「宮城に追いつけ、追い越せ」…オリックス・紅林弘太郎が目指す「メジャー挑戦ができる選手」

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2023年03月03日 06:52  ベースボールキング

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2日のロッテ戦で3安打2打点の紅林弘太郎[写真=北野正樹]
◆ 猛牛ストーリー【第64回:紅林弘太郎】

 2023年シーズンはリーグ3連覇、そして2年連続の日本一を目指すオリックス。今年も監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第64回は、4年目の紅林弘太郎内野手(21)です。これまでは大型遊撃手として巨人の坂本勇人を目標にしてきましたが、今はメジャーの現役選手としてただ一人の三冠王ミゲル・カブレラ(タイガース)を理想の選手像として追い求めています。

 U-18日本代表候補として、星稜高の奥川恭伸(現・ヤクルト)から二塁打を放つなど注目を集めた高校時代。プロ入り後も2年目から正遊撃手として活躍してきましたが、「3年間続けて、初めてレギュラーになったと言える」と今季にかけています。


◆ 打ち明けた“憧れ”

 次の目標は「4年後にメジャー挑戦が出来るような選手に」。

 「これまで誰にも聞かれませんでしたので、言っていませんでしたが……」

 キャンプ中盤、メジャー志向を尋ねると、はにかんだような笑顔で答えが返って来た。


 今年1月、地元・静岡のNHKのインタビューにて、初めて“メジャー”を目標にしていることを語った。

 プロ入り前も、プロ入り後も「打てて守れる大型遊撃手」として坂本を目標とする選手に挙げてきたが、それだけ自信をつけ、有言実行で高みを目指すということなのだろう。


 今、目指す選手はカブレラ。2012年には打率.330・44本塁打・139打点で45年ぶりに三冠王に輝いた強打者。奇しくも背番号「24」は同じだ。

 「プロ入りしてからYouTubeでメジャーの選手の映像をよく観るようになって、理想の打者になりました。逆方向に本塁打が打てて、それもフルスイングではなくヘッドがパーンと走って飛ぶ感じの本塁打なんです。いろいろと経験して来て、自分なりの感覚があるんで」

 身長で約6センチ差。どのコースでも打ち分けるテクニックは参考になる。


◆ 同期の宮城に「追いつけ、追い越せ」

 「(メジャーは)先の話。誰もが目指す場所ですし、長期的な目標として4〜5年後くらいにはそういうところを目指せる選手になりたいと思います」

 2年目から開幕スタメン出場を果たし、球団史上初の10代での2ケタ本塁打(10本)を記録。勝負強い打撃と、後半戦から向上した守備力で25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。

 その後の日本シリーズでも22打数7安打、打率.318と躍動。守備の名手・安達了一に代わり、遊撃のポジションを守ってきた。


 しかし、本人は「監督が我慢をして使って下さっただけ。自分でレギュラーを獲得したという気持ちはありません」という。

 昨季は5月に44打数4安打、打率.091と打撃不振に陥り、出場選手登録を抹消された。

 二軍落ちの直後には、「監督に一軍でやらせてもらい、打てなくても我慢してもらえる、という甘えがあったのかもしれない。そうは思ってはないんですが、どこかにそういう気持ちがあったのかなと。魅力あるスイングが出来るよう一からやっていきたい」と語ってくれた。


 練習量はチームで1、2を争う選手。慢心があったわけではない。それでも、自分を見つめ直す機会ととらえてバットを振り込んだ。

 本塁打は2021年の10本から6本、打点も48から32に減少したが、三振数は101から71に減り、四球は12から26に増えた。

 日本シリーズでも、初戦で2点を追う2回一死満塁から右前へ適時打を放ち、第5戦では4回二死一・二塁で外角寄りのストレートを中前へはじき返すなど、勝負強さを見せつけた。


 ドラフト同期で1位の宮城、2位の紅林。高い目標を掲げるのは、公私ともに仲がよく「みやくれ」コンビを組む宮城の存在も大きい。

 「もちろん、同じ舞台に立ちたい。常に向こうが先に行っているので、追い付き、追い越せです。ポジションは違いますがいい刺激になっています」

 新人王に輝き、WBCでも活躍が期待される左腕は「僕はそんなすごい球を持っているわけではありませんので」とメジャーに関心を示さないが、紅林にとってレギュラーの地位を確固たるものにして日本代表までステップアップし、その先に見えてくるのがメジャーなのだ。


 宮城は2月25日のWBC壮行試合・ソフトバンク戦(ひなたサンマリンスタジアム宮崎)で4番手として6回から登板。1回2/3で4失点。先頭打者を四球で歩かせ、バックの拙守の後、連打を許して4失点と乱れた。

 翌朝、携帯電話に「自信を失くすわ」というメッセージが入っていたそうで、「俺に言われてもしゃあないけど、2日もすればみんな忘れるし、気にせずにいけばいいよ」と返した。

 一見、突き放したような文面だが、悪い投球をした後、落ち込んでしまい気持ちの切り替えに時間が掛かる宮城の性格を分かりきった上でのアドバイスだ。


◆ 現状に満足することなく、結果を追い求めて…

 今年のキャンプでは、紅林がホテルに帰るためのタクシーに乗る時間が早くなった。

 これまでは全体練習後の自主練習で打撃練習、ランニング、ウエートトレーニング、素振りをこなして、球場を後にするのはいつも最後のグループだった。

 「いままでダラダラとやっていたわけではありませんが、少しメリハリをつけようかなと思って」と明かす。

 それでも、「練習を手伝って下さる打撃投手の方からは『肩がきついわ』と言われます(笑)」と言うほどだから、練習量は多少、少なくなった程度かもしれない。3度のキャンプを経て、量をこなす段階から質の高さを求める練習方法が見えて来たのだろう。


 チームはレッドソックスに移籍した吉田正尚の抜けた穴を埋めるため、今年のキャンプでは個々の選手のレベルを上げる目的で育成選手や新人選手らを起用することが多くなり、レギュラークラスの紅林の出番は多くない。キャンプ中盤に行われた社会人セガサミー、JR西日本との実戦や、巨人との練習試合ではベンチからも外れた。

 昨年までより少ない実戦経験に不安はないのか尋ねたら、「試合に出なくても、強い打球が打てるいい練習が出来ているので、いいキャンプだったと言えます」と自信に満ちた表情だった。

 キャンプ最終日に行われた『球春みやざきベースボールゲームズ』のロッテ戦には「3番・遊撃」で出場し、3回と8回に適時二塁打を放つなど4打数3安打2打点と、言葉を裏付ける内容の打撃だった。


 昨年のオープン戦は打率.321をマーク。「毎年春先の成績が良く、満足じゃないですがこれでいけるんじゃないかと思っちゃうんで、シーズンも頑張ります」と紅林。

 ちなみにこの日、フル出場したのは2年目の来田涼斗と紅林だけ。「監督さんから『代わるか』と言われましたが、打席に立ちたかったのでお願いしました」と言い、8回の適時に塁打は、3ボールから7球目の内角球を左へ。

 「生き残るためにはボール球を振らず、簡単にアウトにならないこと。正尚さんのように、カウントを追い込まれてもボールを投げさせることが必要です。あの打席は、いいアプローチが出来ました」

 現状に満足することなく、結果を追い求める。今年の紅林から目を離せない。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

このニュースに関するつぶやき

  • メジャー以前に,まず打撃を何とかしないと
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