
実質「結婚0日」離婚という人も
「私は2回離婚しているんですが、実はどちらも結婚生活は送っていません。しかも結婚から2カ月足らずのスピード離婚でした。周りから『いくらなんでも結婚した翌日に離婚するわけにもいかないだろう』と言われて数カ月待っただけ。もちろん、スピード離婚したくて結婚したわけじゃないんですけどね」そう言うのは、コナツさん(38歳)だ。最初の結婚は23歳のとき。大学時代から付き合っていた同い年の彼とだった。卒業してそれぞれに就職したその夏、“勢いで”結婚したのだという。
「社会人になって私は楽しくてたまらなかったんです。同僚と飲みに行ったり、週末は同期の友人たちと一泊旅行をしたり。学生時代とは違う、新しい世界が開けた感じだった。でも彼は仕事がつらいと、いつも愚痴っていたんです。
夏に彼と旅行したときに、『オレには味方がいない』『私はあなたの味方だから』『じゃあ結婚しよう』という話になって。そのまま婚姻届をもらいにいって、友人たちに証人になってもらって出しちゃった」
もともと別々に住んでいたし、翌日から仕事があったので、それまでとなんら変わらない生活だった。そのうち時間がとれたら親にも話そう、友人たちとパーティーもしようと言っていたのだが、2カ月後に彼の転勤が決まった。
「彼が『オレの味方だと言ってくれたよね。転勤先に一緒に来てほしい』というので、いや、それは無理という話になって。結局、そのまま離婚しました。今思うと笑い話ですが、あのときは何のために婚姻届を出したんだろうと少し落ち込みましたね」
結婚というものをそれほど重大なものと捉えていなかったコナツさんだが、女友だちに「何やってんの」と言われて情けなくなったと言う。
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そんな離婚だったからこそ、周りの反応から、彼らの普段の考え方が透けて見えたとコナツさんは言う。
「もちろん、次にもし結婚するならちゃんとしようとは思ったけど……」
次の結婚は31歳のときだった。
「同情婚」は続かない
20代後半で「大恋愛」に落ちたものの、それが4年ほどで破局。泥沼にはまったように未練から脱することができず、苦悩の連続だったというコナツさん。そこからようやく脱したときに知り合った3歳年上の彼と電撃結婚したのが31歳のときだった。「30歳までに結婚して子どもがほしい。穏やかな結婚がしたいと願っていたんですが、30歳のときに彼と出会った。私はようやく恋愛の傷が癒えてきたところで、彼はまさに傷ついている真っ最中でした。信じていた彼女に婚約直前で裏切られたというんです。
話を聞いているうちにひどく同情してしまい、私でよかったら結婚しようと言わざるをえなくなって。彼はとにかく寂しいって。私も寂しかった。だから一緒になろうと、妙に盛り上がってしまったんでしょうね(笑)」
ところが婚姻届を出して一段落すると、彼と会うのが苦痛になった。コナツさんはすでに痛手を脱していたのだが、彼と一緒にいると、まだ傷の癒えていない彼がやけに絡んでくるのだ。何か言うといじけたり拗ねたりするため、放置しておくと怒り出す。
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2度目の結婚もまた、3カ月足らずと短かった。そんな彼女は3度目の結婚をするつもりはないという。また同じことの繰り返しになるのが目に見えている、と。
「そもそも結婚に対する考え方が一般的ではないんだとよくわかりました。結婚=一生一緒にいるという発想もないし、同居しなければいけないとも思ってない。だったらどうして結婚するんだと友人にも言われたけど、寂しかったり誰かとパートナーシップを築きたかったりはするんですよ。
その結果としての選択肢のひとつが結婚なんだとは思うけど、その瞬間の決断だから、先のことはまったく考えていない。だからスピード婚になる。その経緯がわかったので、結婚という形をとる必要はないと今は思っています」
それでもまた、自分が孤独感にさいなまれたり、相手がそういう状態になっているのを見たら、結婚しようと言ってしまうかもしれないけど。彼女はそう言って苦笑した。
亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))