入院中の戦友の想いも背負って…中日・小笠原慎之介が挑む開幕投手の大役

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2023年03月07日 10:12  ベースボールキング

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開幕投手の座を勝ち取った小笠原慎之介 (C) 産経新聞社
◆ 指揮官を唸らせた気迫の投球

 侍斬りの向こう側に、“開幕投手”の指名が待っていた。

 中日・小笠原慎之介が3月3日に行われた侍ジャパンとの壮行試合(バンテリン)に先発。5イニングを3安打・1失点に抑える好投を見せ、自己最速タイとなる152キロもマークした。


 「確実に成長を感じます。きょうのピッチングを見て、今年は小笠原にしようと本人にも伝えました。開幕は小笠原でいきます」とは、試合後の立浪和義監督の声。

 開幕戦となる3.31巨人戦(東京ドーム)の先発を明言した。


◆ 「頑張れよ 見とくからな」

 小笠原にとって、日の丸戦士とのゲームは“万全の姿を見せる場所”だった。

 2年連続で規定投球回に到達し、初の2ケタ勝利の看板を背負って臨む2023年シーズン。

 「チームの顔としての開幕投手になりたいです」

 希望を公言して自主トレに臨み、実戦を重ね、巨倒のチャレンジ権を手にした。


 活躍を届けたいチームメートがいる。チームメートの岡田俊哉だ。

 左腕は2月22日に行われた楽天との練習試合(北谷)に登板し、転倒。右大腿(だいたい)骨を骨折した。翌23日にメスを入れ、大腿(だいたい)骨骨幹部整復固定術を受けていた。


 アクシデントから一夜明けた朝、小笠原は岡田から連絡を受け取っている。午前5時50分。小笠原のもとにLINEのメッセージが届いた。

 「頑張れよ 見とくからな」

 寝起きの左腕へ、寝付けない岡田からの連絡だった。

 小笠原は「絶対に戻ってきてください」と返信した。ベッドの上の岡田からは「時間がかかるかもしれないけれど、頑張るわ」と来た。


◆ 責任をきっちり果たし、誰かの思いも背負って…

 その日、小笠原は阪神との練習試合(アグレスタジアム北谷)に先発した。

 塩が盛られ、酒で清められたマウンドに上がって3イニングを2失点。

 「ピッチングに専念しようと思いました」

 ただ、チームメートの大ケガから時間がたっていない。まして、岡田の転倒の瞬間を見ていた。

 「聞いた事のない音がしました。ただことじゃないと思いました」

 初回先頭の近本光司にストレートの四球を与えて、いったんマウンド後方でスパイクの土を払う。

 まっさらなマウンドに立つ立場として、メンタルを整えたはずでも、制球が定まらない。グラウンドには、岡田のアクシデントの余韻が残っていた。


 それでも、一死一・三塁で大山悠輔を遊ゴロ併殺に仕留めてピンチを脱出。2回も先頭に四球を与え、東海大相模高の後輩でもあるドラ1・森下翔太に三塁線を破る適時二塁打を放たれるなど2失点した。

 試合後は「ボール自体にネガティブな部分はありません。今の体の状態を確かめられました。(年明けの米国自主トレで習得した)ツーシームも投げられました。次に向かってまた調整していきます」と語った。


 岡田は3月3日、沖縄県うるま市の病院から名古屋市内の病院へと転院。小笠原が開幕投手を指揮官から告げられた日と重なった。両投手は同じ高卒ドラ1。入団から数年間は思うような結果を出せず、もがいた時期も重なる。

 大きな期待を受け、責任をきっちり果たし、誰かの思いも背負う。それこそが近未来エースへの道のり。

 竜を背負って立つには、荷物は大きくなるばかり。小笠原はすべてを受け止め、背負いこんで大きくなる。


文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)




【動画】“開幕投手”通達の瞬間!小笠原慎之介投手のvs侍ジャパンに密着!/#Dragons_Inside

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