
『ひるおび』のメインキャスターを10年以上務める恵俊彰さん。お昼の顔というイメージがすっかり定着している恵さんだが、昨年4月、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学し、1年間の講義を終え、この度、修了。
60歳を前にしながら、未知なる挑戦に踏みきった理由とは? 恵さんがスポーツの世界で何を実現しようとしているのか。前編では、大学院に入った経緯や授業内容などを語ってもらった。
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恵俊彰さんインタビュー
前編
――早稲田大学の大学院に入られた経緯を教えてください。
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『ひるおび』にコメンテーターとして出ていただいている青山学院大学の陸上部・原晋監督が早稲田大学大学院スポーツ科学研究科のOBで「すごく楽しかったですよ。恵さんも機会があったらいかがですか?」みたいな話がありまして。コロナもあり人生や生活がリセットされていくなかで、自分が60歳に近づくにつれて、仕事とは別に勉強する機会を設けたいなとずっと思っていたんです。そういうタイミングがきたのかなと感じて、受験することにしました。
――恵さんの決断に対して、ご家族や周囲の反応はいかがでしたか?
家族は何の文句も言わなかったですね。子どもには、現役大学生も受験生も小学生もいるんですけど、別に悪いことをするわけじゃないじゃないですか。1年間、海外に行くとかでもないですし、生活に変化が出るスケジュールでもなかったので。とても協力的というか、「いいんじゃないの」っていう感じですごく応援してくれました。入学後も高校時代の友達と話したら、「行きたかったところに行けてよかったね」とみんなが言うんですよね。理解があるというか。
他にも、入学のことを地元(鹿児島県)の新聞に書いてもらったりと、勉強することに対して周囲はすごく好意的なんだなって思いました。自分としては、仕事でもない個人的な活動で、「世の中がこんなに反応してくれる」と驚いたぐらいです。
――実際に入学してから、イメージとのギャップは感じましたか?
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ギャップもイメージもなかったです。そもそも大学に行ったことがないので、どういうものかもわからなかった。だから、大隈講堂に感動して、キャンパス内にコンビニがあるんだ!みたいな、そんな感じでした。
でも自分がやりたかったことで、仕事と違ってお金をもらうために行くわけでもないですし、基本は夢に満ちていました。もうやる気満々で。
――学校には、週何回ぐらい行っていたのですか?
基本的には4日ぐらいです。夕方6時から9時半ぐらいまで授業があって、1コマ90分。前期・後期があって夏は休みがあります。
自分たちの代は39人くらいいて、そのなかには元日本代表のアスリートがいて(ラグビーの五郎丸歩氏、サッカーの福西崇史氏、川口能活氏らが同級生)、ほかにも中小企業の社長さんや茨城でスポーツジムを経営している方や介護士の方などがいました。休憩中にはみんなでお茶を飲んだりするんですけど、「子どもも成長して、ようやく自分の手から離れたから、やっとこういう勉強ができます」と言う人もいて、本当に気さくに話をしながら楽しく過ごしていました。
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土曜日は授業が長いので朝から学校に行き、お昼に近くの中華料理屋にみんなで行って、「この定食がおいしいんですよ」と講師の先生に教えてもらったり。「量がすっごい多いので、小サイズと言ったほうがいいですよ」って(笑)。
――高田馬場にあるキャンパスまで、どのように通われていたのですか?
自分の車です。いつも大学近くのコインパーキングに停めていました。行きも帰りも、車内で山下達郎さん、浜田省吾さん、佐野元春さん、桑田佳祐さんの曲をかけて。大学のあとは大声で歌いながら家路につく、みたいな生活です。夜の新宿、夜の甲州街道......もう何年も見る機会がなかったですし、ただ素通りするだけなんですけど、好きな曲を聞きながら自分の中学校や高校の頃を思い出すような懐かしい気分になっていました。
――ゼミ生同士で、大学外の交流もあったのですか?
僕は行けなかったんですけど、ゼミにスポーツクライミングの日本代表の監督がいて、1回みんなで体験しようって、場所を借りてみんなでクライミングをやったり、J3のチームのオーナーの方もいらっしゃって、長野にサッカーを見に行こうという話があったり。3月26日が卒業式ですけど、その前にTシャツをみんなで作りませんか、といった話も。4月は五郎丸さんのチームの試合を見に行こうとか、いろいろ交流はありますね。
――この大学院を通じて、学んだことはどんなことでしたか?
トップスポーツマネジメントコースというところにいたんですけど、毎週のようにラグビーのトップリーグの理事の方やJリーグの立場のある方が来て講義をされるんです。質疑応答を含めて1時間半ぐらいの場があるんですが、ふだんは聞けない話ばかりで本当に勉強になりましたね。
たとえばJリーグでもJ1、J2、J3のなかでお客さんが入っているチームと入らないチームがあることを知ったり、プレミアリーグとJリーグを比べて収入の差に驚いたり。「なるほど、こんな苦労があるんだ」とスポーツ界で課題がいっぱいあってびっくりしました。
ほかにも、東京ドームに行ったらおいしいビールがあって見やすい席があって、モニターもいろんなところにある。観客側からしたら当たり前なんでしょうけど、動員動線なども含め、すべて計算されていたことで、そういうことからビジネスが生まれてるんだな、と感じたり。
僕は何年も生放送の情報番組やスポーツ番組をやっていて、スポーツをずっと好きで楽しいという気持ちで伝えていましたが、そういった裏側を調べたり、伝えたりすることはありませんでした。スポーツを多角的に捉える目線が備わったかなと思っています。
――そういったスポーツビジネスの講義を経験されて、恵さんのなかで、今後スポーツ業界でどんなチャレンジをしたいと考えていますか?
僕は「情報番組がスポーツを伝える役割とは」ということを修士論文のテーマにしました。大学院での勉強や研究で、しっかりとその答えを出せたので、今後の番組作りに活かせるんだろうなと思っています。
恵さんの論文についての詳細は後編へ>>4万7000字の論文「情報番組の新たな可能性に気づいた」
【Profile】
恵俊彰(めぐみ・としあき)
1964年12月21日、鹿児島県生まれ。『ひるおび』『ワールド極限ミステリー』(ともにTBS)でのMCのほか、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)にも出演中。2022年4月に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学。2023年3月26日に修了式を迎えた。