「モバイルバッテリー」に寿命が来たらどうなる? 捨てるタイミングと方法をチェック!

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2023年03月31日 21:32  ITmedia Mobile

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寿命を迎えたモバイルバッテリーはどう処分すればいい?

 以前と比べると「コロナ禍」は落ち着きを見せつつある。スマートフォンやノートPCを外に持ち出す機会も増えたという人も少なくないだろう。外出が思ったより長引いて「バッテリーが持たない……」と冷や汗をかく機会も増えているかもしれない。



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 そんな時に役立つのが「モバイルバッテリー」である。先日、モバイルバッテリーを選ぶ上で注目したいポイントを4点まとめた。



 一方で、モバイルバッテリーを購入/利用する際に忘れがちなのが「寿命」と「寿命を迎えた際の処分方法」である。スマホやノートPCのバッテリーと同じように、モバイルバッテリーにも寿命があり、寿命を迎えたら適切に処分する必要があるのだ。



 しかし「何をもって『寿命を迎えた』と考えればいいの?」「寿命を迎えたモバイルバッテリーはどうすればいいの?」と疑問を持つ人もいるだろう。この記事では、これらの疑問を解消していく。



●モバイルバッテリーの「寿命」 そのサインは?



 スマホやノートPC、モバイルバッテリーは、ほぼ例外なく「リチウムイオンバッテリー」または「リチウムポリマーバッテリー」が搭載されている。基本的な仕組みは両者ともに一緒なので、以降はまとめて「リチウムイオンバッテリー」と呼ぶことにする。



 リチウムイオンバッテリーは寿命が長い傾向にある……のだが、あることに代わりはない。同じスマホやノートPCを2〜3年使っていると「あれ、買った時よりバッテリーの持ちが悪いな……」と感じることがあるが、これがまさにバッテリーの寿命が近づいていることのバロメーターなのだ。



 モバイルバッテリーもこのことは同様で、他のデバイスに給電(充電)できる時間が短くなってくると、内部のバッテリーが寿命に近づいているということを意味する。



 リチウムイオンバッテリーには「充電サイクル(サイクルカウント)」という概念がある。これはバッテリーの満充電容量を充放電した回数を示すもので、例えば満充電容量が5000mAhのバッテリーであれば、5000mAh分の充電と5000mAh分の放電を行うと「1サイクル」と数える。



 一般的に、リチウムイオンバッテリーの寿命は300〜500サイクルとされている。Windows 10/11やmacOSで稼働しているノートPCでは、充電サイクルをチェックする方法が用意されている。



 iPhone/iPadや一部のAndroidスマホ/タブレットでは、バッテリーのサイクルカウントの代わりに定格(≒新品時)の満充電容量と比べた場合の満充電容量をチェックできる。定格容量と比べる場合は、一般的に50〜80%の容量にあると寿命とされている。iPhone/iPadの場合、定格容量の80%になるとバッテリーの交換を促すアラートが出てくる。



 ……と、話がそれそうになったが、モバイルバッテリーには充電サイクルや満充電容量の比率を表示する機能はない。スマホ/タブレットやノートPCと比べると、モバイルバッテリーは充放電の頻度は少ないため、想像以上に長持ちはする。しかし、寿命と“無縁”ではいられない。



 目安としては、iPhone/iPadや一部のAndroidスマホの基準を準用して、新品の時の7〜8割程度の容量(時間)しか充電できなくなったら買い換えを検討するようにしたい。モバイルバッテリーを使った回数を覚えているなら、500回くらい使ったら買い換えると考えればいいだろう。



●古いモバイルバッテリーは「発煙/発火事故」のリスクが大きくなる



 モバイルバッテリーには寿命がある。では、その寿命を超えて使い続けるとどのようなリスクがあるのだろうか?



