「きつい練習ほど楽しくやる」次のステージを見据えて鍛える|つくばヤング

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2023年03月08日 17:34  ベースボールキング

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2018年には全国大会で初めてベスト8に進出。この春も含めて三期連続の全国大会出場を決め、甲子園常連の強豪高校へ進む選手も増えている「つくばヤング」(茨城)。そんなチームは、高校、大学を見据えた選手の土台を大きくするトレーニングに力を入れているという。どんな考えでどんなトレーニングを行っているのだろうか?



■選手の土台を大きくする
つくばヤングでは、冬の時期は特にウォームアップとトレーニングに力を入れている。取材に訪れた2月上旬も8:30〜11:00までの時間を割いて、入念に行われていた。

中学時代は選手の発育発達が著しい時期。成長が早い選手は高校生並みの体格をしていることも珍しくない一方で、成長が遅い子は逆に小学生並みの体格であることもある。同じ中学生でも6学年の発育差が生じる場合もあるのだ。
そのため、全員に同じ強度、負荷のトレーニングを一律に行わせると怪我に繋がる恐れがあるため、つくばヤングでは定期的に外部から専門トレーナーを招いて、成長差や体格差に気を配りながらトレーニングを行っている。



この日はグラウンドでのトレーニングを行う前に、3000メートルの12分間走、クーパーテスト(最大酸素摂取量を簡易的にチェックする方法)が行われた。昨今では「野球の練習に長距離走は必要ない」という意見も聞かれるが、藪田武史監督はアスリートとしての心肺機能を高めることが狙いだと話す。
「例えば夏の暑い時期、三塁打を打ってそこで息切れして、次の回から疲れてパフォーマンスが落ちてしまうようではダメですよね? 子ども達にもそういうふうに12分完走をする狙いを説明して、目的を持って取り組んでもらっています」

12分完走を終えてからはグラウンドに場所を移し、肩甲骨と胸郭、股関節の可動性を高めるトレーニングが行われた。これらの箇所を鍛えるのは投げる、打つのパフォーマンスに繋がるからだとトレーナーの三上竜之介さんは話す。
「胸郭の可動性が低いと、胸を十分に張れないため、背中が丸まって肩のがい旋がしっかりできずに肩に負荷のかかる投げ方になってしまいます。打つ方では、股関節が使えないとスイングした際に背骨に負担がかかり腰椎分離症になる恐れもあります」



つくばヤングは試合での勝利を全力で目指す。一方で、目先の結果よりも選手達に高校、大学で大きく羽ばたいてもらいたいというという藪田監督の思いがある。そのために、選手としての土台を大きくするためにトレーニングに多くの時間を割いている。


■「きつい練習ほど楽しくやる」
キツそうなトレーニングメニューが次々行われる。だがそこにピリピリした空気はない。メディシンボールを両手で頭上に掲げて走るリレーでは、負けたチームには罰ゲームのペナルティがあるため、苦悶の表情の中にも笑顔が絶えず、順位を競って盛り上がっていた。



チームのモットーは「きつい練習ほど楽しくやる」。
監督も楽しそうに、汗を流す選手達の様子を見つめていた。



トレーニングの最後はグラウンドのある運動公園の外周300メートルを10本ダッシュ。これも「体力をつける」「やり抜く力を培う」といった漠然とした目的で行われているわけではない。
「250メートルを越えた辺りから、選手達は内転筋を使い出すそうなんです。内転筋は鍛えるのが難しい部位ですから、この距離を走ることによって鍛えることができます」とその目的を説明してくれた。
こういった知識を持っているのも、直ぐ近くにある筑波大学野球部出身の石黒浩二ヘッドコーチが、頻繁に同大学に出向いて学んでくることができるからだ。



トレーニングに力を入れ始める前は、バッティング練習で両翼80m(+3mの高さのフェンス)を越える選手は3人くらいしかいなかったが、今は10人以上が越えるようになった。ピッチャーの球速も上がり、コントロールも以前よりも全体的に良くなってきていると感じていると藪田監督はトレーニングに手応えを感じている。そういった効果もあり、2018年には全国大会で初めてベスト8に進出することもできた。甲子園常連の強豪高校から声がかかる選手も増えてきた。

「『高校での練習の方が楽です』と話してくれるOBもいるんですよ」という藪田監督。全力で勝利を目指しながら、高校、大学で選手達が飛躍する姿を思い描き、今日も選手達を鍛え上げる。(取材・写真/永松欣也)

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