エンジニアが感じたクアルタラロとモルビデリの強みと成長。2022年を戦ったライダーたちの評価/ヤマハ編

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2023年03月22日 20:30  AUTOSPORT web

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2022年型ヤマハYZR-M1と星野仁さん、関和俊さん、矢田真也さん
 全20戦で争われたロードレース世界選手権の2022年シーズンが幕を閉じ、オフシーズンに日本の3メーカーが恒例のMotoGP取材会を実施した。ヤマハでは関和俊氏(プロジェクトリーダー)、矢田真也氏(ファビオ・クアルタラロ サポートエンジニア)、そして星野仁氏(フランコ・モルビデリサポートエンジニア)がインタビューに応じて、2022年型ヤマハYZR-M1と2022年シーズンの総括を語った。

 2021年に王座を獲得したヤマハは、2022年も防衛に励み最後までタイトル争いを繰り広げたが、惜しくも敗れた。そんなヤマハでYZR-M1をライドしたライダー達の姿は、マシン開発陣営の目にどのように映っていたのだろうか。

 まずは、ヤマハのエースとも言えるクアルタラロについては「彼は苦戦した2020年とチャンピオンを獲れた2021年より確実にメンタル面を成長させ、さらに2022年でまたも一歩前進させました。逆境のレースもあったのに、そこでも安定したパフォーマンスを発揮できるようにメンタルを整えて、毎戦毎戦レースに臨んでいたなという印象ですね」と矢田氏は語った。

 前年度の王者として2022年シーズンを戦ったクアルタラロは、追われるという立場で様々なプレッシャーや心情を抱いていたのかもしれない。しかし、クアルタラロはメンタル面を成長させ、レースに対して冷静に対応する時と、感情的になる時の切り替えをうまくこなしていたという。

「フィリップアイランドでは転倒が続いて、かなり苦しかったと思うのですが、その次のセパンで表彰台に上がることができて、おそらく2年前だったらそこで終わってたかもしれないですけど、2022年はそこから『もう一度俺が戦えている』と感じ、メンタルの成長が大きく見えたのかなと思います」

 マシンやチームだけでなく、自身が成長を遂げてチャンピオン争いを繰り広げたクアルタラロは、最終戦では普段通りに自分の走りをし、最後まで仕事をやり遂げようと意識していたという。

 2022シーズンは優勝や表彰台獲得もあったが、転倒や予選でのポジション争いで苦戦を強いられたり、苦しいシーズンとなってしまったが、「シーズンを通して安定して走り、ブレーキングからコーナーエントリーのところまではすごく良く、安定して発揮できるのはすごく強みでした。それがあったからこそ、バレンシアまで戦って来れたのかなと思います」とさらに続けた。

 では、対してシーズンをともに戦ってきたチームメイトのモルビデリについてはどうだろうか。2021年は怪我により数戦を欠場したが、2022年はフル参戦するも最高順位は7位とクアルタラロと比較すると落差が激しかったように伺える。それについてモルビデリのマシン開発を担当した星野氏は、次のように語った。

「オートバイのセットアップがライダーの思いと実際周りの環境との差を含めて、かつファビオが隣で結果を出しているなかで、本人も頑張っていました。僕らもそれに応えようとしましたが、最終的にはセットアップをこちら側が上手くできていなかったと思っています」

 マシンのセットアップやサポートができなかったと語ったが、怪我から復帰し、さらにレースをする環境が変化したこともあってセットアップを詰められなかったモルビデリのモチベーションはとても高く、常にポジティブな姿を見せていたようだ。

 2023年に向けてはそれらを踏まえ、スピード面で悩んだマシンに不足部分を補い、彼に合わせるセットアップを煮詰めていくという。また、「やはりエンジンパワーがあると、戦い方も変わるので、少しの速さを与えてあげられれば、十分上の方に上がってくれると信じています」と付け加えた。

 さらに、2022年シーズンをヤマハで戦ったライダー達をあげると、サテライトチームで活躍したアンドレア・ドヴィツィオーゾとダリン・ビンダー、カル・クラッチローがいる。

「ドヴィは最終戦となったミサノ(第14戦サンマリノGP)までベテランらしく、貴重なフィードバックを常に最後までプロフェッショナルとして我々に提供し続けてくれて、本当に尊敬すべきプロフェッショナルなライダーでした」

「ビンダーは、落ち着いて乗り込めば、セッションごとに秒単位でどんどんラップタイムも良くなり、パフォーマンスも少しずつ向上させていましたが、悪い流れに行くとはまってしまうようなレースが多かったのが残念だったと思います」

「クラッチローは最後の終盤6戦に代役で参戦してくれて、まだまだやれるところっていうのを見せてくれました。レースで他社の車両と混走して一緒に走ることで得られる情報というのもやっぱりあるので、彼が実際に体感して、2023年以降テストライダーとして良いフィードバックを我々にしてくれることを期待しています」

 シーズン中に様々な思いを抱き、ライダーそれぞれの成長も感じながらバックアップを続けてきた開発陣営。しかし、2023年シーズンはサテライトがなくなり、ワークスのみの活動となることについては次のように語った。

「2023年はサテライトがなくなることで、開発やタイヤ評価がやりにくくなってしまうので、ネガティブなところも当然あるとは思うんですけれども、そういうところに上手く対応し、またサテライトが戻ってきた時には、そこの経験を活かして行きたいと思います」

 いよいよ開幕が間近に迫っているが、成長を遂げるモンスターエナジー・ヤマハMotoGPのライダーふたりと、勝利に導くために開発に精力を尽くす開発陣営たちは、2023年シーズンどのような戦いを見せてくれるのだろうか。

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