 モバイルバッテリーで使われているリチウムイオンバッテリーには、先述の通り寿命が比較的長いというメリットがある。また、軽量な割に大きな電圧/電流を流せるというメリットもある。



 一方で、以下のようなデメリットもある。



・衝撃に弱い(強すぎる衝撃は発煙や発火につながる可能性がある)



・熱に弱い(高温になると劣化が早くなる)



・寒さに弱い(低温では本来の性能を発揮できない)



・満充電/過放電の状態が続くと劣化が早くなる



 特に注目したいのが「衝撃に弱い」「熱に弱い」というデメリットだ。たまに「モバイルバッテリーが発煙(発火)した」というニュースを耳にするが、その原因の多くは「バッテリーにかかった強い衝撃(圧力)や高温」だったりする。端的にいうと、衝撃や高温によって蓄積されたダメージが原因で発煙/発火してしまうのだ。



 もちろん、持ち歩いて使うモバイルバッテリーには、衝撃や熱に対する対策も施されている。とはいえ、衝撃や熱によるダメージは少しずつ蓄積されていくことには変わりない。モバイルバッテリーに強い衝撃や熱が加わらないように使うことは、必ず心掛けたい。



 また、以下のような状態になったモバイルバッテリーは直ちに利用を中止して、新しいものに買い換えよう。



・バッテリーがボディーを変形させるほどに膨張している(劣化が相当に進んでいる)



・バッテリーのセル(コア)が大きく傷付くような破損をしてしまった



・新品の時と比べて、充電に妙に時間が掛かる、または妙に早く終わる



 なお、新品や使い始めてから日の浅いモバイルバッテリーでも、製造上の不手際が原因で発煙/発火に至ることもある。このような場合は、消費者庁が公開している「リコール情報」に掲載されることがあるので、随時チェックすることをお勧めしたい。



●使い終わった「モバイルバッテリー」はどう処分する?



 古くなったり大きく破損したりしたモバイルバッテリーは買い換える……のは当然として、問題になるのが古くなったモバイルバッテリーの処分方法だ。



 先述の通り、劣化したモバイルバッテリーには発煙/発火のリスクがある。ゆえに可能な限り早く処分したい所なのだが、その方法はあまり広く知られていない。しっかりとチェックしていこう。



モバイルバッテリーは原則として「ごみ」にできない!



 モバイルバッテリーで使われているリチウムイオンバッテリーは、「資源有効利用促進法」によって自主回収と再資源化(リサイクル)が義務付けられている。ただし、この義務は利用者ではなく、バッテリー(またはバッテリーを組み込んだ機器)を製造する者、または輸入者に対する義務である。



 そのため、国内で正規に流通しているモバイルバッテリーは、原則として製造者/輸入者が何らかの形で回収に応じている(回収方法は後述する)。



 回収に関する法的な義務は製造/輸入者(以下まとめて「メーカー」)にあるのだが、このことに伴い、モバイルバッテリーは原則として「ごみ」として捨てることができない。後述する方法に従って、回収してもらう必要がある。



 先述の通り、リチウムイオンバッテリーは衝撃や熱に弱い。「ごみとして捨てればいいんでしょ?」と、一般の家庭ごみに混ぜて捨ててしまうと、ごみ収集車や清掃工場で発煙/発火/爆発事故が発生する恐れがある。実際、モバイルバッテリーが原因でごみ収集車が全焼する事故も報告されている。



 安全な方法でモバイルバッテリーを処分するのは、ユーザーの責務ということだけは忘れずにいてほしい。



モバイルバッテリーの回収方法



 では、モバイルバッテリーはどうやって回収してもらえるのか。手持ちのモバイルバッテリーによって、方法が異なる(または複数の方法が用意されている)ので、簡単に紹介する。



【方法1:JBRCの回収拠点を利用する】



 先述の資源有効利用促進法の制定に合わせて、バッテリーやバッテリー内蔵製品の主要なメーカーは「JBRC」という団体を立ち上げた。JBRCはバッテリーの回収/再資源化を共同で行うことを目的に設立された団体で、全国の家電量販店や一部の自治体でモバイルバッテリーの回収事業を実施している。



