藤浪晋太郎が語るメジャー1年目の今「カメラに追い回されることもなく、ストレスフリーで野球に向き合えている」

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2023年04月01日 10:41  webスポルティーバ

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 昨シーズンまで10年間プレーした阪神を離れ、メジャーでプレーすることを選んだ藤浪晋太郎。オークランド・アスレチックスの一員となった今、藤浪は何を思い、何を目指しているのか。記念すべきメジャーデビュー戦が刻々と迫っているなか、藤浪を直撃した。




【日本の焼肉が恋しい】

── メジャーのスプリングトレーニングが始まって1カ月、いよいよ開幕です。いろいろ、慣れてきましたか。

藤浪 そうですね。最初から違和感なくスッと入れたかなと思ってます。こっち(アリゾナ)には日本食のお店もありますし、そういうお店に行けば出汁の利いた和食が食べられますからね。そういう意味では、あまり恋しさはないかな。でも、食べたくなるとしたら焼肉ですね、日本式の焼肉。韓国式のコリアンバーベキューのお店はけっこうあるんですが、日本の焼肉屋がないんです。和食よりも日本で食べられる感じの焼肉とか中華とか、そういうもののほうが食べたくなります。

── 日本の野球人にとっては正月でもある2月1日はまだスプリングトレーニングが始まっていませんでしたが、その日はどんなことを感じていましたか。

藤浪 その日の夜、テレビのスポーツニュースとか(阪神)タイガースの公式インスタを見たら、『キャンプが始まりました』って......ああ、始まってるなと思いながら、そこに自分がいないのが不思議でしたね。日本のプロ野球で10年やりましたから、やっぱり違和感はありました。

── 黄色と緑のアスレチックスのユニフォームはいかがですか。

藤浪 変ではない、という感じですね(笑)。僕は高校(大阪桐蔭)の時もプロに入ってからもずっと地が白っぽいユニフォームでしたから、ハッキリとした色のついたユニフォームは新鮮だなと思うと同時に、違和感はあります。

── 11番は自分で選んだんですか。

藤浪 はい。空いていた11、17、21、23......そのなかから選びました。自分が子どもの時に見ていたエースナンバーって、11番にカッコいいなと思うピッチャーがたくさんいたんです。川上憲伸さん、ダルビッシュ有さん......一度つけてみたいと思う番号だったので11番にしました。もし(阪神でつけていた)19番が空いていたら、迷ったかもしれませんね。

── 以前、オフにアメリカでトレーニングをした時、藤浪さんは「ピュアに野球に向き合える感覚を久しぶりに思い出した」と話していました。今、ピュアに野球に向き合えている感覚はありますか。

藤浪 シンプルに野球ができているかな、と思います。日本と違ってメディアも少ないですし、そこまで注目度もあるわけじゃない。こっちで自分のことが報道されることはほとんどありませんし、カメラに追いかけ回されることもなく、ストレスフリーな感じで野球に向き合っています。

【藤浪晋太郎像をリセットしたかった】

── メジャーでやってみたいと思ったきっかけは何だったんですか。

藤浪 もともと高校からプロに入った時、しっかりと活躍して、いずれは行ってみたいなとは思っていたんですが、ダルビッシュさんと一緒に自主トレをさせてもらったり、いろんな方に「環境を変えて挑戦してみたら」と言ってもらうことが多くて、だんだん気持ちがそちらへ傾いていきました。

── 藤浪さんのなかに"変えたい環境"というものがあったとしたら、何をリセットしたかったのでしょう。

藤浪 うーん、難しいですね......一番は"藤浪晋太郎像"をリセットしたかったのかもしれません。おそらくタイガースで投げていたら、よほどのものを見せない限りは一軍半のピッチャーだったと思うんです。一軍で投げていてもローテーションの谷間でポッと投げたり、中継ぎや敗戦処理で投げたり、そういうピッチャーでしかいられなかったでしょう。そういうみんなが思う自分に対する評価をパッとリセットできるとしたら、球団を変えるか、アメリカでプレーするしかなかったのかな......というところはありました。

── それは周りの先入観と藤浪さんのなかにあった手応えとの間にギャップがあったということなんでしょうか。

藤浪 めちゃくちゃギャップがあったわけではないんですが、ある程度はよくなっているのかなという自分の感覚のなかで、そうした先入観はやっぱり覆せないなと思ったので、変えたかったとしたら環境よりも評価だったんでしょう。タイガースの投手陣も充実していましたし、自分が年間を通してローテーションに定着するのは厳しいだろうなと思っていましたからね。




