自立した生活が困難になるのは85歳!? 80歳になったら手を振って歩き 良く噛む事をこころがけましょう

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2023年04月04日 07:30  JIJICO

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■ 85歳以降は男女ともに自立生活困難者が増える?


2000年に介護保険制度が出来ました。自立生活が困難になった人を支援する制度です。利用開始年齢は原則65歳からですが、特定の疾病があれば40歳から利用出来ます。厚生労働省の「平成29年度介護給付費等実態調査の概況」を見ると、74歳までは男性・女性の利用状況がほぼ同率です。利用状況を数字で表すと下記の様になっています。


  年代        男         女
 65歳〜69歳   11.4万人     9.25万人  
 70歳〜74歳   16.1万人    17.0万人
 75歳〜79歳   24.2万人    36.2万人
 80歳〜84歳   34.5万人    73.5万人
 85歳〜89歳   35.1万人    99.7万人
 90歳〜94歳   20.0万人    76.1万人
 95歳以上      5.6万人    34.2万人
 (平成29年(2017年)11月審査分)


男性の平均寿命は81.47歳(2022年7月厚生労働省)で、78歳から86歳くらいの9年間が平均的な寿命と考えられますので、利用状況も、平均寿命にあっていると思われます。女性の平均寿命(2021年)は、87.57歳です。84歳から92歳の9年間が平均的な寿命と考えられますので、80歳代以降の利用者は、男性に比べて女性の方が2倍から3倍以上多くなっています。その女性に目を向けると、75歳〜79歳の利用者と比べ、80歳〜84歳が2倍強、85歳〜89歳が3倍近くになっています。介護保険を利用する人の理由は様々ですが、80歳代になったご本人またはそのご家族が、日常生活を普段通り送る事に対して不安を感じ、制度を活用する様になっているのではないかと思われます。調査概況を見ると、男女とも利用者のピークは85歳から89歳です。自立した生活が困難になる人は85歳以降が多いのではないかと類推します。


■ 80歳代は毎日適度な運動が必要!?


厚生労働省は、65歳から74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分しています。平均寿命が延び高齢者が増えるに従い、高齢者の区分分けを変更しようという動きも出て来ました。日本老年学会・日本老年医学会では、


65−74歳 准高齢者
75−89歳 高齢者
90歳以上 超高齢者


という区分分けを提案しています。両学会では、高齢者の心身における健康に関するデータを検討した結果、「10−20年前と比べ、5−10歳程度の若返りが生じている(加齢に伴う身体機能変化の出現が遅れる)」事が判明したと言っています。90歳以上の人が増加している事は、健康大国ニッポンを象徴しています。人生100年時代が近付きつつあります。しかしながら、少子化が進み、介護の担い手は今後ますます減少します。介護される事を最小限に留めて自立した生活を続けるためには、筋力低下を防ぐための運動が必要です。私は、40年以上に及ぶ臨床経験から、年代毎に必要な運動量を下記の様に考えています。


年代       週       日
60歳代前半  週2日間  1時間〜1時間半
60歳代後半  週3日間   50分〜1時間程度
70歳代前半  週4日間   40分程度
70歳代後半  週5日間   30分程度
80歳代     週6日間   20分程度
90歳代     週7日間   15分程度


上記は、筋力低下を防ぐために必要な最低限の運動時間です。80歳を迎えると、心肺機能が一段と低下して、長い時間運動出来なくなります。若い時の様な運動量にすると、すぐに筋肉疲労が蓄積して運動が困難になり、関節に痛みが出やすくなります。また、筋力が向上する運動をしていても、持続しません。そのため、毎日こまめに運動する必要が出て来ます。日本老年学会・日本老年医学会が、75−89歳を高齢者として区分するのは、この年代が近似した身体データだからだと思われます。75歳以降から、毎日のようにこまめな運動を心がける事が大切であると考えています。
70歳代に関する事は、JIJICO内にあるコラム
「78歳は体力低下の転換期!?70歳を過ぎたら日常生活動作と深呼吸を大切に」
40歳から60歳代に関する事は、JIJICO内にあるコラム
「人生100年時代を生きる体力の転換期は62歳?体力低下を防ぐ秘訣はあるのか!?」
20歳から30歳代に関する事は、JIJICO内にあるコラム
「青春時代の体力転換期は26歳?体力低下を防ぐ秘訣はあるのか!?」をご参照戴きたく思います。


■ 筋力低下防止には毎日の歩行が重要 歩くときは手を振る事が大切?!


