変身シーンで振り返るプリキュア20年史 歴史に残る画期的な変身シーン10選

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2023年03月23日 18:09  ねとらぼ

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ねとらぼ

「モーニング娘。」のポーズを取り入れていたキュアレモネード変身シーン(YouTubeから)

 皆さまは、どのプリキュアの変身シーンが好きですか?



【画像】プリキュア変身シーン 印象的なカットまとめ(21枚)



 「プリキュア20周年イヤー」を記念して、2023年2月1日からYouTubeの東映アニメーションミュージアムチャンネルで、1日1プリキュアの「プリキュア変身シーン」が公開されています(2023年3月23日現在では49人、51個の変身シーンが公開中です。過去に公開されているものを合わせれば71個もの変身シーンが見られます)。



 「プリキュアの変身シーン」は子どもの人気も高く、もちろん「変身おもちゃの販促」の一面もあるため製作者も力を入れて作成し、年々表現方法も変化し続けています。その進化の歴史は相当に面白いのです。



 プリキュア20年の歴史の中でファンを驚かせたプリキュア変身シーン10個から、その進化の歴史を振り返ってみたいと思います。



●1.手をつないで変身「ふたりはプリキュア」変身シーン



 まずは「ふたりはプリキュア」(2004年)の変身シーンです。全てはここから始まりました。「セーラームーン」や「おジャ魔女どれみ」など東映アニメーション「魔法少女の変身」の伝統を受け継ぎつつ、変身おもちゃのアップから始まり、体にパーツが装着、全身を映して決めポーズ、といったプリキュア変身シーンの基本がすでに確立されています。



 その特徴は何といっても2人同時変身。この2人が「手をつなぐこと」からプリキュアは始まったのです。キュアブラックの力強さ、キュアホワイトの可憐(かれん)さ。2人の着地のポーズの差により戦闘スタイルの違いを表現しているところも良いですよね。



 ちなみに、変身時に体がメタル調に輝くのは「変身シーンを過剰にセクシーに見えないようにする工夫」の一つであったことも後に製作者から語られています。



 そういう意味でも「プリキュア変身シーンの方向性」を決定づけた重要な変身シーンでもあるのです。



●2.個性の幅を広げた「キュアレモネード」変身シーン



 「Yes!プリキュア5」(2007年)以降は1人で変身できるようになったこともあり、「それぞれの個性に合わせた変身スタイル」が確立していきます。



 中でも個性的だったのが「キュアレモネード」の変身シーン。くるくると巻かれていく髪の変化が特徴的です。変身中の「アイドルっぽいポーズ」や「ピースサイン」は「モーニング娘。」のプロフィール写真を参考にしていたとのことです(『プリキュア10周年公式アニバーサリーブック』志田直俊氏の発言(P77)から)。



 衝撃的だったのは決めぜりふの「はじけるレモンの香り」。



 この奇抜な(?)せりふを考えたのはADKのプロデューサー鶴崎りか氏で、「シュワっとした感じがいいかなと思った」と語っています(『プリキュアシンドローム』(幻冬舎)P74から)



 固定観念に捕らわれないこの決めぜりふは、以降のプリキュアにおける変身シーンの表現の幅を大きく広げた名決めぜりふだと思うのです。



 その後も、変身シーンは年を追うごとにキラキラ感も増し続け、動きも派手になっていきます。



 「フレッシュプリキュア!」(2009年)では、キャラが変身空間で走ったりジャンプしたり踊ったりといった「3次元の動き」も取り入れられ、主体的に動き回ることにより動きの表現にも幅が出てくるようになりました。



●3.笑顔で変身「キュアサンシャイン」変身シーン



 そして「ハートキャッチプリキュア!」(2010年)の変身シーンでは「表情」にも変化が訪れます。



 それまでは「戦いに赴く少女」という点から、変身中はキリっとした表情の多かったプリキュア変身ですが、「ハートキャッチプリキュア!」ではとにかく「楽しそう」に変身する姿が描かれました。



 また「自動的にパーツが装着される」スタイルではなく、ココロパフュームからの香水を自らの手足に吹き付けることによりパーツが装着される変身スタイルも画期的でした。彼女たちは自らプリキュアへと変わっていくのです。



 その中でも「キュアサンシャイン」の変身シーンは、「かわいい姿へと変わっていく」という自己解放の表現として、とにかくよく動きました。特にココロパフュームをくるくる回しながら手から手へ投げ渡す動きがあまりにもすごく、当時のプリキュアファンを驚愕させました。



 この原画を手掛けたのはアニメーターの志田直俊氏。志田氏は、このパフュームを回すシーンはトム・クルーズの映画「カクテル」の影響であったと後に語っています。



志田:キュアサンシャインのバンクで、サンシャインは変身アイテムをくるくる回すんですけど、あれはトム・クルーズの映画「カクテル」を参考にしたんです。



森宗:ハリウッドスター(笑)



