
化粧品を大量買い、思わぬ散財
勤務先がいち早くリモートになり、家で仕事をしていたマサミさん(38歳)。ひとり暮らしのため、気ままな生活が身についてしまったという。「仕事ももともとフレックスですし、会社から監視されることもなかった。会議はたびたびありましたが、TシャツでもOKでした。とにかく一定の仕事さえしていればいいという状態だったんです。うちの会社、まずは社員の体調が優先ということで、入社以来、初めていい会社だなと思っていました(笑)」
ここ1年半ほどは月に2〜3回ほど出社していたがマスク着用、食事中の私語厳禁で、彼女も自席でささっとランチをすませていた。
「昨年終わりごろから順次、出社するようになりました。私のいる部署も、今後はできる限り出社という方向になって。さらにマスクも任意となったので、社外の人との交流もだんだん元のようになりつつあります。もちろん状況を見ながらですが、私もマスクをはずしたほうがいい場面が増えてきたんですよねえ。ところが3年、化粧もしていないのでちょっと焦りました(笑)」
つい先日、デパートの化粧品売り場に立ち寄った。そもそも化粧ってどうやってやるんだっけというほど何もかも忘れていたというマサミさん。
「洗顔して化粧水つけて美容液つけて、まではわかるんですが、もともとあまり化粧に興味があるほうでもなかったので、その後はどうやるんだっけと。今の流行もわからなくなっているし、とあるブランドでメイクの仕方を教わってきました」
その結果、下地にファンデーション、アイブロウやマスカラやシャドウ、チークに口紅と数万円を散財してしまったと笑う。
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散財したのは痛手だが、気持ちが華やいだのはうれしかったと、彼女は春らしい明るいピンクに彩られた口元を見せてくれた。
まるで○○と、厚塗りを同僚に指摘され
化粧方法がわからなくなった、ナチュラルメイクができなくなったという笑い話のような話も多々ある。「先日、久々にバッチリメイクで会社に行ったら、同僚から『ちょっとヤバくない?』と指摘されてみんなで大笑いしちゃいました」
そう言うのはタカエさん(36歳)だ。仕事が終わってから、友人たちとの飲み会があったため、たまにはバッチリメイクでと思ったのだが、「気合いが入りすぎた」のだという。
「化粧しない日々が長すぎて、鏡を見たら、シミやしわが気になってしまって。ファンデーションをたたき込んだあとコンシーラーで丁寧にシミを消し、さらにパウダーで完璧に仕上げたつもりだったんですが、ただの厚塗りと化してました。同僚に『“ぬりかべ”じゃないんだから』と笑われて、鏡を見て自分も笑いました。チークも濃すぎたんですよね」
以前からメイクが大好きで、周りからもメイク上手と言われていただけに、勘が鈍ったとタカエさんは笑う。
「それほどメイクをしない日が多かったということですよね。メイクだけじゃなくてファッションにも疎くなってしまった。楽しくなかった3年間だったなと改めて思います。
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メイクが嫌いでもともとしなかったという人はいざ知らず、メイクが好きだった人ももう一度、改めて“勉強”し直さなければならない状態のようだ。
今後、また再燃するかもしれないコロナ禍だが、とりあえずはここで一段落と考えていいのだろうか。
「私自身は、人が密になる場所ではマスク着用を心がけるつもりです。でも換気がじゅうぶんなされている場所や屋外では、もう着けていません。友人は花粉症がひどいので、まだ当分つけると言っていますが、それぞれの事情に合わせればいいだけの話。また楽しくメイクについて友人たちと情報交換できるようになるといいなと思っています」
メイクをするようになって、「手順を忘れていたことにびっくり」「メイクは日常のささやかな気分転換だと改めて思った」という声も聞く。このまま終息してくれればと誰もが祈るような気持ちだろう。
亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))