◆ 猛牛ストーリー【第72回:紅林弘太郎】
2023年シーズンはリーグ3連覇、そして2年連続の日本一を目指すオリックス。今年も監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。
第72回は、開幕一軍入りを逃しファームで調整中の紅林弘太郎内野手(21)です。
4年目の今季、3年連続のレギュラーを目標に臨みましたが、打撃不振に加え、オープン戦で急成長した2年目の野口智哉選手(23)に遊撃の定位置を奪われる形でファームへ。なかなか結果が出ませんでしたが、ここ3試合では13打数6安打と打撃も上向き。一軍から呼ばれる日に向け調整を続けています。
◆ 状態は上向き「早く上げてほしいですね」
「あれだけ同じポジションの野口さんが打っていたら、僕が監督でも(野口さんを)使います。そういう世界なので、それはしょうがないんで。一年は長いので、開幕一軍を逃したことは切り替えて、頑張っています」
二軍の本拠地・舞洲で約3週間ぶりに会った紅林は、明るい表情だった。
3月19日までのオープン戦で打率.222と低迷。打率.364に3本塁打を放ち、内外野も守れる野口の後塵を拝す格好となって、二軍行きを命じられた。
「打ったら上げてやると(監督から)言われました。野口さんの調子がいいから、打たないと試合に出られません。僕自身の問題なので、向き合います」と臨んだファーム。
打率1割台が続いていたが、4月6日の中日戦(ナゴヤ)から9日の阪神戦(鳴尾浜)までの3試合で2安打ずつを放ち、13打数6安打と調子を上げて来た。
「そんなに打っているんですか。早く上げてほしいですね。だいぶ悔しい思いをしているんで、早く一軍でプレーしたいですね」
ファームでは「まず、ちゃんとバッティングを直すところから始めました」という。
キャンプでは踏み込む左脚が開いてしまい、外角のボールについていけない欠点を直すことを意識して練習を繰り返していたが、いま心掛けているのは「初球から打ちにいくこと」だった。
「去年落ちた時もそうだったんですが、ボールを見てしまっていたのを、打ちにいってからよくなった。(一軍では)下位打線なので、初球から打ちにいったらいけないのでは、と変に考えてしまって。そんなことを考えていたら、一生上位(打線)を打てないですし。そこはなんと言われようと、貫き通してやっていったら結果も出ると思うんで。今はそれで結果が出ているので、継続したいと思います」
いくら自身の調子がよくても、一軍のチーム事情によってすぐに昇格することが出来ないことは百も承知だ。
◆ 「やっとテンションが上がってきました」
同期入団で仲の良い宮城大弥は、3月27日の京セラドーム大阪にて、紅林について「既読無視されていましたけどね。まあ、今、行方不明でどこにいるのかわからないですし。焦っているのかなとも思いますが、彼にとっていい焦りであってほしいなと思います」と語っていた。
続けて、「早く戻って来てほしい部分はありますが、彼なりの調整があると思いますし、別に急いだからと言って(それが)正解というわけでもないと思います。僕もそうですが、先を見通して、一緒に頑張れたら」と語り、独特の言い回しで盟友の現状を案じていた。
そんな宮城の真情があふれたのが、3月31日のこと。ウエスタン・リーグのソフトバンク戦(杉本商事舞洲BS)で調整登板をした翌日の夜、自身の『Instagram』の投稿である。
舞洲の球団施設内のトレーニングルームで鍛える紅林の様子とともに、「遅れましたが昨日から開幕!! 今年も頑張るぞ」と記し、さらに小さな文字で「京セラで会いたかったぞ」と添えた。
復活を願う想いは、きっと紅林に届いたことだろう。
「まだ10試合ちょっと。あと130試合以上残っています。結構落ち込んでいたんですが、やっとテンションが上がってきました。早く宮城の後ろで守りたいですね」と紅林。
“みやくれコンビ”復活へ、前を向く。
取材・文=北野正樹(きたの・まさき)