志田:トムがバーの中でカクテルをくるくるやるんですよ。見ていてどうにかならないかなって。コンテどおりにやると、ちょっと地味だから何かないかって思って。



メディアパル『プリキュア10周年公式アニバーサリーブック』(P77)



 滑らかに動き回り、派手なエフェクト、かわいいを開放していく演出……キュアサンシャインの変身シーンは当時のプリキュアファンに衝撃を与え、「変身シーンを手掛けたアニメーター」が注目されるきっかけにもなった時代を代表する変身シーンなのです。



●4.じゃんけんぽん!「キュアピース」変身シーン



 その後も「プリキュアの変身シーン」は1作ごとに演出面、エフェクト面、動きの滑らかさを製作者が競い合うようにして進化しつづけていきます。



 中でも「スマイルプリキュア!」(2012年)の「キュアピース」は、これまでにない画期的な試みが導入され話題となりました。



 変身の最後に「ぴかぴかぴかりん、じゃんけんぽん!」の決めぜりふとともに、全国の子どもたちと一緒にじゃんけんをするのです(バンクなのに毎回じゃんけんの手は変わります)。



 そう。テレビからキュアピースがこちらにコミュニケーションしてくるのです。



 この変身シーンは、キュアピースのかわいさも相まって、子どもたちに大人気の変身シーンとなりました。



 この「じゃんけんをする変身バンク」は、シリーズ構成の米村正二氏によると「採用するかどうか最後までもめていた」ようです。



――ピースの「ピカピカぴかりん〜」の名乗りは衝撃的でした。



米村:あれは最後までもめました(笑)。でも最終的には、今までのシリーズには無かった名乗りだし、ちょっと面白い感じがするからいいだろうということになりました。じゃんけんも子どもが好きですからありだろうと。少しでも子どもたちがピースのじゃんけんを楽しんでくれてたらいいのですが。



学研パブリッシング『スマイルプリキュアコンプリートファンブック』(P89)



 キュアピースの変身シーンは、テレビを見ている子どもたちと一緒に楽しむ「インタラクティブなコミュニケーション」を導入した唯一の画期的な変身シーンなのです。



●5.板岡錦を世に知らしめた「キュアプリンセス」変身シーン



 キュアサンシャインの原画を手掛けた志田氏以降、一部のマニアのみで語られていた「変身シーンを手掛けたアニメーター」も注目を集めるようになっていきます。



 その第一人者に「板岡錦」の名を挙げるプリキュアファンも多いのですが、その名を世に知らしめたのがこの「キュアプリンセス」変身シーンです。



「ドキドキ!プリキュア」(2013年)の「キュアロゼッタ」から単独で変身シーンの原画を手掛けるようになった板岡氏が描く変身シーンは、より細かく、より元気に動いていたのです。



 このキュアプリンセス変身シーンでも、マントがたなびく表現、カメラが回転するのではなくキャラ自体が動き回り、あわせてカメラも回転する複雑な構成、止め絵のかわいさ、最後に指で作った銃をフッと吹くシーンなど、とにかくよく動きファンを驚かせました。



 板岡氏は、その後も「キュアマシェリ&キュアアムール」や「キュアジェラート」「キュアミルキー」「キュアサマー」「キュアプレシャス」などプリキュアを代表する変身シーンの原画を数多く手掛け、今では「変身職人」とまで呼ばれるプリキュア変身シーンの第一人者となっています。



●6.炎の表現が圧巻「キュアスカーレット」変身シーン



 「Go!プリンセスプリキュア」(2015年)以降の作品では、「お姫様」「魔法つかい」「スイーツ」など作品自体に明確なテーマが付与されます。それに伴い変身シーンにもそのテーマが反映されるようになり、変身シーンの「物語性」が強く出るようになっていきます。



 「キラキラエフェクトの中で可愛くカッコよく変身する」だけではなく、キャラクターの内面描写やストーリーが付与されていくのです。



 例えば、「Go!プリンセスプリキュア」(2015年)の変身シーン。



 彼女たちが「戦うお姫様」となる変身シーンにおいて、頭に着ける王冠は自動的に装着されるのではなく「自らの意思」で頭に装着します。守られるお姫様でなく、自分の足で立つお姫様へ。そんな意思が見える変身シーンなのです。



 そんな「Go!プリンセスプリキュア」の変身シーン中でも「キュアスカーレット」の変身シーンは、炎の演出がとにかくカッコよく派手でファンを驚かせました。



 炎からできたクラウンを自ら付け、自らの意思で真のプリンセスへと変身していく彼女。炎を身にまとい体にパーツが装着され、さらに炎が髪に変わっていくシーンは圧巻です。原画は大田和寛氏が手掛けています。



