新トレッドパターン続々投入。ブリヂストンにヨコハマ、ダンロップも……!? 雨でもホットなレインタイヤ開発競争

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2023年03月25日 20:00  AUTOSPORT web

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公式テストで初お目見えされたブリジストンの新レインタイヤ。まだ投入が決まったわけではなく、旧バージョンとの比較が行われた
 富士スピードウェイで開催されたスーパーGT今季2回目の公式テストはウエットコンディションとなったが、その雨のなか、GT500クラスに参戦するタイヤメーカーが次々と新トレッドパターンのレイン(ウエット)タイヤを投入。タイヤ開発競争のさらなる激化と、タイヤメーカーにとって、レインタイヤ開発が今季のトレンドとなっていることが明かになった。

 まずはブリヂストン陣営。これまでのセンターに2本のストレートのグルーブド(排水用の溝)が特徴的なパターンだったが、新しいトレッドパターンではストレートの溝を廃止し、斜めの溝のみでパターンを構成。溝の深さもこれまでより浅めなことから、水量の少ない状況、ダンプコンディションなどをターゲットとして開発されたタイヤと推測される。

 すでに前回1回目の岡山公式テストでも、新パターンのレインタイヤを持ち込んでいることは確認され、これまでのメーカーテストでは投入されていたというが、公のテストで装着して走行したのは今回が初めてになる。

 もともと今季から、タイヤに関してはいくつかの変更が加えられる。ドライタイヤの持ち込み本数が300kmレースでは6セットから5セットと1セット少なくなり、レインタイヤに関する規定も変更されることになった。昨年までは申請が認められればトレッドパターンの変更は可能だったが、今季はトレッドパターン、そしてタイヤのサイズは開幕戦の10日前にホモロゲーションで凍結され、レインタイヤは1種類のみの使用となる。

 開幕前に登録することで、シーズン中のパターン変更も1度だけ可能になるとのことだが、基本的には開幕前までに使用する1種類のレインタイヤを決定しなければならない。その1種類に決めるためのテストも、ウエットテストは実質シーズンオフに2日間しか認められていないことから、今回の雨のセッションは開発中のレインタイヤを評価する貴重な機会となったわけだ。

「まだ新パターンでするかは決めていません」と話すのは、スーパーGTでブリヂストンの開発を担当する山本貴彦エンジニア。ブリヂストンはこれまでのレインタイヤと新しいパターンの2種類を持ち込み、比較を行っていた。

「ウエットテストの回数が現在は制限されていて、事実上、オフテストのなかで2日しかできません。ですので、その2日である程度、方向性を見たりするのですけど、その2日だけではいろいろなコンディションでのパフォーマンスは見切れない。今回のような雨のテストでも検討パターンを持ち込ませてもらって、良いところ、良くないところを確認しています」と続ける。

 ブリヂストンとしても、昨年第6戦SUGOのダンプコンディションで圧倒的な速さを見せたミシュラン勢の独走を許すわけにはいかない。

「新パターン(レインタイヤ)の一番の狙いは、去年の振り返りで雨が乾いてきたところで、レインタイヤのグリップが一気にタレる(性能劣化する)ところがあったので、そこをきちんと改善しようと。その狙いの部分は確実に良くはなっていますけど、水量が多いときから少ない時を含めてトータルで見た時に、どこにメリットがあってどこがデメリットになるのか、いろいろ確認しているところになります。まだどちらにするのか、全然決めてはいません。ここで決めなくても、今回のものをフィードバックしてまた開発を進めて、またどこかでということも考えています」と山本エンジニア。

 そのブリヂストンの狙いと重なるように、ヨコハマタイヤも今回の富士でこれまでのパターンに加え、新パターンのレインタイヤを投入してきた。これまでのセンター2本のストレート溝と左右に斜めの溝を入れたトレッドパターンから、3本のストレートの溝をベースにしたミシュランに近いデザインのトレッドパターンのレインタイヤを投入。

 ヨコハマも新パターンのタイヤは今回が初走行ではないというが、公にされるのは初めてになり、午後には19号車WedsSport ADVAN GRスープラが2番手のタイムをマークするパフォーマンスを見せた。ヨコハマタイヤの開発を率いる、白石貴之エンジニアに聞く。

「(新しいパターンは)ストレート溝、(これまでのレインタイヤを)V字溝と呼んでいます。新パターンはこれまで何度かテストをしていまして、見どころがあるかなというところで今回のテストにも投入しています。レインタイヤは例年開発は続けていますけど、(ライバルから)少しでも取り戻さないとという意識で、例年以上に開発を振っているというところはあります」と白石エンジニア。

「結局、レインタイヤというと水量が多い少ない、最終的にはドライにもなっていくなかで、温度も含めてコンディションの変化が大きい。路面の変化が大きいなかで、どこをターゲットに絞って行くかというところになると思っています。去年で言うと、なるべく幅広いコンディションで使える、なおかつ最終的にドライに繋げるところまでと考えた時に、今のところ新しいレインタイヤの方が取り分があるんじゃないかなと思って開発をしています」と続ける。

 それでも、ストレート溝に決定したわけではなく「開幕戦で楽しみにして頂ければ」(白石エンジニア)とのことだ。

 さらに取材を進めていくなかで、ダンロップも新しいレインタイヤを投入し、新しいトレッドパターンを試してたようだ。「いろいろやっていますよ」と、その事実をはぐらかすダンロップの開発を担う竹内二朗エンジニア。

 そして昨年のレインタイヤの実績から、一歩リードしているように見えるミシュランも開発の手を緩めているわけではない。

 今季投入するレインタイヤもトレッドパターンは昨年と同じものの、「アップデートはしていますよ」とミシュランの小田島孔明エンジニア。レインタイヤの開発に必死なライバル陣営の動きにも、「昨年、ウチが課題としていた部分を改善しています」と詳細は明らかにしなかったものの、小田島エンジニアは自信をうかがわせた。

 果たして、今季のレインタイヤのホモロゲーションに各タイヤメーカーがどのようなトレッドパターンを登録するのか。そして、そのパフォーマンスはいかに……。ドライのレースだけでなく、今季のスーパーGT500クラスはウエットレースも今から楽しみになりそうだ。

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