30歳貯金160万円。4000万円の家を建てたいが資金に不安

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2023年03月26日 12:21  All About

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家計の悩みにお答えする「マネープランクリニック」。夫の転勤が多く、どのタイミングでどの程度の住宅を購入していいか悩んでいる30歳の主婦の方に、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

2人目の子どもも欲しいが経済的に厳しいならあきらめるべき?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、夫の転勤が多く、どのタイミングでどの程度の住宅を購入していいか悩んでいる30歳の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

晴れ時々雨さん(仮名)
女性/パート・アルバイト/30歳
賃貸住宅

家族構成

夫(会社員/31歳)、子ども(1歳)

相談内容

35歳までに家を建てたいが夫が転勤ありのため、どのタイミングで建てるべきか。また、そもそもこの貯金額、ペースで家を建てることは可能なのかわからず不安。

子どももできれば2人目も欲しいが、金銭面で苦労するのであれば諦めようと思っている。

子どもが幼稚園に入れば、パートの時間を増やそうと思っていて、小学校に上がれば正社員での勤務を希望している。また、保険も適正かどうか心配です。

家計収支データ

晴れ時々雨さんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「晴れ時々雨」さんの家計収支データ


家計収支データ補足

(1)自動車ローンについて
現在のローン残高:110万円

(2)夫の転勤について
転勤は頻度も期間も場所も、まったく読めない。子どもが小学校にあがるまでは、夫の転勤に家族帯同の予定。それ以降や住宅購入後については、単身赴任を検討するかもしれない。

ただし、夫は家事全般が一切できず、毎食外食またはコンビニのお弁当などになり、結果食費がかかる。別々で暮らすとなると、それぞれお互いに生活費がかかるので貯金もできなくなるのが不安。

県外の転勤の場合のみ、住宅手当4万円まで出るとのこと。

(3)住宅について
新築一戸建て希望。今希望している土地は、土地代1500万円、建物2000万〜2500万円。

「この金額は無謀なのか1番今回相談したいところです」(相談者コメント)

(4)ボーナスの使いみち(昨年例)
自動車ローンのボーナス分/40万円、車税金/7万5000円(普通車2台分)、車検/15万円(毎年それぞれの車検有)、冠婚葬祭や出産祝いなどの交際費/15万円、旅行/10万円、残った金額は生活費の補てんか貯蓄。

(5)加入保険について
夫/生命保険(定期タイプ、死亡保障1000万円、入院3000円、がん入院は限度日数なし)=毎月の保険料9487円
相談者/生命保険(定期タイプ、死亡保障300万円、入院3000円、がん入院は限度日数なし)=毎月の保険料7525円
子ども/学資保険(15歳満期、満期金200万円)=保険料9867円

(6)相談者の収入について
勤務時間を増やした場合、毎月10万円〜。正社員となった場合、毎月15万〜18万円、ボーナス年間40万〜60万円。

(7)自動車保険について
事故率が高く車両保険を外せない状態。

FP深野康彦の3つのアドバイス

アドバイス1:賃貸であれば老後資金3200万円+退職金
アドバイス2:住宅費用は予算2500万円が上限
アドバイス3:相談者が正社員になった時点で再度考えてみる

アドバイス1:賃貸であれば老後資金3200万円+退職金

35歳で住宅購入するとして、どの程度の資金計画なら可能なのか。

ここで大事なのは、いくらまでなら借り入れできるかではなく、いくらまでなら返済が可能か、ということ。もっと具体的に言えば、住宅ローンを支払いつつ、教育資金や老後資金が用意できるかどうかです。そういう点から試算してみましょう。

まずは、住宅を購入せず、ずっと同額の家賃で賃貸に住み続けた場合、今後のキャッシュフローはどうなるでしょうか。

現在、定期的に積み立てているのは毎月4万5000円ですが、このうち児童手当を除く(児童手当分だけあとで加算)と月3万円。

これにボーナス月3万円の上乗せですから、年間で42万円。ボーナスからの貯蓄は、収支を見る限り、ほぼ難しい状況です。

ただし、自動車ローンが終わります。自動車ローンの支払いに充てていた月1万1000円、ボーナス月20万円が貯蓄に回るとすれば、完済後の貯蓄ペースは年間95万円。

加えて、晴れ時々雨さんの収入ですが、お子さんが幼稚園入園と同時に勤務時間を長くして毎月10万円。小学校入学で正社員となった場合、毎月15万〜18万円、ボーナス年間40万〜60万円になるとのこと。

