賛同の嵐「育休で同僚に10万円」の三井住友海上 ネット記事の「至極真っ当」な書き込みで即改善も

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2023年03月25日 10:00  AERA dot.

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三井住友海上火災保険人事部部長の丸山剛弘さん(写真/米倉昭仁)
 育休をとりやすい職場環境づくりの一環として三井住友海上火災保険が新設する「育休職場応援手当」が大きな反響を呼んでいる。3月12日、読売新聞オンラインが「育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金」と配信すると、掲載された「Yahoo!ニュース」や「NewsPicks」などに賛同するコメントが数多く書き込まれた。しかも、驚くべきことに、同社はたった数日でこれらの声を吸い上げ、制度内容を大きく改善したことがわかった。


【最大10万円「育休職場応援手当」はどう変わった? 詳細はこちら】*   *   *


「読売さんの記事が出たのが日曜でした。月曜の朝、出社すると、ヤフー(ニュース)などのコメントがすごいことになっていると言われた」


 そう語るのは、「育休職場応援手当」制度を立案した三井住友海上火災保険人事部部長の丸山剛弘さんだ。


 読売新聞の記事には、次のように書かれている。


<13人以下の職場で育休取得者が女性の場合、同僚に各10万円を支給する。取得者が男性の場合、育休期間が女性より短い実態を踏まえ各3万円とする。41人以上の職場で取得者が女性なら各1万円、男性なら各3000円とする>


 インターネット上のコメントにとどまらず、「直接、話をしたい」と、人事部にも電話がかかってきた。見知らぬ声の主は、こう訴えた。


「非常に素晴らしい仕組みだと思うし、期待している。ただ、男性と女性のどちらが育休をとったかで支給金額に差があるのは惜しい。ぜひ男女の差をなくしてほしい」


社長に見直しを進言


 この声に丸山部長は耳を傾けた。


「ヤフーにも同様のコメントがあったのですが、もうおっしゃる通りというか、至極真っ当なご意見でした。制度をよりよいものにしたい、という気持ちがすごく伝わってきた。なので、経営会議にも出し、労組にも提案した内容だけれど、変えちゃえばいいじゃないか、と思った」


 この制度案はすでに経営会議に付議され、労使協議の完了を条件に新設することが承認されていた。それをヤフー・ニュースのコメント(ヤフコメ)や直電の意見をもとに大幅に見直そう、というのである。



 電話を終えた丸山部長は、すぐに上司の執行役員人事部長と人事担当役員(常務)に相談した。


「『すごい反響です。でも、男女差がないほうがもっといい、というお声もいただきました。私もそう思いますので、修正しませんか』と言ったら、『そうだよな。ぜひ変えよう』という話になった」


 丸山部長は一晩考えて、男女で支給金額に差をつけない案に修正し、人事部内のダイバーシティ推進担当者たちにも意見を聞いたうえで、育休取得予定期間が3カ月以上か、3カ月未満かで区切って支給金額を変えるといった修正案を人事担当役員と人事部長に見せた。


「そうしたら、こちらのほうが絶対にいい、と言ってもらえた。翌日、労使協議中の労組に対しても、提案内容を修正したい旨を申し入れると、前向きに受けとめられ、よい感触を得た。そして15日、人事部長から、出張中の社長にも労使協議と内容見直しの動きをお伝えするようにと、私と部内の企画チーム長に対して指示があったので、企画チーム長から修正を進言するメールを社長に送ってもらった。すると、『見直す方向で進めてください』と、社長からすぐに返信があった」


 三井住友海上火災保険の社員数は約1万7千人。大企業にもかかわらず、信じられないほどの柔軟性とスピードである。ネット記事の反応から、即座に制度を改善――。筆者はさまざまな企業を取材してきたが、このような事例は聞いたことがない。反響をさらにプラスに変えようとする前向きな意識が形を変えたのだ。


※記事の後半<<同僚の育休で“まわりの人に一時金”の案に「それ、いいね!」 三井住友海上、背景に「産後うつ」のケア>>に続く


(AERA dot.編集部・米倉昭仁)


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