運動の基本は、歩く事です。歩く事は、筋力低下防止に有効ですが、年代が進むに連れ、歩く速度が遅くなっている事を、誰しも実感している事と思います。自分で思っていた時間より徐々に時間を要するようになりますので、思う様に体が動かない事から、こころに焦りを生じやすくなる年代でもあります。
この年代に特徴的な事は、


1. 早く歩けない事が分かっているので、気持ちがせき急いで歩こうとする
2. 早く歩こうと思っても足元がおぼつかないため下を向いて歩きがちになる
3. 筋力が低下しているため上体を支えられず歩いている時の姿勢が悪くなる
4. 下を向いて歩きがちになり歩行時の視野が狭くなる
5. 前傾姿勢になって歩くため呼吸が浅くなる


という傾向があります。ご近所や買い物に出かけるだけで疲れを感じやすくなるのは、上記の様な事が関係していると考えます。80歳代になると筋力低下とともに心肺機能も低下しますので、筋力をアップしようと思って歩く事を心がけても、姿勢が悪ければ、逆効果になりかねません。まずは、頭を上げてゆっくり呼吸をしながら歩く事が大切です。そのためには、手を振って歩く事が対策になります。手を振って歩くと、自然に頭が上がります。頭を下げたままで手を振る事は困難ですので、手を振って歩き出す前に立ったままで手を振ってみて、その感覚を覚え込ませてみたら良いと思います。頭を上げると、呼吸がしやすくなります。また、視野が広くなりますので、こころに余裕が出ます。急いで歩こうとする気持ちが少しずつ是正され、適度な速度で歩く様になると思います。手を振るためには、手に物を持たないで歩く必要があります。手荷物は背中に背負うなどの工夫が必要です。手を振る角度は、大きくする必要がありません。体のバランスが取りやすい角度を各人で探してみて戴きたく思います。下を向いて歩いている時は、足元の先1〜2mくらいしか見ていません。手を振ると3〜5mくらいに広がります。正面を見て、全方位に前方を見ながら歩く事が理想ですが、背筋を伸ばす事が難しい年代でもあります。ひとまずは手を振って前を向いて歩く事が改善の第1歩です。正しい姿勢で歩けば、歩行するために必要な均整の取れた筋力を獲得出来ると思います。呼吸がしやすくなりますので、歩行時間を長くしても、疲れにくくなると思います。


■一つ一つの動作を確実に行う事がこころの安定に繋がる?!


80歳を過ぎた患者様やヨガ教室の生徒さんに、80歳代になってから感じている事を伺うと、


1. 一つ一つの動作が遅くなった
2. 一つ一つが的確に出来なくなった
3. 筋力が低下した
4. 呼吸が浅くなった
5. イライラしやすくなった


等のお言葉を頂戴します。身体能力の低下が背景にあると考えます。特に基礎疾患をお持ちの人は、75歳を過ぎた頃から上記の事を感じるようです。80歳代の人は、若い頃に比べて身体能力が低下している事を自覚していますが、「経験知」が高いので物事に動じなくなり、様々な出来事に対して予測が出来ますので、瞬時にゴールが見えるようになります。そのため、早く物事を完結出来ない事に対して苛立ちを覚えるようです。その事を自覚している人は、一つ一つの動作を確実に行う様にするとイライラが抑えられると言っています。動作が遅くても、「経験知」を生かして予測しながら行動する事により、最短で物事を処理する事が可能です。一つ一つを的確に行う事でこころに余裕が生まれ、深い呼吸が得られる様になります。日常生活の「所作」を大切にし、「一つ一つ行っている日常の何気ない動作をしている時、一つの動作が終わってから次の動作の事を考え、動き始める」事が、苛立ちを生じさせない一番の近道です。次の動作に移る時、息が浅いまたは止まっている様だと、疲れやすくなり精神が不安定になります。一つ一つの動作時に、呼吸をしているかを気にしてみて戴きたく思います。年長者からお話を伺っていると、こころ豊かな80歳代を送る秘訣は、「先を急がず、目の前の事を一つずつ的確に処理して行く事」ではないかと感じております。


■食事をするときは鼻から息を吐きながら良く噛む事が大切?!


