が選んだのは、「技術メインの練習を多く取り入れること」だった。

 佐野日大高からJR東日本を経て、ドラフト1位で入団。6勝(3敗)を挙げた1年目の終盤に肘を痛め、2年目は10試合の登板(3勝4敗)にとどまったが、3年目以降はローテーションを守り毎年20試合以上に登板してきた。


 故障をしない体を作り基礎体力をつけるため、2020年からは人の2倍以上は走ると決め、結果を出してきた。

 次なるステップが、技術の習得だ。「昨年までフォームが固まらなかったので、フォームを固めたいんです。技術の精度を上げれば、もう少し成績も安定するのではないかなと」。投球フォームが安定すれば、ボールの精度も高まる。


 オフは、マウンドの傾斜を使ってボールを投げた。

 「結局、仕事をするのはマウンドですから。平地でずっと投げていても仕方がないと思って。いかに自分の一番良いフォームで投げるかというと、やはりマウンドで投げるのが一番いいかな、と」

 大阪・舞洲の球団施設のブルペンには、京セラ仕様のマウンドもある。フォームを固めるには、うってつけだ。


◆ 創意工夫でさらなる進化を

 キャンプインした2月1日。宮崎キャンプの午後の自主練習で、タオルを持ってシャドーピッチングを繰り返す田嶋の姿があった。

 小学生以来という、シャドーピッチング。「何か意味があるのかな、と思ってシャドーは好きじゃなかったんですが、ここに来て、やる意味が分かって来て。何でも一緒、意味を理解してやらないと、やっている意味がないんです。やっと、シャドーをやる意味が分かって来たんです」。

 負荷の少ないタオルを使って正しい肩や肘の使い方を身につけ、自分に合った投球フォームを作り上げる。傾斜のあるマウンドに親しむことも含め、基本的な部分からの取り組みだ。


 新たに取り入れたものもある。サングラスと、雑音を低減するノイズキャンセリングイヤホンだ。

 着用する理由は、集中したいから。

 「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ばれる気質を持った人がいます。五感が人より敏感で、世の中では『繊細さん』と言われる人。僕もその項目にあてはまることに、1〜2年前に気付いたんです。今、見られているな、と思うだけで結構緊張しますし、目を合わせて話すのもきつくて。他の人の会話なども、内容を聞いて感情移入をしてしまったりします。だから、情報遮断ですね」


 HSPは、病気ではなく生まれ持った個人の気質。専門家によると日本人の5人に1人は該当するという。

 キャンプ地のブルペンは、捕手に向かって左側に観客席がある。コロナ禍が収まり、3年ぶりに開放されて連日ファンで埋まる。ただ、左投手がセットポジションで構えると、ファンと対面する形で投げることになる。

 「サングラスをつけなくて投げるのがしんどいのです。笑いながら見ていたり、話をしながら見ていたりするのを遮断するんです」

 もちろん、応援してくれるファンの気持ちはありがたく、励みになる。その期待に応え、チームの勝利に貢献するためのツールが、サングラスであり、ノイズキャンセリングイヤホン。周囲の目や音を気にする自分を、ストレスのない状態に開放することで投球に集中できるというわけだ。


 「何か分からないけど……という人が、自分の気質を知って正しく理解をして、ストレスをためないように対処するきっかけになってくれればいいですね。ノイズキャンセルイヤホンをつける際には、周囲の安全に注意を払ってほしいですね」

 25日、初登板となった紅白戦でもサングラスをかけて先発し、2回を2安打、2奪三振・1四球で無失点と上々の滑り出し。
個性を大切にしながら自分を取り巻く環境に合わせ、創意工夫でキャリアハイを目指す。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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