航行中の機内でボヤ発生! 乗客の元消防士が消火を手伝う(米)<動画あり>

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2023年03月07日 14:11  Techinsight Japan

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ニューヨーク市消防局の元消防士が消火に尽力(画像は『New York Post 2023年3月3日付「Retired NYC firefighter Rocco Chierichella helps Spirit Airlines crew put out midair fire」(WJXT)』のスクリーンショット)
上空を飛んでいる飛行機の中では、些細なハプニングも時に乗客と乗務員の身の安全を脅かしかねない一大事となる。先日、米フロリダ州へ向かっていた機内でボヤが発生したが、幸いなことに乗り合わせていた元消防士がキャビンアテンダントの消火活動を手伝い、鎮火したという。米ニュースメディア『CNN』『ABC7 New York』『New York Post』などが伝えている。

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現地時間1日午後、米テキサス州のダラス・フォートワース国際空港からフロリダ州のオーランド国際空港へ航行していたスピリット航空259便の機内で突然、煙と異臭が立ち込めた。

『CNN』のインタビューに応じたジョセフ・フレックさん(Joseph Fleck)は、妻子とディズニー・ワールドへ行くために同機に乗っていた。彼はボヤ発生時の様子をこのように振り返っている。

「だれかが“火事だ!”って叫んだので、声のする方を見てみたんです。」
「数名の乗客が素早く立ち上がって頭上の棚を開けると、リュックサックが燃えていました。携帯電話をモバイルバッテリーで充電していたようです。」

この時、機内の別の場所では、寝ていたロッコ・シェリチェラさん(Rocco Chierichella)が隣に座る妻の「火事よ!」という叫び声で飛び起きた。すでに引退しているが、ロッコさんは2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件で出動したニューヨーク市消防局の元消防士だった。彼は目を覚ましてすぐに煙が天井を覆っていることに気付き、火元となっている棚に急いで向かった。

乗務員らが必死に火を消そうとしているところに加わったロッコさん。彼はのちに「自然な流れで消火の指揮を執りました。本能的なものですよ」と『CNN』のインタビューに答えている。乗客がSNSやメディアに公開した動画でも、消火にあたっている乗務員や乗客の中心になってロッコさんが火元を探し、的確な位置に消火剤を噴射できるよう指示を出しているのが分かる。

「そうだ、そこだ! もっと(消火剤を)かけて。」


ほどなくして火は消し止められ、残りの処理を乗務員に任せて自席に戻るロッコさんに、周囲の乗客が拍手で称えている様子も捉えられていた。

同機はその後、フロリダ州ジャクソンビル国際空港に目的地を変更して安全に着陸した。また現在、米連邦航空局が今回の件を調査しているが、ボヤの原因は携帯電話ではなく充電中の電子タバコだったと発表された。

ロッコさんは「すぐに対応できたのが幸いでした。本当に酷いことになっていたかもしれませんから」と付け加えてインタビューを締めくくった。彼は火元のリュックサックを素手で叩いた際に数本の指にやけどを負い、着陸後に病院へ運ばれた。

着陸後に救助にあたったジャクソンビル消防救助隊のエリック・プロスイマー隊長(Eric Prosswimmer)は、最終的に10名ほどが不調を訴えて病院に搬送されたと『CNN』に話しており、このように続けた。

「病院に搬送された乗務員及び乗客を含む10名の方々は全員、命にかかわる状況ではありません。」


ただ前出のジョセフさんは「においがきつくて、息苦しかったですよ。2時間ぐらいずっと咳き込みました」と明かしており、しばらくは喉の不調を感じたもようだ。

なおスピリット航空は緊急着陸したジャクソンビル国際空港には就航しておらず、オーランド国際空港まで代替機の用意ができなかったことから、乗客はそれぞれの別の手段で目的地へ移動することになったようだ。ジョセフさんとその家族は、配車サービス「Uber」でディズニー・ワールドへ向かったという。

ジョセフさん自身のTwitterによると、スピリット航空からは航空券代の全額返金、200ドル(約27000円)のUber代の補償のほか、100ドル(約13500円)のトラベルバウチャー(航空券などの購入時に使える割引金券)と食事券の提供があったそうで、こう明かした。

「今回のことは航空会社の責任ではありませんでしたが、彼らは丁重に対応してくれました。ただ空港に着いた後、飛行機からすぐに降ろしてくれていたらなお良かったと思います。」

なお今回のニュースについて、ネット上ではロッコさんや乗務員の勇敢な行動を称えるコメントが寄せられた。

「この乗客と乗務員はよくやった!」
「ロッコさんはヒーローだよ。彼が乗っていなかったら、事態はまったく違った展開になったかもしれない。」
「窓を開けて煙を外に追い出せない飛行機内の火事だなんて、自分ならパニックを起こしちゃうよ。」

しかし現役のキャビンアテンダントや関係者が多く集まるネットコミュニティでは、動画内の乗務員の対応が機内で火災が起きた場合の通常訓練を受けている方法とはやや異なるため、乗客が消火活動に加わったことを疑問視する声もある。

ほかにも「航空会社や当局は、速やかにリチウムイオン電池の持ち込みを禁止しないとまた必ず災害が起こるよ。缶の中に入れるだけでは不十分なんだから」と、現在の機内持ち込み規則の脆弱点を懸念するコメントも見受けられた。

空港で旅客と荷物の審査の責任を負う米国連邦運輸保安庁は、電子タバコやモバイルバッテリーは機内持ち込みを許可しているが、機内に持ち込まれたリチウム電池の使用や充電に関しては特に制限していない。

今回のボヤ騒ぎについて、スピリット航空は「機内の安全を確保するために迅速に行動してくれた乗務員と乗客に感謝するとともに、航空機にすぐ駆けつけてくれた消防救助隊に感謝します」とコメントを発表した。



画像は『New York Post 2023年3月3日付「Retired NYC firefighter Rocco Chierichella helps Spirit Airlines crew put out midair fire」(WJXT)(Twitter / @nottajshow)』『Joseph Fleck 2023年3月2日付Twitter』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 秋本神奈)

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