プールA:イタリア 野球でもヨーロッパの強豪として君臨する「カルチョの国」

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2023年03月01日 07:20  ベースボールキング

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ベースボールキング

サム・ガビグリオ
◆ イタリア野球の歴史

「カルチョの国」として知られているこの国だが、野球の世界でもヨーロッパ屈指の強豪として名を馳せている。

 長らく国際野球連盟(現世界野球ソフトボール連盟)会長として野球の国際化に尽力してきたアルド・ノタリはこの国出身である。

 古くは1884年にリグリア海に面した北部の港町・リヴォルノに寄稿したアメリカ人船員がプレーしたという記録が残っており、その5年後にはアルバート・スポルディング率いるメジャーリーガーの世界一周ツアーが立ち寄ったが、この国に本格的に野球が普及したのは第2次大戦後に進駐してきたアメリカ兵によってのことのようだ。

 1951年にはイタリア野球ソフトボール連盟が発足。1963年に開始されたヨーロッパのクラブ王座決定戦、ヨーロピアンカップにも参加し、これまで1976年からの13連覇を含む35回の優勝を成し遂げている。ナショナルチームによるヨーロッパ選手権においてもオランダの24回に次ぐ10回の優勝を誇り、欧州二強の地位をゆるぎないものにしている。

 イタリア野球の特徴はそのクラブチームの充実にある。1948年に始まったリーグ戦は、サッカーと同じくセリエAを頂点とするピラミッドを形成し、各クラブは懐具合に応じて、選手に報酬を支払うこともある。トップリーグともなると、日本円にして数十万円の月給で外国人選手を引っ張ってきて、これがリーグのレベルの向上にも寄与している。

 2007年にはアマチュア(セミプロ)リーグのセリエAから8チームを集め、イタリアンベスボールリーグが発足、プロ化への舵を切った。

 2012年シーズンには西武で活躍し、北京五輪の日本代表にも選ばれたG.G.佐藤がフォルティテュード・ボローニャでプレーしている。

 しかし、イタリアプロ野球は短命に終わった。全選手への報酬支払い、入場料の徴収。ファームチームの保有というリーグから課せられたプロ球団としてのノルマを果たせない球団が続出、本来なかったはずのアマチュアトップリーグ・セリエAとの入れ替えをせざるを得ない状況となり、結局、2018年からは、元の「セリエ」体制に戻り現在に至っている。


◆ 「イタリア系アメリカ人」の参加で快進撃を披露

 イタリアが本格的に国際舞台にデビューしたのは1970年の第18回ワールドカップのことである。

 1978年の初開催以降計4大会を自国開催したものの、結局ここでは一度もメダル(3位以上)を獲ることができなかった。オリンピックの舞台でも公開競技時代を含めて5度出場してるが、世界の壁は厚く、これまで目立った成績は残せていない。

 WBCでも過去4大会においては、3度第1ラウンドで敗退という結果に終わっているが、「イタリア系アメリカ人」が参加でき、メジャーリーガーもロースターに名を連ねるこの大会では、健闘を見せている。

 そのハイライトは、2013年に行われた第3回での快進撃だ。第1ラウンドでメキシコ、カナダを破り、2勝1敗でアメリカとともにマイアミでの第2ラウンドに進出すると、1回戦のドミニカ戦で初回に4点を先制してファンを驚かせた。

 この試合は結局、追加点を取れず、徐々に追い上げを見せたドミニカに1点差で惜敗してしまうが、続く敗者復活戦の初戦でもプエルトリコ相手に3対4と、この大会で決勝まで進んだ両チーム相手に大健闘を見せた。この大会のドミニカ戦で先発し、好投を見せたブラジル生まれのチアゴ・ダシルバ(ドゥランゴ/メキシカンリーグ)は、今大会も指名登録枠に名を連ねている。


◆ 怖いものなしのイタリアが番狂わせを起こせるか

 今大会のチームを率いるのは。イタリア系メジャーリーガーのレジェンド、マイク・ピアッツァ監督。イタリア国籍を取得するなど、「第2の母国」に対するアイデンティティが強い彼は、度々イタリアを訪問し、野球発展に尽力している。

 ロースターは、イタリア系アメリカ人のマイナーリーガー、FA選手で構成される。現地リーグでプレーする「純粋な」イタリア人の数は過去大会と比べても少ない印象である。


 投手陣は、一昨年韓国リーグで、昨年はドジャースの3Aでともに6勝を挙げたサム・ガビグリオが先発の柱になるだろう。他、昨年マリナーズで53試合に登板したマシュー・フェスタ、カージナルスで47試合に登板し6勝を挙げたアンドレ・パランテ、それにアスレチックスで3試合登板のライアン・カステラーニらメジャーリーガーがいるものの決して盤石とは言えない。

 一方のディフェンス陣に目を投じてみると、二遊間は、2021年シーズンにロイヤルズで正遊撃手を務めたニッキー・ロペスと同年エンゼルスで正二塁手だった大谷翔平の同僚デビッド・フレッチャーで形成されるものと思われる。

 打撃陣についても、ロイヤルズで昨年72試合に出場し、10本塁打のビニー・パスカンティーノ、レイズでメジャーデビューしたマイルズ・マストロブオーニ、韓国リーグでプレーしていたイタリア国籍をもつドミニカ人、ロベル・ガルシア(トロス/ドミニカリーグ)らの内野手、セリエAで34試合(総試合数36)に出場し、打率.317、31打点を記録したイタリア生まれのアルベルト・ミネオが控えている。
  
 イタリアは台湾で行われるプールAで第1ラウンドを迎える。メンバーの多くが現在無所属のフリーエージェントだが、彼らにとってはWBCの舞台はかっこうの見本市だ。

 今シーズンの契約というニンジンが目の前にぶら下がっている状況はモチベーションも高い。この組はホスト国台湾以下、過去2大会4強進出のオランダ、日本で順調な仕上がり具合を見せた第1回大会準優勝のキューバ、パナマと手ごわい相手がそろっているが、ある意味怖いものなしのイタリアがジャイアントキリングを成し遂げれば大会は盛り上がるだろう。


文=阿佐智(あさ・さとし)







【公式発表】イタリアの最終ロースター
Team Italy's #WorldBaseballClassic roster: pic.twitter.com/pm15GK7SVI— World Baseball Classic (@WBCBaseball) February 10, 2023

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