男子校、女子校の人気が回復した中学受験 付属校人気は一服か、増減まだら模様【中学受験2023】

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2023年03月25日 06:30  AERA dot.

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2026年度から明治大付属世田谷中学・高校になることが決まっている日本学園中学・高校
 2023年は、男子校は難関から中堅まで、まんべんなく志願者数を伸ばして厳しい戦いになりました。伝統のある女子校も、相変わらず人気に。活況の埼玉を牽引する栄東(さいたま市)は、今年で、10年続けて志願者が1万人を突破しました。一方で、付属校は人気が一服し、隔年現象が見受けられて増減はまだら模様になりました。(※志願者の数値は、首都圏模試センターによる2月11日時点の集計による)


【写真】10年連続志願者数1万人超え! 埼玉の超人気校の名物校長はこちら* * *


 今年の注目校を、東京から見てみよう。増加率トップは日本学園(東京都世田谷区)で、233人から1322人に増加。実に6倍近くに達した。2026年から明治大学の系列校になり、およそ7割が推薦入試によって進学できるとされていることから、受験生や保護者の好感を呼んだ。明治大学の系列化とともに、校名を「明治大学付属世田谷」と変更し共学になる。


「日本学園は探究型のプログラムがしっかりしており、京王線の明大前駅至近に立地するわりに緑が多く環境も良い。明治大学の系列化をきっかけに興味を持った保護者が、同校の良さを認識したのではないでしょうか」(サピックス教育情報センター本部長の広野雅明さん)


■男子校は志願者数増の傾向


「東京の男子校は日本学園が大幅に伸びて目立ちましたが、実は難関校から中堅校までほとんどの学校が増やしています」(安田教育研究所代表の安田理さん)


 足立学園(足立区)は589人から1612人と3倍近く増加。本郷(豊島区)は2231人から2590人、高輪(港区)は1653人から1974人と多くが前年以上の志願者を集め、男子校は厳しい戦いとなった。今年は、例年多くの志願者を集める人気の男子校、東京都市大学付属(世田谷区)が入試日程を大きく変更した。昨年まで行っていなかった2月1日の午前入試に参入し、2日の日程を廃止。攻玉社(目黒区)、世田谷学園(世田谷区)、本郷、巣鴨(豊島区)などに影響を与えた模様だ。


 女子校で目立ったのは、法政大学との提携を拡充した三輪田学園(千代田区)。志願者数を1180人から1685人と、大きく伸ばした。法政大学に30人の推薦枠を設けるとともに、法政大学の全学共通科目の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(MDAP)」を、ウェブで受講できるようになったことも支持された要因か。


 ここ数年、目覚ましい勢いを見せる山脇学園(港区)は2990人から3074人に、田園調布学園(世田谷区)も1147人から1417人に伸びた。


「女子のトップ校は、進学志向が理工系にうつっていますが、それが中堅校にも及んできました。今回志願者を増やした山脇学園はデータサイエンスを中心にSTEAM教育を充実させています。田園調布学園も探究学習のプログラムが充実しており、理系に進む生徒も多い」(安田さん)


■女子校はコロナ禍でのきめ細かいケアが高評価


 昨年に続き、女子の伝統校も人気だ。


「コロナ禍で学校見学ができないから伝統校なら安心、というのが昨年の理由でしたが、今年は保護者や受験生が、伝統校の良さを改めて見なおしたと感じます」(声の教育社常務取締役・後藤和浩さん)


 十文字(豊島区)は849人から1090人、香蘭女学校(品川区)は1040人から1181人に増加、さらに京華女子(文京区)は451人から738人、中村(江東区)は539人から706人、玉川聖学院(世田谷区)は563人から710人と、中堅校も増加した。


 首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さんは、「女子校はコロナ禍にあって、授業だけでなくメンタル面でもきめ細かくケアしてくれた。それが評価されたのも理由のひとつ」と分析している。


 森上教育研究所アソシエイトの高橋真実さんは、女子校の広報戦略をあげる。


「コロナ禍もあって、少人数の学校見学会を数多く実施しましたが、それが保護者に『説明会や個別相談よりも話しやすい』と、評判が良かった。また女子校の特徴は、SNSをフルに活用して発信をしていること。たとえば山脇学園では生徒がインスタの素材を提供したり、清泉女学院(神奈川県鎌倉市)ではライン登録した受験生に在校生が応援メッセージを送ったりしています。PR動画を生徒が作っている学校もありますが、とてもセンスが良い。こういう生徒による取り組みは、先生と生徒の仲の良さも感じさせます」


 神奈川を見てみよう。受験者動向について後藤さんは「都内志向が強まっており、意外と神奈川のほうが合格をとりやすかったようだ」と、分析する。


 そのようななかで、注目は湘南白百合学園(藤沢市)。志願者を536人から822人と大きく伸ばした。


「もともと教育内容がしっかりしており、入試改革も成功している。それをSNSなどでまめに発信し、学校を可視化していることが人気につながりました」(北さん)


 横浜創英(横浜市)は工藤勇一校長が赴任して以来、サイエンスコースを開設するなど改革が奏功し、917人から1156人に伸びた。


 千葉、埼玉は全体的に好調。高橋さんは「東京に出ずに、県内で完結する受験生も増えたようだ。やはり県内各校の進学実績が上がってきたのが大きい」と、読む。


 千葉は新設の流通経済大学付属柏(柏市)が、784人の志願者を集めた。つくばエクスプレスの沿線住民が増えるなかで子どもの数が増加し、志願者増につながったようだ。さらに昭和学院(市川市)が1000人から1274人に増加した。


 埼玉では、栄東(さいたま市)の勢いが止まらない。志願者が1万1017人から1万3792人に増加し、今年で10年連続して1万人を超えた。「栄東は入試問題の質が高く大勢の合格者を出すことから力試しで受験する人も多かったのですが、いまはもうお試しの学校ではなくなってきています。魅力ある学校で、進学希望での受験生も増えています」(後藤さん)。姉妹校の埼玉栄(さいたま市)も好調だ。


■付属校は志願者数減の傾向


 一方で大学付属校は一時期の勢いが落ちつき、学校によって増減がわかれた。早慶の付属校では唯一、新校舎を建築中の早稲田(東京都新宿区)が増加。早慶のほかの系列校は減少に転じた。偏差値が上がり敬遠された模様だ。


 MARCH(明治・青山・立教・中央・法政)は立教系列と一部が増加したものの、ほとんどが減少に転じた。


「理系志向が強まっているなかで、MARCHはいずれも文系のイメージが強い。成績上位者が理系に強い私大の付属校や国立に流れたのでは」(安田さん)


 昨年人気だった日東駒専(日本大学、東洋大学、駒沢大学、専修大学)も、学校によってまだら模様に。ここ数年、勢いのあった日本大学豊山(東京都文京区)は、2678人から2373人に減少した。


「志願者は減りましたが、以前と比べてレベルは上がり受験層も変化しています」(後藤さん)


  24年は埼玉県所沢市に開智所沢中等教育学校が開校する。


「中学受験生が少ないエリアなので、掘り起こしにつながるのではないか」(北さん)


 また香蘭女学校(東京都品川区)が2科入試を廃止し4科入試に絞るなど、すでに動きが始まっている。志望校のHPなどをマメにチェックし、最新の情報を入手して臨もう。 


(柿崎明子)


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