室井佑月 作家の室井佑月さんは、上野千鶴子さんを身近に感じている理由を明かす。
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週刊文春に「“おひとりさまの教祖”上野千鶴子(74)が入籍していた」というスクープが載った。上野さんは3月15日発売の婦人公論で、反論記事を書くという(私がこのコラムを書いているのは3月12日)。上野さんはTwitterで「『文春砲』なる下劣な報道」といっていた。なにを下劣といっているのか?
なにを隠そう、私は今ほど上野千鶴子を身近に感じたことはない。
私の1回目の結婚は、出会った時はまだ奥さんのいる男の人とだったので、略奪婚と一部の厳格な人々から叩かれたものだ。そうそう、相手が19歳年上だったこともあって、「気持ち悪い」と散々ないわれようだった。それはその時の子が成人し、20年以上経った今でもたまにいわれる。
蓋をあければ、フェミニストの親玉の上野さんも、私とおなじだったのか。もちろん、そこを責めるつもりはない。恋は狙って落ちるものじゃない。たまたまパートナーのいる人を愛し「結婚制度、反対」という意見になり、パートナーのパートナーが亡くなって独りになったら(介護や財産分与のこともあるんだろうが)結婚というものをしてみたくなる。上野千鶴子、なんとも人間らしい、魅力的な女性じゃないか。
なぜ、上野千鶴子を崇拝してやまない一部のフェミニストは、上野千鶴子以外の上野千鶴子と似たようなことをしている女は、叩けるのだろうか? 上野千鶴子が今回、下劣だと怒っているのは、他人に向けるゲスな興味のことじゃないの?
上野さんの教えが不味(まず)いのか、受け取る側によっぽど難があるのか。
一方で、3月8日の国際女性デーには、上野さんのインタビューが読売新聞「大手小町」に載っていた。上野さんは記事の中で、こんなことをいっていた。
「自分ファーストの娘たちが大量に登場した、日本史上初の快挙です。(中略)耐えることが日本の女の美徳でなくなった」
耐えることが日本女性の美徳なんて、私も真っ平ごめんだ。しかし今、自分ファーストすぎる娘たち(息子たちもいると思う)も問題なのだと思ってる。子がいるいないは関係なく、いくつになっても大人になれない、自分のことしか考えない人間たち。
【この記事の画像の続きはこちら】 上野さんはこうもいっていた。
「候補者男女均等法(※政治分野における男女共同参画推進法のこと)を作ったけれど罰則規定がない、つまりやる気がない証拠です。法律に実効性を持たせるには、強制力が必要です」
罰則? そこまでいうなら社会のために上野さんが立候補すればいい。けど、それはない。上野さんこそ、自分ファーストの娘だものね。いくつになっても。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2023年3月31日号