出雲充さんが語るスーパー微生物「ユーグレナ」を通して見えた挑戦と平和 東大同窓生である大宮エリーが振り返る

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2023年03月27日 16:30  AERA dot.

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大宮エリーさん(左)と出雲充さん(撮影/写真映像部・東川哲也)
 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は大宮さんが出雲充さんをゲストに迎えたきっかけ、そしてインタビューを振り返ります。


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 ユーグレナのことは一ツ星レストランのシェフから聞いて知っていた。コラボで、ユーグレナたっぷりのお弁当をプロデュースしたから食べてと言われていただいた。おいしかった。スタッフにも、と購入したりした。それで知ったのだった、ユーグレナという名前を。


 ん、ユーグレナってなんだ? 以来、気になっていた。なんとなく新しい未来な感じ。


 それで対談に出雲充さんにご登場いただいた。緑のネクタイでいままでの経緯やこれからの展望を流暢(りゅうちょう)に話される。実に話が上手。


 研究者でありながら、起業家。会社がまたびっくり。健康食品のそれじゃない。おしゃれな内装、そして意欲がありそうなたくさんの人。


 出雲さんを丁寧にケアする、魔法瓶をそっと渡す有能な広報。出雲さんは人を束ね、人を動かすことができる。それでいて研究者。つまり、何が言いたいかと言うと、出雲さんこそ、ユーグレナなのだ。


 ユーグレナ、和名ミドリムシは、小学校で習ったと思うが、植物性と動物性の両性をもつスーパー微生物。


 研究者って、人間的にそんなに人とうまくやれるひとが少なかったり、投資家の方と渡り合って響きあったりという人も少ないはず。私も東大では理系で研究室に(少しだけれど)身を置いてなんとなくの雰囲気は知っているつもりだ。ひとつの研究を商品化にこぎつけるのは並大抵のことではない。努力のほかに、運やら人柄やら人脈やら行動力、いろいろなものが必要だなと感じた。出雲さんは、それらが全部あったんだろう。


 どうしてこんな体にいいスーパーフードならぬスーパー微生物を総合栄養食に活(い)かさないの? 活かしたらもっと世界が良くなるよ! これすごいことになるよ!と本気で思って行動されて、いまもまだその熱意が燃えたぎっている。熱意の他に、強い信念と自分を信じる力を維持するのも才能と力のいることだ。大学時代にバングラデシュに行ったことで、栄養失調に苦しむ人々を、子どもたちを救いたいと思ったとおっしゃっていてその熱量とモチベーションが20年以上たって衰えていない。いや、むしろ拍車がかかっている。貧困を救うだけではなく宇宙食、バイオ燃料にも採用されるんだから。



 ユーグレナは太古の時代からいたわけで、光合成もするからこの地球を酸素多き星にしてくれた。それ自体すごいんだけれど、手がけたことよりも、実は出雲さんという人間の熱量の高さ、バイタリティーの高さに、圧倒された。


 私は、流されるタイプで、これをやろう!と自分で見つけて自発的にやるタイプではない。人からやったら? やってよ、とむちゃ振りされて生きてきた。だから出雲さんの熱量の動力源が知りたい。どうすればあんな自家発電できるのか。あんなふうにはなれないから、せめてユーグレナを飲むしかないのか。


 微生物と宇宙だなんて、ロマンがある。そして微生物が食糧危機や、燃料問題を解決するならば、微生物が平和をもたらすのだろう。微生物と平和。人間は愚かで奪い合うから、そして自分さえ良ければいいと思うあさましい存在だから。


 いま地球上で起こっている深刻な問題を自分たちで解決できず、太古からの先住民である微生物にお世話になるとは。みなの地球を我がもの顔で破壊しているというのに。本当に人間は、どうしようもない。でもそれを踏まえての出雲さんの挑戦なんだと思った。


大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。クリエイティブのオンライン学校「エリー学園」「こどもエリー学園」を主宰。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示


出雲充(いずも・みつる)/1980年、広島県出身。2002年に東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。05年、ユーグレナを立ち上げ、代表取締役社長に。同年、世界初の微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養に成功。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』など


※AERA 2023年3月27日号


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