
au損害保険は全国の自転車利用者の男女1万6635人を対象に「自転車利用時のヘルメット」に関する調査を実施(※1)。
その結果によれば、ヘルメット着用の努力義務化を知っていると答えた人は53.2%でしたが、実際に自転車運転時にヘルメットを着用している人は10.4%(1735人)に留まりました。

着用していない理由を聞くと、「必要性を感じない」「着用している人が少ない」などのほかに、「髪型が崩れる」「おしゃれじゃない」といった“見た目”に関する意見も……。
4月からの新ルールはどのような変更点があるのか。また、そもそも努力義務は義務とどのように違うのかなど、法的観点から弁護士である筆者が解説します。
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13歳未満の子ども→“すべて”の自転車利用者
2023年3月31日までの道路交通法では、保護者が、自転車に乗車する13歳未満の子どもにヘルメットをかぶらせるように努めなければならないと定めています。しかしながら、自転車による交通事故の被害を軽減することを目的に、2023年4月1日以降、すべての自転車運転者のヘルメット着用が努力義務となります。また合わせて、自転車運転者は、同車する人に対してもヘルメットを着用させるように努めなければなりません。
なお、13歳未満の子どもが自転車を運転する場合は、その子自身ではなく、その子の保護者が、その子にヘルメットをかぶせる努力義務を負います。
そもそも「努力義務」って何?
努力義務とは、法律上、「〜するように努めなければならない」などと規定されるものを指します。努力することは求められるものの、強制力はなく、従わなかった場合の制裁もありません。反対に、法律上、「〜しなければならない」と規定されているものは義務であり、強制力を伴います。努力義務を定めている法律はたくさんありますが、身近なところでは、新型コロナウイルスのワクチン接種が挙げられます。予防接種法は、「接種を受けるよう努めなければならない」と定め、国民に新型コロナウイルスのワクチン接種への協力を求めていますが、接種は強制ではなく、あくまでも本人が接種するか否かを判断することができます。
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ヘルメットを着用しなかった場合、罰則はないが注意点も……
2023年4月1日以降も、ヘルメットの着用は努力義務ですので、罰則はなく、逮捕されることもありません。ただし、努力義務規定を設ける背景には、法律が急に大幅に変わることを緩和する目的もあり、今後ヘルメットの着用が義務化される可能性もありますので注意が必要です。また、警察庁によれば、2017〜2021年に発生した自転車乗用中の事故で死亡した人のうち約6割が「頭部」に致命傷を負っており、ヘルメットを着用していない人はしている人に比べて致死率が約2.2倍高いとして、命を守るためにヘルメットの着用を呼びかけています(※2)。

なお、ヘルメットをしないで自転車を運転中に万が一交通事故に遭ってしまった場合、ヘルメットをしていなかったことを過失として評価される可能性が高まります。
参考
※1:プレスリリース
※2:警察庁 公式サイト
鬼沢 健士プロフィール
慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)やインターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。All About 暮らしの法律ガイト。(文:鬼沢 健士(弁護士))