 JBRCのバッテリーの回収事業では、JBRCに加盟するメーカーが製造/輸入したモバイルバッテリーを回収してもらえる。主な加入メーカーは以下の通りだ。



・アイ・オー・データ機器



・アンカー・ジャパン(Anker)



・エレコム



・オウルテック



・グリーンハウス



・サンワサプライ



・磁気研究所



・バッファロー



・マクセル



 自分の使っているモバイルバッテリーのメーカーがJBRCに加入しているかどうかは、JBRCの「会員一覧」で確認できる。



 回収に応じている家電量販店や自治体も、JBRCのWebサイトから検索できる。



 なお、JBRCの回収事業では破損したバッテリー、膨張や水濡れしたバッテリーの回収には応じていない(発煙/発火のリスクがあるため)。また、モバイルバッテリーを分解して取り出したリチウムイオンバッテリー単体での回収も行っていないので注意しよう。



【方法2:自治体の回収事業を利用する】



 JBRCの回収事業は、JBRCに加入しているメーカーのモバイルバッテリーのみが回収対象となる。メジャーなメーカーでも、ADATA(エイデータテクノロジージャパン)やRAVPower(サンバレージャパン)のバッテリーは回収してもらえない。Amazonで安価に販売されている中国メーカーのほとんども、JBRCに加入していないので回収してもらえない。JBRC未加盟メーカーのモバイルバッテリーは、どうやったら回収してもらえるのだろうか?



 まず検討したいのが、自治体(市区町村)によるバッテリー回収事業だ。先述の通り、モバイルバッテリーは原則としてごみとして捨てられないが、自治体が独自に回収プログラムを用意していることがある。それをうまく活用すれば、自宅近隣のごみ収集場、あるいは自治体が指定する場所にモバイルバッテリーを持ち込むと資源として回収してもらえる。



 ただし、モバイルバッテリーを含む各種バッテリーの回収事業を行っている自治体は、それほど多くない。また、JBRCと共同でバッテリーの回収事業を展開している場合は、JBRC未加盟メーカーのバッテリーを回収してもらないこともある。「回収してもらえたらラッキー」と考える程度がいいかもしれない。



【方法3:ごみとして出す】



 モバイルバッテリーは小型のリチウムイオンバッテリーの一種とみなされる。そのため、繰り返しだが、資源有効利用促進法の規定もあって、原則としてごみとしては出せない。



 しかし、自治体によってはモバイルバッテリーをごみとして回収してくれるケースもある。ただし、資源有効利用促進法を鑑みて「極力、JBRCやメーカーのリサイクルに出すように」という注意も行っている。ごみとして回収してくれる自治体でも、ごみとして出すのは“最後の手段”だと考えるべきだろう。



【方法4:メーカーに回収を依頼する】



 上記3つの方法を取ることが難しい場合はどうすればいいのだろうか?



 資源有効利用促進法によって、モバイルバッテリーのメーカーはモバイルバッテリーのリサイクルを義務付けられている。そのこともあって、JBRCに加入していないメーカーも何らかの方法で不要モバイルバッテリーの回収を行っている。



 例えばADATAでは、メーカーのWebサイトで自社製のモバイルバッテリーの回収方法を案内している。



 また、RAVPowerでも、サポートに問い合わせることで回収してもらえるとのことだ。



 一方、Amazonなどで販売している中国メーカーの多くは、日本にカスタマーサポート窓口を設けていない。ゆえに回収を依頼しても、応じてもらうことが困難である可能性が高い。



 いくら安くても、使い古したモバイルバッテリーを回収してもらえないとなると、いろいろ困ることになる。購入する前に「古くなったバッテリーを回収してもらえるか?」と尋ねてみることを強くお勧めする次第である。



 ただ、一部の家電量販店やリサイクル業者では、メーカーを問わずバッテリーを回収してくれることもある。諦めずに、回収してくれる業者を探すことも重要である。


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