プールC:メキシコ 「北の巨人」が目指すベスト4進出

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2023年03月04日 01:14  ベースボールキング

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過去4大会に出場しているオリバー・ペレスもメンバー入り
◆ メキシコ野球の歴史

 アメリカに版図の多くを奪われた歴史を持つとはいえ、広大な国土をもつメキシコに野球が伝来した“入り口”は複数あるようだ。

 一説によれば、現在の野球のルールが形作られた2年後の1847年に、大西洋岸・ベラクルス州ハラパで米軍兵士によって行われた試合が「メキシコ野球事始め」とも言われている。

 続いて、アメリカ水平により太平洋岸に、北部アメリカ国境から首都メキシコシティへと延びていった線路とともに、そして、キューバ人によって南部ユカタン半島に野球はメキシコにもたらされた。

 最初は、アメリカ人がゲームを楽しむのをメキシコ人たちは眺めるだけだったが、記録に残っているところでは、1884年にメキシコシティで地元民による試合が行われたとある。


◆ 『メキシカンリーグ』のあゆみ

 その後、20世紀を迎えると、メジャーリーグをはじめとするアメリカのチーム、あるいはキューバのプロチームがメキシコを訪問するようになり、1925年にスポーツ記者アレハンドロ・レイエスにより、現在まで続くプロリーグ『メキシカンリーグ』が誕生する。

 首都周辺のクラブによるシーズン数十試合という小ぢんまりとしたリーグは、1940年代になると富豪ホルヘ・パスケルによって、全国規模のナショナルリーグに育てあげられる。

 名門メキシコシティ・レッドデビルズを買収したのに加え、自らの故郷の名を冠したベラクルス・ブルースを設立してリーグに参入した彼は、リーグ全体も牛耳り、メキシカンリーグを「第3のメジャーリーグ」とするべく、アメリカに対し“野球戦争”とも称される選手の引き抜きを仕掛けた。

 しかし、この挑戦は失敗に終わり、資金の尽きたパスケルは1952年シーズンを前にリーグから撤退。その3年後、航空機事故のためにその一生を終えることになる。


 この年、1955年に『メキシカンリーグ』はアメリカ・マイナーリーグ統括組織であるナショナルアソシエーションに加盟。これを機にマイナーリーグとなった。

 このシーズンのはじめには、巨人が中南遠征の一環としてメキシコを訪問。ユカタン半島のメリダ、中央平原のプエブラ、そしてメキシコシティでオープン戦を行っている。

 1966年シーズン前には、新たにリーグの盟主となったアレッホ・ペラルタが設立したメキシコシティ・タイガースが来日し、NPBのチームと対戦したが、13戦全敗に終わる。

 この翌年、メキシカンリーグは3Aに“昇格”。現在はこのランキングも外され、世界第2の規模を誇るナショナルリーグとして、国内18都市にフランチャイズが展開されている。


 この国には、さらに「冬のプロ野球」もある。

 野球伝来の地のひとつである太平洋岸に展開される『メキシカンパシフィックリーグ』を頂点とするウィンターリーグがそれだ。

 メジャーリーガーも時折参加するこのリーグは、地方リーグながら人気・実力ともメキシカンリーグを上回る。


◆ “ベスト4”を目指して虎視眈々

 WBCの舞台では、絶望の淵に立った日本を救った「アナハイムの奇跡」を演じた第1回大会と、1次ラウンドを自国開催した第2回大会までは2次ラウンド進出を果たしたものの、それ以降の2大会は1次ラウンドで敗退している。

 今大会はメジャーの一線級を集め、初の4強進出を狙う。


 ブルージェイズの若き司令塔アレハンドロ・カークや、ロッテからソフトバンクに移籍したロベルト・オスナの出場辞退は痛いが、全体として他の強豪にひけをとらない布陣となっている。

 攻撃陣について言えば、ボートでキューバを脱出し、メキシコ国籍を取ったという逸話をもつ2021年のアメリカンリーグ新人王ランディ・アロサレーナ(レイズ)、ここ2シーズンで計39本塁打を放っているルイス・ウリアス(ブリュワーズ)、昨年メジャーデビューを飾った遅咲きのスラッガー、元オリックスのジョーイ・メネセス(ナショナルズ)ら、それなりに役者はそろっている。

 現在のところ、捕手として登録されているのがオースティン・バーンズ(ドジャース)だけというのが気になるが、いざとなれば2018年にメキシカンリーグで1試合マスクをかぶった経験のある内野手のロベルト・バレンズエラ(モンテレイ)でまかなうつもりか。同じくメキシカンリーグからは、昨季打率.319をマークしたホセ・カルドナ(モンテレイ)もロースター入りしている。


 投手陣には、一昨年20勝を挙げ、昨年も17勝、いまやドジャースのエースに成長したフリオ・ウリアスが柱として君臨。さらに昨年メッツで12勝のタイファン・ウォーカー(フィリーズ)、アストロズで13勝のホセ・ウルキディらが名を連ねる。

 また、昨季メキシコで夏冬それぞれ9勝を挙げたマニー・バレダ(ティファナ)ら「国内組」や、東京五輪での好投が認められオリックス入りしたセサル・バルガス(メキシカンパシフィックリーグ・エルモシージョ)もメンバー入りしている。

 そして指名投手枠には、41歳になるレジェンドで昨年もダイヤモンドバックスでプレーしメジャー700試合登板を果たしたオリバー・ペレス(メキシカンパシフィクリーグ・クリアカン)が第1回大会から5大会連続でメンバー入りしている。


 今大会のメキシコはアリゾナでアメリカ、カナダ、コロンビア、イギリスとともにプールCで1次ラウンドを迎える。

 コロンビア、イギリスといった格下相手の試合を確実に取って、カナダ戦に標準を絞れば、3大会ぶりの第2次ラウンド進出も見えてくるだろう。


文=阿佐智(あさ・さとし)







【公式発表】メキシコの最終ロースター
Team Mexico's #WorldBaseballClassic roster: pic.twitter.com/ZSs6E29tTv— World Baseball Classic (@WBCBaseball) February 10, 2023

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