── よくなっているという感覚を支えた技術的な肝はどこにあったんですか。

藤浪 自分の悪癖が出ないようにするためには、軸に絡んだ投球フォームで、背負い投げのイメージを持って投げるという、高校の時から10年間、変わらない基本の軸があります。そのうえで、日本とアメリカでは配球のパターンが違ったりするので、そのあたりを生かしていければ、自分らしいピッチングができるんじゃないかなと考えています。勝てなかった時期は、技術的に安定しなかったと思っているんです。今は自信満々というわけではありませんが、それなりにいいものを出せるんじゃないかなと思ってやっています。

【大谷翔平に対して初球は?】

── メジャーリーグで野球をするとなると、想像を超える怪物みたいなとんでもないバッターをねじ伏せてやりたいという気持ちと、そういう怪物にやっつけられてみたいという気持ち、どちらが強いものなんですか。

藤浪 ああ、それは両方持ち合わせていますね。そういうすごいバッターと対戦して、そのすごさを間近で見せつけられたい気持ちもありますし、抑えたいという気持ちもあります。

── オープン戦で初めて投げた試合、投げ合う相手は大谷翔平選手でした。メジャーのユニフォームを着て対峙した時、どんな感情が湧き起こってきましたか。

藤浪 試合なので、みなさんが思うほど感慨深いものはありませんでしたよ。まだスプリングトレーニングのいわば練習試合ですし、たまたま当たったなという感じです。

── 今の藤浪さんにとって、大谷選手はピッチャーとして投げ合う相手なのか、対戦するバッターなのか、どちらですか。

藤浪 どっちもあるかなという感じです。どっちと対戦する可能性もありますからね。バッターとして対戦したら、展開次第なのでまだ何とも言えません。大谷のデータもまだ見ていませんし、やがて対戦することになったら、データをベースにしながら組み立てをつくっていきます。大谷の弱点だったり得意球種だったり、カウントで取り方だったりのデータを頭に入れたうえで、マウンドで判断します。

── 初対決の初回、「初球は真っすぐで」というわけではないんですか。

藤浪 別にそんなこだわりはないですね。大谷が初球、真っすぐを張っているなら、何もそこへ真っすぐを投げる必要もないですし(笑)。

── 今の藤浪さんを支える想いを表現するとしたら、どんな言葉が思い浮かびますか。

藤浪 やっぱり野球が好きだということですかね。自分は単純に野球が好きですし、野球が楽しいなって今でも思います。野球を始めて20年超えましたけど、野球が楽しいし、野球が好きだという想いが、僕の原動力になっています。

【英検は準2級を取得】

── ルーキーの時、藤浪さんに「プロで勝負する武器は何ですか」という質問をしたら、「信念を曲げないこと。軸がブレないよう、最後に大切にするのは経験であり信念です」と話していました。今、同じ質問をしたら、メジャーで勝負するための武器は何だと思いますか。

藤浪 ルーキーの時は自信があったんでしょうね。やってきたことが間違ってないという信念があるから、そういう発言になったんだと思います。でも、今も信念は大事だと思いますね。昔の答えを聞いて、あらためて信念は大事だと思いました。自分の感性で野球をするのは大事なことだと、こっち(メジャー)に来たからこそ思います。

 日本から見ていたメジャーリーグと、実際に投げて感じるメジャーリーグのイメージはまったく違うんです。だからこそ感じたことを大事に、「自分はこうしていく」という信念を曲げない。柔軟に対応していくことも大事ですが、幹の部分は曲げないようにしていけたらなと思いました。10年前に比べればいろんな経験をしてきましたから、信念という自分の幹に、自分が信じる「これをやっておけばいい」というものがどんどん加えられている。10年前と言葉は同じでも、中味は同じものではないはずです。

── もう28歳か、まだ28歳なのか、どちらですか。

藤浪 両方ですかね。10年は早かったなと思う気持ちもありますし、10年もやったけどまだ20代かと思う気持ちもあります。

── 以前、ストレスがたまる夢をたくさん見るとおっしゃっていましたが、今はどうですか。

藤浪 夢は見ますけど、そんなにストレスがかかる感じではないですね。英語に困る夢とかは見たりしますけどね(笑)。

── 入団会見の時の英語でのスピーチは流暢でしたが、英語には困っていませんか。

藤浪 そこは、簡単にはしゃべれないもんだなと実感してます。そこそこ頑張れば話せるかなと思っていましたが、わかる単語が出てこないと何の話をしているかくらいのことしかわかりませんからね。もっともっと勉強しないと、ですね。

── 中学3年の時、英検を受けたんですよね。

藤浪 準2級は持っています。

── それはすごい!

藤浪 いやいや、勉強すれば誰でもとれるんですよ(笑)。

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  • 邪魔でしかない阪神ファンや、日本特有のチームプレーを強要されないから、彼はメジャーで才能がようやく開花すると思ってる。
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