かなだいは日本勢初のトップ10入りなるか? 高橋大輔は世界フィギュア直前に「大丈夫」を繰り返した

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2023年03月23日 10:51  webスポルティーバ

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●3年前の自分に「覚悟しとけよ」

 3月20日、さいたまスーパーアリーナ。フィギュアスケート・アイスダンスの村元哉中、高橋大輔のカップルは、フリースケーティングの『オペラ座の怪人』の衣装でリンクに立っている。




 2年連続の世界選手権出場。本拠地であるアメリカから帰国して間もなくの公式練習で、時差ボケもあるなか調整程度だったが、カップル結成3年目と思えないほど落ち着いていた。

「世界トップ10」

 今回、"かなだい"と呼ばれるふたりは大きな目標に掲げているが(前回16位)、狙えるところにたどり着いただけでも称賛に値する。

 彼らの活躍によってアイスダンスの注目度は増し、ひとつの競技のパイオニアになりつつある。

 はたして、かなだいが行き着く先とは?

ーー3年前にアイスダンスに転向した自分と話すことができたら、どんなアドバイスをしますか?

 そう尋ねた時、高橋は即答だった。

「『覚悟しとけよ』って言いますね」

 彼は笑顔でこう続けた。

「難しい、本当に難しいです。もちろん、『アイスダンスは大変だ』と頭ではわかっていたはずですが、こんなにも大変で、シングルと違うものかって」

 それはリアルな感覚だろう。別種目である。にもかかわらず、転向2年目にして四大陸選手権で2位、世界選手権に出場し、3年目で全日本選手権優勝を飾っているのは快挙だ。

●『オペラ座の怪人』の完成形を見せられるか

「ゼロからのスタートだったんで、3シーズン目に全日本で優勝できたのも、なかなかないことで」

 村元はそう言って、高橋を賞賛していた。

「簡単にやっているように思う人もいるかもしれませんけど、正直、簡単ではなくて。大ちゃん(高橋)ができちゃうから、なだけで。

 理解力がすごくって。私が理解していないことも、大ちゃんは理解できているんだって思うこともあります。大ちゃんと一緒だったからこそ、ここまでこられたはずで」

 あらためて、ふたりの出会いは運命的だった。村元は五輪や世界選手権での出場を重ね、アイスダンス界の第一人者。

 一方、高橋は男子シングルで日本男子フィギュア界を牽引し、五輪でのメダル、グランプリファイナル王者、世界王者と幾多の「日本人初」の記録をつくってきた。

 そのふたりが会うべきタイミングで出会い、生まれた物語なのだろう。

 そして今シーズンのプログラムは、「完成形」に近づいている。特に『オペラ座の怪人』は彼らの代名詞になる予感がある。物語に登場するファントムとクリスティーヌが憑依した錯覚を受けるほどだ。

「『オペラ座の怪人』は、ディテールのところ、僕は特に後半が課題だったので、なるべくレベルがとれるように考えながら練習してきました。後半は足にくるところ、粘れないところがあるので。

 どこで力を入れて、抜くか、ペース配分も考えながらやってきました。もちろん、トレーニングの内容で体力も上げながら」

 37歳になる高橋は、肉体的な限界にも挑んでいる。シングル時代に4年ぶりの復活で全日本2位になったことも並外れているが、ルーキーとして別種目を追求する挑戦心は桁外れだ。

 今年2月の四大陸選手権後も、研鑽を積んできた。

「全体的に一つひとつのエレメンツを確実にこなすところから、細かいところまで。まずはフリーの最後のコレオエレメンツを新しく考えたところからのスタートでした」

 村元は、そう言って現状を説明していた。

「『オペラ座の怪人』の世界観も考えて、最後のところはコーチと『どうしよう』って。(コレオリフトの)スピニングムーブメントにしたのは、リスクがない、失敗もしづらいエレメンツで、しっくりくるかなって。

(公式練習では)100%ではなかったですけど、変えてからは通しでも一度も失敗していないので。そこらへんはたぶん、大丈夫だと思います」

 そこで、高橋が被せるように言った。

「大丈夫です!」

●世界の舞台へ「大丈夫」

 この日のミックスゾーン、彼は「大丈夫」と何度も繰り返していた。

「試合で楽しむには、どれだけ練習してきたか、ってところが大事で。だから試合まで一日一日、ちゃんとしたいです。会場に入って、いつもどおりに過ごして」

 高橋は言ったが、試合を楽しめるだけの練習をしてきた自負があるのだろう。ネガティブな要素を受けつけないバリアを身につけていた。あとは運が巡ってくるか。

「ここに戻ってくるために今までがあって。(2014年、2019年にさいたまでの世界選手権を出場辞退したのは)そういうことだったんだなっていう世界選手権にしたいですね」

 高橋はそんな表現をしたが、やはり運はつかむものなのかもしれない。

「一日一日を楽しもうって思います。練習はたくさんやってきたので。この舞台を楽しむのが一番」

 村元もそう言って、腹をくくっていた。

 はたして、ふたりは入魂のプログラムの完成形を見せられるのか。全日本後のインタビューで「アイスダンスでバシッと決まった時の感覚とは?」と尋ねた際、高橋はこうたとえていた。

「手をたまたま上げた時、ボールを投げられて、あれってなっているうちに手のなかに収まっている感じですかね?」

 それは、無心に近い感覚か。ふたりは、そこまで徹底してプログラム精度を高めてきた。それぞれの波長が合う瞬間、アイスダンスの魅力が溢れる。今はそれがすべてだ。

 3月24日、かなだいはリズムダンス『コンガ』で、2度目の世界選手権の舞台に立つ。

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