
「吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹などの名前が先発メンバーから消え、代表歴の少ない選手が多く入った。森保一監督は替わっていないが、リスタートと言えるだろう。ただ、有効なコンビネーションは少なく、多くの攻撃が、横か縦で単調。斜めの動きの工夫があまり見えなかった。得点シーンに関してはそれが見えたが......」
スペインの名伯楽、ミケル・エチャリはそう言って、日本がウルグアイと1−1と引き分けた試合を振り返っている。エチャリは自身がレアル・ソシエダで長く強化部長や育成部長をやっていただけに、チームの査定に関しては言葉を選ぶ。ただ、今回は不安が滲み出ていた。
「カタールW杯後、どのようにチームが変化するのか、まだ見守る必要がある」
エチャリが見た森保ジャパン再出発の現状とは?
「日本は4−4−2で、特にバックラインに若い選手を登用していた。ウルグアイも4−4−2に近く。ミラーゲームのようだったが、フェデリコ・バルベルデが自由にプレーすることで、違いを出していたと言える。ミラーゲームに近かった。
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序盤から日本が試合をリードしていたが、プレーのひとつひとつがスローだった。ウルグアイのハイプレスを受けたこともあって、なかなか敵陣まで攻め込めない。自陣でボールを回すだけでは、攻撃というより守備をしていたのも同然だ。
日本のベストプレーヤーは遠藤航だった。経験を生かし、守備やトランジションで強度を見せた。キャプテンマークを巻いて落ち着いていたし、局面ではほとんど負けていない。
しかし前半37分、左サイドをマキシ・ゴメスに突き破られた時、その遠藤が釣り出されてしまう。この時、入れ替わられてしまい、クロスを折り返される。つまり、バックラインの選手が不在になっていた。
狡猾なウルグアイは、この一瞬を見逃さなかった。戦術的な能力に優れるバルベルデは危険なポジションにすかさず入っており、得意のミドルレンジからのボレーを叩く。これはバーを直撃したが、リアクションも誰よりも早く、ヘディングで突き刺した」
【守田英正、堂安律、三笘薫は低調】
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先制点までの流れを、エチャリは淡々と独自に分析している。
「後半に入っても、日本の攻撃は単発だった。左サイドの三笘薫が何度かゴールに向かって相手を脅かしているが、援護がない。最前線の浅野拓磨はシュートチャンスでも沈黙していた。
ようやく日本に流れが出たのは、61分に伊東純也、上田綺世のふたりを投入してからだろう。試合自体、オープンな展開になりかけていたのもあったか。ふたりはそれぞれ縦の速さと動きの質で変化を起こしていた。上田はやや右へ流れながらポストに入り、伊東がワンツーでインサイドを怒涛の如く侵入。結果、一度はPKとジャッジされたシーンもあった。
そして75分、同点弾もふたりの連係が肝だったと言えるだろう。菅原由勢からのパスを受けた伊東が右サイドを一気に駆け上がって、DFを突き放す。ゴール前では、上田がニアポストに相手DFを引き連れていた。空いたポジションに入った同じく交代出場のFW西村拓真が、クロスを呼び込んでゴールを決めている。
戦術的なコンビネーションによるすばらしい得点だった。
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交代出場した選手では、田中碧も好プレーを見せていた。どこか脆さがあった中盤を強化。シンプルにボールを展開し、この日だけで言えば、守田英正よりも確実によかった」
エチャリは同点弾について説明したあと、各選手についての短い評価もしている。
「GKシュミット・ダニエルは、まだ評価を確定できるようなプレーがない。右CB板倉滉はこれまでどおりの水準を示したと言える。左CB瀬古歩夢への評価は『仕事を果たした』にとどめたい。右SB菅原由勢は一気に深さを使うスルーパスを浅野に送るなど、悪くなかった。だが、左SB伊藤洋輝はノッキングしていた。ボランチの遠藤はよかったが、守田は不調で、田中がベター。両サイドの堂安律と三笘は、本来の力を考えると低調だった。トップの浅野は見どころなし。伊東、上田のプレーを高く評価したい。
心配なのは鎌田大地だろう。トップの一角で使われていたが、彼はもっと中盤の選手に近い位置でプレーすべき。そうすることによって、プレーに変化を与えられる。ダイレクトパスひとつをとっても、異彩を放つ場面はあった。彼には自由を与え、幅や奥行きを使ってプレーさせるべきだろう。それだけの選手だし、その才能を生かさなければ、日本のプレーもテンポが出ない」
最後に、エチャリはコロンビア戦に向けて、森保ジャパンにこんなエールを送っている。
「現時点では、チームとしての動きは見えない。コーチに誰が入ったのか? コーナーキックも質が悪く、得点の予感がしなかった。どのようにグループとして成長するのか。それを見守りたい」