『ぼっち・ざ・ろっく!』と『チェンソーマン』平成・令和の音楽対決? 世代を分けた「楽曲」へのこだわり

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2023年04月21日 07:01  リアルサウンド

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 最近のアニメシーンを盛り上げた作品といえば、多くの人が『ぼっち・ざ・ろっく!』と『チェンソーマン』を思い浮かべるだろう。片や少女たちの青春を描いたバンドアニメ、片やダークな世界観のバトルアニメと、作品の方向性は真逆だったが、実はそこには“音楽のこだわり”という共通点があった。


 まず『ぼっち・ざ・ろっく!』は、極度の人見知り少女・後藤ひとりが「結束バンド」というバンドを組み、友情を育みながら成長していく物語。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーを元ネタとしたキャラクター名からも分かるように、“あの頃”の邦楽ロックを強く意識した作品だ。


 そうした原作の設定に加えて、アニメ化にあたってコンセプトがさらに明確となった。主題歌の作詞・作曲には、KANA-BOONの谷口鮪やthe peggiesの北澤ゆうほといったロックアーティストたちの名前が並んでおり、“下北沢を舞台としたバンドもの”という設定に命を吹き込んでいる。


 さらに最終回のエンディングとして、「転がる岩、君に朝が降る」のカバーが使用されたことも話題を呼んだ。この曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONが初の海外公演として、韓国のフェスに参加した際に生まれた楽曲。原作者・はまじあきのツイートによると、「ぼっちちゃんの事をを考えた時にこの曲しかない!と思い選ばせて頂きました」(原文ママ)とのことで、邦楽ロックへの深い思い入れが示唆されていた。


 アニメを通して令和によみがえった邦楽ロックの力は、多くの人の心を動かすことに。 『ぼっち・ざ・ろっく!』が平成を代表するバンドアニメ『けいおん!』に比肩する作品となったのは、間違いなく“音楽の力”が影響しているはずだ。


 そして同じく昨年10月にスタートしたアニメ『チェンソーマン』も、音楽によって人の心を動かした作品だった。


 OP主題歌としては、米津玄師の『KICK BACK』を使用。ED主題歌は毎週変わり、そのラインナップにはano、Eve、Aimer、女王蜂、PEOPLE 1、Vaundy、TOOBOEなど、今の音楽シーンを代表するアーティストが名を連ねていた。たんなる話題性だけでなく、各アーティストが『チェンソーマン』と向き合った楽曲作りを行っていたことも、特筆すべきポイントだろう。


 かくして音楽面に力を入れていた『ぼっち・ざ・ろっく!』と『チェンソーマン』だが、両作品に大きな違いが存在することも否定できない。前者は邦楽ロック直撃世代、後者はTikTokユーザーと、全く別の層を夢中にさせていたからだ。


平成世代の『ぼっち・ざ・ろっく!』、令和世代の『チェンソーマン』

 『ぼっち・ざ・ろっく!』のブームを観察すると、近年のアニメとして異質な動きがあったように感じられる。関連CDなどのパッケージメディアが飛ぶように売れていたのだ。


 1月4日に公開されたBillboard JAPAN週間アルバム・セールス・チャート「Top Albums Sales」によると、結束バンド名義でリリースされたフルアルバムは、初週7万3000枚以上を売り上げて首位を獲得していた。


 また、DVDやBlu-rayなどの売上が驚異的な数字を叩き出したことも示唆的だ。現在はひと昔前と比べてパッケージメディアが売れない時代と言われているが、邦楽ロックのCDを買っていた世代がファンとなったことで、異例のムーブメントを生じさせたのかもしれない。


 他方で『チェンソーマン』はDVDやBlu-rayの売上こそ目立たなかったものの、TikTokのユーザー層が熱狂的にハマった作品だった。


  作品名をハッシュタグで検索した際の視聴回数を見てみると、「#チェンソーマン」で2.1億、「#chainsawman」では22.6億。これは『ぼっち・ざ・ろっく!』はもちろん、他の人気アニメと比べても群を抜いている数字だ。


 また楽曲ごとのハッシュタグで調べてみても、「#kickback」の886万視聴など、いずれも大ヒットばかり。とくに顕著なムーブメントを呼んだのは、第7話のエンディングに使用されたanoの「ちゅ、多様性。」だった。


 同楽曲はTikTokで再生回数1億回を達成し、“ゲロデューダンス”動画のブームを呼ぶことに。ちなみに音楽配信サービス「AWA(アワ)」の“12月にTikTokで話題を集めたプレイリスト”にも、数あるうちの1曲として同楽曲が選ばれていた。


 両作品の売れ方を見ると、いわば平成世代の『ぼっち・ざ・ろっく!』、令和世代の『チェンソーマン』とでも表現したくなる。


 ただ、どちらにしても音楽の力によって、アニメに興味がない層を取り込むことになったのは間違いないだろう。今後、続編が制作された際には、どんな現象を巻き起こしてくれるのか楽しみだ。


このニュースに関するつぶやき

  • 中には、OPやED聴くために流し見してるアニメあるけどね。
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