これらアップ分がほぼ貯蓄に反映できるとすると、ご主人が60歳となる29年間で、計算上は4300万円ほど貯蓄ができることになります。

一方、大きな支出としては、教育費を含めた子育て費用があります。これを1200万円として、このうち、児童手当の積み立て分と学資保険の満期金で約400万円できますから、残り800万円を先の貯蓄から捻出することになります。

さらに自動車の買い替え(2台分)などを考慮すると、60歳までに手元に残る資金は、今ある貯蓄160万円も加算して、3200万円程度(退職金を考慮せず)となるわけです。

アドバイス2:住宅費用は予算2500万円が上限

では、次に住宅購入をした場合を考えます。4年後に貯蓄の上乗せ分は200万円ほど。これを全額自己資金とします(現在の貯蓄分は住宅資金に充てず残したい)。

当初の予算は「土地代1500万円、建物2000万〜2500万円」ですから、仮に諸経費(150万〜200万円)込みで計4000万円とすると、自己資金を差し引いた3800万円を借り入れしなくてはいけません。

30年返済(完済65歳)、全期間固定の金利1.5%で借り入れると、返済額は月に約13万1000円(ボーナス払いなし)。

これに、その他のランニングコスト(固定資産税、将来の修繕費)を加算して15万5000円とすると、家賃より住宅コストが月9万円アップします。

購入後、25年間で2700万円。結果、ご主人60歳時に500万円しか手元に残りません。加えて、65歳まで毎月15万円超の住宅コストが発生します。マネープラン的には、無謀といえるでしょう。

借入額を下げれば、当然、資金的には余裕が生まれます。借り入れが2000万円なら毎月の返済は月に約6万9000円、2500万円なら約8万6000円、3000万円なら約10万3000円。

ランニングコスト全体を考えれば、2500万円借り入れて、60歳の時点で1700万円が手元に残りますので、これが上限でしょう。諸費用を自己資金として出せば、土地+建築費で予算は2500万円ということになります。

しかし、この場合も、晴れ時々雨さんが先の収入アップを確実に実現させること、そして少なくとも夫婦とも65歳までは働くことが欠かせない条件となります。したがって、借り入れ額は2000万円程度に抑えておきたいところです。

アドバイス3:相談者が正社員になった時点で再度考えてみる

もう1人お子さんを希望されていますが、その場合はどうか。当然、教育費を含む新たな子育て費用が発生し、また、晴れ時々雨さんが出産、育児により、一定期間収入減となります。

大まかですが、2000万円の借り入れで、老後資金は1200万円+退職金。退職金は不確定要素であり、65歳まで住宅ローンが続きます。FPとしては「背中を押せない」プランと言わざるを得ません。

ただし、まだ考える時間はあります。現状では、お子さんの小学校入学を機に晴れ時々雨さんが正社員となれるかどうか。なった時点で、住宅購入を考えても遅くはないと思います。

結果、住宅ローンの開始年齢が上がりますが、その分、住宅購入の自己資金も増えます。また、ご主人の転勤も不確定要素。その意味でも、4年後にこだわらず、購入時期を後ろにズラしてもいいのでは。

家計については、ほぼ無駄は見当たりません。節約可能なのは通信費くらいでしょうか。

しかも、保険については、ご主人の死亡保障が足りません。持ち家ではないこと、お子さんがまだ1歳であることを考えれば、現時点で少なくともあと1000万円は死亡保障がほしい。保険期間15年の定期保険で保険料は月1500円ほど。早めに確保してください。

自動車保険はこの金額に事情があり仕方ないなら、現状は見直せません。しかし、数年間、事故や自損がない状況が続けば、車両保険は外してもいいかもしれません。おそらく夫婦とも外せば半額〜3分の1程度に保険料は下がるはずです。

第2子については、とても大事なことですから、ご主人と十分話し合ってともに納得できる形を探してください。

単純に住宅購入と比較できるものでもありませんが、お子さん2人になれば、住宅にかけられる資金は減ります。それでも、物件やエリアによっては購入可能かもしれません。

とにかく今は焦らない、慌てないことが大切です。そして、晴れ時々雨さんが収入アップを重ね、状況がどうなっても対応できるよう、貯蓄に励んでください。

相談者「晴れ時々雨」さんから寄せられた感想

このたびは、相談に乗っていただきありがとうございました。かなり無謀な計画をしていたことがわかり、私自身の働き方や保険の見直しを夫としていこうと思います。

家を建てるにしても、4年後と焦らずに、ある程度貯金がある状態にしてから検討しようと思います。

先行き不安ですが、家族皆が納得し、幸せに暮らしていけるように頑張りたいと思います。本当にありがとうございました!

教えてくれたのは……深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:清水京武
(文:あるじゃん 編集部)

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