エッセイ漫画は作者の日常に共感して楽しむだけでなく、自分の知らない世界を覗き見できるのも大きな魅力だ。3月8日にTwitter上で公開されたエッセイ漫画『漫画家志望が耳かき専門店で働いてみた話』は、「耳かき専門店」という知られざる店舗で働いた経験を持つ森民つかささん(@uouououoza1)が、ある女性客とのやり取りを軸にその裏側を見せてくれる、発見の多い作品だった。この漫画を読んで、実際にお店に足を運んだ読者や、採用面接に行った人もいるという。
(参考:漫画『漫画家志望が耳かき専門店で働いてみた話』を読む)
高校時代に「小学生の時に『漫画家になりたい』と本気で思いながら漫画の模写ばかりしていたな」と思い出し漫画家を目指しながら活動しているという作者の森民さんに、制作の背景や反響など、じっくり話を聞いた。(望月悠木)
■漫画キッカケで実際に足を運んだ人も
――まず『漫画家志望が耳かき専門店で働いてみた話』の?を描こうと思ったキッカケを教えてください。
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森民:担当編集者さんに企画出しをする中で、「耳かき店で働いたことがある」という話に興味を持ってもらったことが制作のキッカケでした。ネームの段階で「内容は素敵だけど、商業掲載は難しい」とのことだったので、「耳かき店についての情報を知りたい人に届けばいいな」と思い、pixivや Twitterにアップすることにしました。
――?は2021年12月にアップされ、2023年3月上旬に?をアップされました。?のアップ後から1年以上経過しての続編ですが、なぜ今回?を制作しようと思ったのですか?
森民:当初は続編で描きたいテーマも特に見つからなかったので、商業用の企画を作って送ることに集中してました。ですが、相変わらず結果が出ない日々で意気消沈気味に…。そんな中、ネットで「『?を読んで興味がわいて来ました』というお客さんや面接に来てくれた人が結構いるよ。嬉しいね」と耳かき店で働く友人からちょくちょく連絡をもらっていました。
――それは嬉しいですね。
森民:はい。また、大阪や静岡の耳かき店で以前働いていた人たちから「描いてくれてありがとう」という感想DMも届いていたこともありました。他にも、pixivなどでも嬉しいコメントをいただき、励まされてきたので、「こんなに反応をもらえて喜んでもらえるのなら、今私にできることをしよう」と思って続きを描きました。
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――?は耳かき店の裏側、耳かきの種類など、情報や知識を学べる内容の比重が多く、?ではお客さんとのやり取りが多かった印象です。?と?ではどのような意識で描き分けましたか?
森民:?は文字を多く使って「耳かき店ってこういう所だよ〜」と淡々と説明する形式にしました。ただ、「次は実際に来店して、接客や施術の雰囲気を体験できるような作りにしたら読者さんにより楽しんでもらえるのでは」と思って?を制作しました。
――ご自身も含めて動物キャラに描き上げていました、なぜこのデザインにしたのですか?
森民:耳かき店はニッチな題材なので、「人間じゃない動物キャラのほうが軽い気持ちで読み進めてもらえるかなぁ」と思い、私も含めてマスコットみたいな動物のデザインの登場人物になりました。また、アニメ『名探偵ホームズ』の登場人物が全て顔だけ犬で、その親しみやすいデザインが大好きだったので、?の女性を描くうえで参考にしました。
――耳かきを題材にしているため、読む前は「少し不快なシーンが出たらどうしよう」と思っていましたが、そういったシーンはなく楽しく読み進めることができました。
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森民:確かに他人の耳垢なんて、できれば見たくないですよね(笑)。無事に読み進めてもらえて良かったです。やはり見てて気持ち悪い気分にさせてしまうのは趣旨と違うので、シンプルなタッチで耳垢を描くことは意識していました。
――「人の日常の癒しになれる」という意味では、耳かき店も漫画家も共通している部分が多いように感じました。耳かき店で働いた経験は現在の制作にどのような影響を与えましたか?
森民:いろんなお客さんから日常の話を聞く中で、「みんな同じようなことで悩んだり疲れたりしていて、どんな職業、見た目、性別であっても、みんな同じ人間なんだな」と知ることができ、世界の見方が変わりました。また、落ち込むことがあっても、優しい気持ちで「明日もがんばろう」と思えるようにもなりました。今後の創作漫画でもそういった意識できれば、「読者さんの疲れを癒すことができるのかな」と思っています。
――ちなみに?の制作は予定していますか?
森民:オリジナル読切漫画も同時進行させつつ、になると思いますが、「なんとか3ヶ月以内に完成できたらいいな」と計画しています。
――今後の漫画制作の展開について教えてください。
森民:商業を目指しているのですが、まだ何かを報告できるような状況ではありません…。ただ、どんどん描いて発表していかないと上達もしないので、手を止めずに制作していきたいと思っています。読み終わった後に、優しい気持ちになれるような漫画を作れるよう頑張りますので、応援していただけたら嬉しいです。
(望月悠木)
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