 これまでも十分に派手だったプリキュア変身シーンの派手さを更に引きあげ、以降の変身シーンの演出にも大きな影響を与えた名変身シーンなのです。



●7.70秒の物語「キュアジェラート」変身シーン



 変身職人・板岡錦が原画を手掛けた代表作としてファンの評価も高いのが、この「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)の「キュアジェラート」変身シーンです。



 「お嬢様」からロックのプリキュアへ。抑圧からの解放としての変身でありながらも、お嬢様を象徴するクラシックバレエから始まり、自身の解放を楽しむように画面を縦横無尽に飛び回り、ジャケットを羽織り両足をしっかり地面につける。片足ソックスを上げてからのメロイックサインでギターをかき鳴らし変身フィニッシュ。



 クラシックバレエをリスペクトし、お嬢様であることを否定せずにロックスタイルで変身が終わる。立神あおいの「お嬢様」と「ロック」を両立させていく意思がわずか70秒の変身シーンで描かれているのです。



 板岡氏が描く原画は上下左右に動き回り、元気な表情からおしとやかな一面、背中で語る凛としたカッコよさまでが描かれます。板岡バンクの真骨頂は超絶な動きの隙間で見られる「女の子の表情」の説得力なのです。



●8.お姉様をも魅了した「キュアショコラ」



 世のお姉様方を虜にしたのが「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)のキュアショコラの変身シーン。



 宝塚をオマージュした演出がとにかくカッコ良く華麗に変身します。重厚な音楽でスタートし、高速な展開でチョコレートから衣装へ変化、その凛々しい表情。手を挙げてのジャンプは演劇のワンシーンのようです。



 「シルクハットを指でなでるしぐさ」は宝塚のオマージュ。同じく宝塚を意識した大階段を数歩降りてからの決めポーズ。決して「男装」ではなく、あくまで自分の似合うスタイルを貫く剣城あきらの姿が描かれました。



 「演出で魅せる」このキュアショコラの変身シーンは子どもたちだけでなく、一緒に見ているお母様、そしてお姉様たちをも虜にしたのです。



●9.歌って変身「キュアミルキー」



 「歌いながら変身する」という画期的なスタイルが大きな特徴となった「スター☆トゥインクルプリキュア」(2019年)の変身シーン。



 中でも、この変身シーンを見た者は、その圧倒的な動きに必ずもう一度見てしまう」。そう言わしめる程の変身シーンがキュアミルキーの変身シーンです。



 「歌」「動き」「エフェクト」「演出」「背景」がこの上なく調和した、プリキュアシリーズを代表する変身シーンです。こちらも原画は板岡氏。



 歌とぴったりシンクロした動きの中、波の流れるような動き、画面をタテヨコナナメ縦横無尽に動き回り、カメラも追随して回ります。ときおり見せるアップでのセクシーな表情からプクっと膨れるかわいい表情、自らソックスを身につける自己表現の演出。目が追い付かないほどの情報量が詰め込まれた超絶変身シーン。とにかく一度見てほしいのです。



●10.ライブ演出がカッコイイ「キュアスカイ変身シーン」



 最後は、最新作「ひろがるスカイ!プリキュア」(2023年)から「キュアスカイ」の変身シーンです。この変身シーンでは「音楽との調和」が一つのポイントとなっています。



 もちろんこれまでのプリキュア変身シーンでも音楽との調和は取れていたのですが、今回はそれがさらに一歩前進しました。



 変身のシークエンスが進むにつれ、音楽も段階的に盛り上がっていくのです。これまでの変身シーンでは見られなかった「バーチャル空間でのライブ的な演出」によりヒーローに変身していく姿が描かれます。マントを羽織るシーンがとにかくカッコイイ。



 3軸回転で超絶高速に動きまくるキュアスカイ。そのカッコイイ変身の合間で一瞬見せる「カッコかわいい表情」にもハッとさせられます。



●進化しつづけるプリキュア変身シーン



 変身シーンはプリキュアの花形です。



 表現的にも、毎年のように進化を続け「もうこれ以上はないだろう」と思った翌年に、新しい表現方法で僕たちを驚かせます。



 「Yes!プリキュア5」のときは約30秒だった変身シーンは、最新作「ひろがるスカイ!プリキュア」では74秒と変身に要する時間も2倍以上と長くなり、その情報量も年々増えてきています(アニメ放送時は短縮バンクになることも多いですけど)。



 今回紹介したもの以外にも、プリキュアには本当に素晴らしい変身シーンがたくさんあります。どの変身シーンも、そのときの最高の人材がそのときの最高の技術で作り上げ、子どもたちへと届けているのです。



 プリキュア20周年。この機会にお気に入りのプリキュアの変身シーンを見返してみてはいかがでしょうか。



●著者:kasumi プロフィール



プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。


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