強くなくても部員が増える、その理由|四谷外苑ユナイテッド

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2023年04月16日 11:14  ベースボールキング

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東京都新宿区を活動拠点にしている『四谷外苑ユナイテッド』。少年野球人口の減少が叫ばれるこの時代に部員が増えて続けている。今どき、子どもが増え続けているチームにはどんな魅力があるのだろうか? 練習終わりに子どもを迎えに来たお母さんのお話を通じて、その要因を探ってみた。



【お母さんが語る入部の決め手】
このチームにお父さんコーチの姿が多いことは前編でも書いた。その反面、少年野球の現場でよく目にする、「練習を見守るお母さん」の姿が見えない。練習の途中に見に来て途中で帰ったお母さんが3人いたくらい。これも松田康一代表の意図するところでもあるという。
「保護者の負担を少なくすることは当然意識しています。試合のときは少しお手伝いをお願いする場合もありますが、当番制などはありません。休みの日に子どもをチームに預けにいく、そんな感覚で気軽に入部いただいて全然OKだと思っていますから」



練習終了後、息子さんを迎えに来たお母さんに、なぜこのチームを選んだのか、お話を聞かせて頂いた。
「この町に住んでいて、ユナイテッドのユニフォームを着ている子たちが生き生きしていて、すごく礼儀正しいなと以前から思っていました。実際に体験会に参加してみたら、コーチの皆さんの子どもたちへの振る舞いが紳士的でいいなと思いました。『おらぁー!』みたいな感じだったらどうしようと思っていたので(笑)。
子どもへの声かけ一つを見ても、やる気にさせる声かけだったり、頭ごなしに否定をしないとか、大声を出さないとか、子どもへの接し方をきちんと学ばれているんだなと感じました。
うちの子は体験会では緊張していたんですけど、コーチの皆さん同様にチームの子たちもみんな優しくて、『緊張しなくて大丈夫だよ』って優しく声をかけてくれたり、『一緒にやろうよ』『練習試合見においでよ』って誘ってくれたり。そういうチームの雰囲気、文化がすごくいいなと思いましたし、このチームなら安心して子どもを預けられるなと思いました」



また、保護者の負担の少なさという点もやはり大きかったという。
「保護者が係や当番をやらなくていいというのも、今風でいいなと入部の決め手になりました。うちはきょうだいがいるので、この子の野球にだけ親がつきっきりになってしまうと、他の子の時間が取れなかったりしますし。ここだったらいいなと思いました」


【時代に求められていることを当たり前にやる】


元々、4つの区のいくつかの小学校から毎年30人程度の部員が集まっていたチームだが、現在の部員はさらに増えて40人。今もポツポツと増え続けている。
近隣小学校でビラをまいて勧誘をしたり、1、2年生の部費を無料にしたり、色々な試みが成果を現しはじめているという。だが、コロナ禍で子どもたちがずっと体を動かしていなかったことも要因の一つではないかと松田代表は話す。
「親御さんも何かしら子どもにスポーツをさせたいという思いがあるのだと思います。この辺りは警察があるので剣道、柔道も人気なのですが、『何かチームスポーツを』と考える親御さんにはサッカーか野球が選択肢となると思います。そこで、保護者の負担を少なくしているうちのチームを選んでもらえているのかもしれませんね」



以前に、悲願の全国大会初出場を果たした少年野球チームの代表の方にお話を聞いたことがある。
「翌年は新入部員が増えるぞ!」と期待したが、新入部員はまさかの0人。その原因は、「あそこは強いから厳しいに違いない」「親の負担も大変に違いない」と噂されて敬遠されたからなのだという。
強ければ部員が集まっていた時代は終わっている。逆に強くなくても部員が増え続けているチームも多い。四谷外苑ユナイテッドもそんなチームの一つだ。
特別なことをやっているわけではなく、今の時代に求められていることを当たり前にやっているにすぎない。それでも部員は増えている。
部員減少に悩むチームにはぜひ参考にしてほしい。(取材・文・写真:永松欣也)

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