
子どもが中学生になったらパート時間を増やすべき?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、夫の残業代が激減し、その上、子どもは私立高校に入学し看護系大学を目指すなど、教育費のピークも目前で今後に不安を感じる48歳のパート女性。
収入アップのためにパートの勤務時間を増やすべきかとのお悩みに、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
ちっちさん(仮名)女性/パート・アルバイト/48歳
関東/持ち家(一戸建て)
家族構成
夫(48歳)、子ども2人(16歳・12歳)相談内容
夫の仕事は、残業しだいでかなり月々の月収、年収にバラツキがあります。今後は残業代が激減することが予想される上、そろそろ役職につくかもしれないため、多少の役職手当は付いても残業代はなくなり、確実に年収はかなり下がると思います。月々の貯蓄は残業代しだいでかなりバラツキがありますが、生活費は残業代が少ない月を考えて無駄遣いはしないよう心がけています。外食も記念日など以外はしません。
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現在はパートで月に7万円ほど稼いでいますが、下の子どもが中学生になったらフルパートにしないと無理でしょうか? 学費や老後がとても心配です。
家計収支データ
ちっちさんの家計収支データは図表のとおりです。
家計収支データ補足
(1)住宅費について住宅ローンは完済。親類からの借金(1万5000円/月×10年)が残っている。
(2)働き方改革による収入減少について
額面の給与は今まで51万5000円+残業代だったが、残業代が激減するので、主人の手取りは45万円ほどになるのではないか?と予想している。
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車は1台、ローンはない。買い替えは5年後くらいで予算は250万円程度まで、と考えている。
(4)教育費について
上の子どもは私立高校に進学。学費などは年間100万円、通学費が年間15万円、制服18万円、教科書代などが3万円ほどかかる。将来は私立大学の看護科を目指しており、そうなると4年間の学費だけで800万円はかかりそう。
下の子どもは小学生なので、まだ塾代のみで1万5000円ほど。中学は公立校へ進学するが、高校は私立になるか公立になるかわからない。大学へ進学予定。
(5)保険料の内訳について
・夫:共済(主契約=入院時1日当たり1万円、交通事故死亡2000万円、病気死亡800万円、特約三大疾病=がん50万円、入院時1日当たり5000円)=毎月の保険料6000円
・相談者:共済(入院時1日当たり5000円)=毎月の保険料2000円
・子ども2人:共済=毎月の保険料2000円
(6)ボーナスの主な使い道
帰省費用10万円、地震保険料2万6250円、家電製品などの買い替え10万円、車検、車税、車保険など14万円(車検は2年に1度を、1年分として計算)
(7)貯金の仕方について
先取り貯蓄はしておらず、児童手当なども含め、すべてその月に余ったお金を普通預金にそのまま貯めている。
(8)60歳以降の働き方、年金について(相談者コメント)
夫の会社では、65歳まで雇用を延長するなどの制度は今のところ聞いたことがなく、将来もらえる退職金は300万円ほど。年金は30代からは正社員で厚生年金加入。ねんきん定期便によると、今の加入実績に応じた年額額は年額95万円ほど。
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FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:十分な貯蓄があるので教育費の心配はないアドバイス2:このペースで貯蓄できれば老後資金の不安を感じなくていい
アドバイス3:老後資金はiDeCoで節税をしながら貯める方法もある
アドバイス1:十分な貯蓄があるので教育費の心配はない
結論から申し上げると、これまできちんと家計管理をしてしっかり貯めていらっしゃいますから、これから教育費が必要な時期になりますが何の問題もありません。これまでと同じようなお金の使い方を続ければ、ちっちさんのパート勤務も今のペースで大丈夫。それよりも健康第一を心がけ、少しは自分たちのためにお金を使ってはどうでしょう。
では、その理由を説明していきます。教育費は上のお子さんの私立高校の費用を400万円、大学は私立の看護大学で800万円。下のお子さんも私立高校へ進学したとして400万円、大学は学部によって学費が変わってきますが仮に理系として500万円。
ふたり合わせて2100万円となります。これを全額、現在の貯蓄から支出しても3400万円が残り、これは老後資金とすることができます。
アドバイス2:このペースで貯蓄できれば老後の不安を感じなくていい
前項で老後資金は3400万円と試算しましたが、子どもたちの学費を貯蓄から支出すれば、夫の収入が減っても現在同様に毎月貯蓄ができますから、積み増すことができます。やや保守的に見積もっても毎月15万円、ボーナスは半分の50万円、計230万円を定年の60歳まで貯めることが可能でしょう。すると230万円×12年で2760万円。これに現在の貯蓄から教育費を引いた3400万円と、退職金300万円をくわえた6460万円が老後資金ということになります。
60歳以降の働き方について「雇用延長の話を聞いたことがない」とのことですが、60歳定年後の希望者全員を65歳まで雇用することは法律で義務化されています。ですから収入が下がることはあっても、希望すれば継続して働けます。
定年までには下のお子さんも大学を卒業しますから、現在の支出から推測すると生活費は21万円程度になるはずです。そうすれば収入が半減することがあっても、貯蓄を取り崩さなくても生活ができるのではないでしょうか。
65歳以降の年金生活になった場合も考えてみましょう。現在のねんきん定期便では夫婦合わせて150万円程度ですが、50歳未満の人はこれまでの加入実績に基づいて計算されていて今後の見込み額は含んでいません。
このまま働き続ければ200万円くらいにはなるはずです。とすると年間の不足額は50万円程度。老後資金は6460万円ですから、毎年50万円ずつ取り崩していっても129年分あります。
これだけあれば、車の買い替えや家のリフォーム、介護などでお金が必要になっても困るとは思えません。
アドバイス3:老後資金はiDeCoで節税をしながら貯める方法もある
60歳以降の公的年金の加入について考えていらっしゃるようですが、夫は継続雇用で勤務を続ければ厚生年金に加入することになります。ただし、夫が厚生年金に加入していても、ちっちさんは60歳以降、第3号被保険者にはなれません。納付期間が40年に満たないようでしたら、任意加入をして年金額を増やした方がいいでしょう。
知識がないからiDeCoやNISAはやっていないとのことですが、iDeCoの掛金は所得控除ができるので節税になるというメリットがあります。投資商品で運用して損をすることが不安ならば預金で構いません。
口座管理料がかかるので運用しないといけないと思い込んでいる人も多いようですが、所得控除で税金が軽減されることを考慮すれば預金でも損することはありません。
普通預金でしっかり貯められる人なので必要を感じないかもしれませんが、所得から掛金が控除されるというメリットを使わない手はありませんから、検討してみてはどうでしょう。
相談者「ちっち」さんから寄せられた感想
先生に診断していただき、安心いたしました。今後の教育費のピークと収入の減少、老後の年金の不安などがあり、どうすべきか悩んでおりました。先生にこのままの生活のペースで教育費も老後も大丈夫と診断していただき、不安な気持ちがなくなりました。ありがとうございました。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:鈴木弥生
(文:あるじゃん 編集部)