 
日本人は熱い物を好んで食べます。熱い物を食べる時は、空気を一緒に吸い込み、熱を冷ましながら飲み込みます。「ずずずずー」と音を出しながら飲み込むのは欧米では失礼な行為ですが、日本人がそう考えないのは、皆熱々の料理を食べたいからでしょう。空気を呑み込む食べ方なので、急いで熱い物をたくさん食べると「げっぷ」が出ます。お下品な行動ですが、料理がおいしかった証拠でもあります。しかしながら、食事の仕方はさておき、それもこれも、丈夫な歯があればこその食事です。80歳を過ぎると、歯が少なくなります。2016年に厚生労働省が行った全国歯科疾患実態調査における一人あたりの歯の数(一人平均現在歯数)は、高年齢層ほど値が低くなります。75歳以上の人の平均値は15.7本で、本来持っている歯の数(28本)の半数近くが失われています。20本以上の歯を持つ人は46%で、約3割の人が総入れ歯を使っています。歯が少なくなると、思った様に食事を楽しむ事が出来なくなります。物を噛む回数も減少傾向になります。噛む行為は、唾液を誘発します。唾液が出ると、食道が潤い、胃液が出て来ます。消化が促進される様になっていますが、噛む行為が少ないと消化液が出て来ないので胃に入った物が大きいと、消化に時間がかかり、内臓が疲労します。歯の喪失は、健康に大きな影響を及ぼしています。口内環境を整える事は健康維持に重要ですので、定期的に歯科医師と相談する必要があります。食事をする身体環境が整っている場合、熱い物を丸呑みしないための工夫が必要です。対策として、「口に食物を入れたら一口ごとに鼻から息を吐き出す事」が考えられます。その事により、次の様な効果が期待出来ます。


1. 口を開かないで噛む事に集中出来る
2. 鼻で食物の臭いを感じるので 食欲が増進して 噛む行為に繋がる
3. 良く噛む事により 消化液が増加する
4. 噛む行為は脳の活性化に繋がり 認知力の低下防止に役立つ
5. 噛む行為は表情筋低下防止に繋がるので 豊かな表情を維持出来る


「食事をしている時鼻から息を出す事」を習慣付ける事は、心身とも安定した生活を送るために必要な事ではないかと考えます。また、高齢者に良く見られる誤嚥性肺炎の防止にも役立ちます。
食事について詳しくお知りになりたい人は、清野鍼灸整骨院ホームページ「くらしと養生」をご参照戴きたく思います。清野が呼称する養正(ようせい)治療は、日常の適正な生活です。くらしと養生
 


■鍼灸治療やヨガ(YOGA)治療は80歳代の自立生活支援に最適です


80歳代の身体機能維持向上に鍼灸治療は、とても強い味方です。基礎疾患をお持ちの人や運動に制限があるという人も、ご相談頂きたく思います。鍼灸治療は身体の外側から内臓機能に働きかける事が可能な、「内外科治療」です。薬物治療(内科治療)で効果を得られない人や外科手術(外科治療)をしても痛みが消失しない人は、是非鍼灸治療(内外科治療)をお試し戴きたく思います。お近くの鍼灸院または鍼灸師が勤務している医療提供施設にご相談ください。身体機能や心肺機能の向上に、ヨガ(YOGA)は最適です。
ヨガを行う際は、


1.無理をしないで行うこと
2.ゆっくり行うこと
3.呼吸とともに行うこと


という三原則があります。運動とは性格を異にしますので、80歳になってからでも始める事が出来ます。30分以上行っても関節を痛める事はありませんので、運動が苦手という人におすすめです。ご希望の人は、清野メディカルヨーガもしくはお近くのヨガ教室にご相談戴きたく思います。



(清野 充典・鍼灸師)

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  • 認知機能・筋力の衰え等は若い頃からの過ごし方で緩やかに。朝夕30分の散歩・バランスの良い食事・読書習慣等。毎日ピーマン喰って抹消血管丈夫化。106歳迄
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