
第二志望だったうちの子
「うちは娘本人がどうしても受けたいと言った2校に絞って受験したので、どちらでもよかったんです。第一志望としていたところには落ちちゃったんですが、第二志望でも万々歳。本人も喜んでいます」そう言うのはサヨコさん(42歳)。ただ、仲のいい友だちがその学校に落ちたこともあり、娘から「自然とわかったらしかたがないけど、ママから私の進学先は言わないで」と口止めされていた。友だちを慮ってのことだから、娘の意志を尊重することにした。
「ところがママ友のLINEグループで、どこに進学するのかという話題になって。私は『娘に言うなと言われているから内緒ね』と軽く受け流していたんですが、それが『仲良くやってきたのに、最後に隠しごとをするなんて』と批判されてしまいました。今後も付き合っていこうと言っていたのに、あっけなく友情断裂。まあ、いいですけどね」
娘の仲良しと、親同士の仲良しとは違っていたりもするので、このままママ友の付き合いができなくなっても気にしないようにするとサヨコさんは言う。
「ママ友グループの中には、娘の第一志望としていた学校に受かった子のママもいます。彼女は私を名指しで、『ごめんね、うちの子が受かっちゃって』と言ってきました。謝られるとカチンときますよね。でも、どうして謝るの?なんて言うとまた角が立つので、『子どものことだから。親同士の関係には影響ないでしょ』と返しておいたんです。
そうしたら『サヨコさんがキレた』と言われているみたい。面倒くさいなというのが本音です(笑)」
中学受験は親が主導で頑張ってきた分、親同士の争いにもなりかねないところがある。それでも受験が終わればノーサイドだとサヨコさんは考えてきたのだが、合格した人も不合格だった人も複雑な思いを抱えがちなのかもしれない。
|
|
噂好きのママ友に振り回されて
中学受験は、しなかった人にとっては大きな問題ではないが、ここが勝負と親子で頑張ってきた人にとっては大問題。エリカさん(40歳)も頑張ってきたという。「必死だったんですよ……。でも全部落ちてしまって。一時は私が病みそうでした。もともとクールに見ていた夫から、『きみの気持ちより、挫折感を味わっている息子の気持ちを考えてやろうよ』と言われて目が覚めました。私はどうやら自分の夢を息子に押し付けていたのかもしれない。そう考えて、公立に通うことになった息子が落ち込まないよう、この1カ月ほど注意深くケアしてきたんです」
息子は案外あっけらかんとしていて、むしろ近くの中学に通えることをよしとしているようなので、エリカさん夫婦もホッとしているところだという。
「ただ、ママ友のひとりが、うちの子が何校受験したのか、どこを受けたのかと探りを入れてきて。受けていないところまで他のママに『エリカさんのところは、○○も落ちたらしいわよ』と噂を振りまいているみたいです。そのママ友の子は受験さえしていない。なのに噂だけを流すってあんまりですよね、当事者でもないのに」
今さえ乗り切れば、新学期が始まり、やがてみんな忘れていくもの。だから抗議もせずに放ってあるのだが、面倒なのは、そのママ友の子とエリカさんの息子が仲良しだということだ。
「ふたりとも地元のサッカーチームに入っていたんです。これからは中学でもサッカー部に入るはず。だから同じ学校に通えるのを息子は喜んでいますが、私はちょっとため息が出ますね。うちの姉などは、子どもの小学校時代のママ友たちとずっと仲良くしているというんですが、私は無理みたい。その噂好きのママにかき乱されている状態です」
子どもの関係でできたママ友は、偶然の産物のようなもの。あまりとらわれることなく、子どもと離れて自分の関係を作っていければいい。エリカさんはそう言って、「前向きに考えます」と笑顔を見せた。
亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
|
|