漫画家に負担が大きすぎる週刊連載は本当に必要か 部数減少が続く少年漫画誌はどうなっていく?

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2023年04月26日 07:01  リアルサウンド

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 現在、刊行されている週刊少年漫画雑誌は「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」「週刊少年チャンピオン」の4誌である。これらを総称して“4大漫画雑誌”“4大週刊少年誌”などと呼ぶことがある。2023年2月27日に日本雑誌協会が発表したデータによれば、それぞれの漫画雑誌の発行部数は以下のようになっている。


「週刊少年ジャンプ」 …約126万部
「週刊少年マガジン」 …約44万1000部
「週刊少年サンデー」 …約17万1818部
「週刊少年チャンピオン」 …部数未詳(日本雑誌協会にデータがないため)

※いずれも、2022年10月〜2022年12月の3ヶ月毎の平均印刷部数。


 かつて「ジャンプ」は1994年12月に発行された1995年新年3・4合併号で約653万部という歴史的な発行部数を記録したことがあったが、約28年が経ち、その5分の1以下に落ち込んでいる。それでも毎週100万部以上を発行しているのは驚異的だが、週刊少年漫画雑誌の需要そのものが激減していると見て間違いない。


週刊連載を読者は求めているのか?

 週刊連載はいち早く続きを知りたい読者にとっては美味しいシステムであったが、漫画家に負担が大きすぎるのがネックである。部屋に長時間籠って仕事をするため、肉体的にも精神的にも辛い。毎週締切がくるプレッシャーも大きい。実際に漫画家が精神を蝕まれた、過労で倒れたなどの話は多く聞く。さらにアシスタントを3〜4人雇い、仕事部屋を借りるとなれば、それだけで毎週の原稿料は消えてしまう。


 それでも、雑誌も単行本も売れていた時代は良かった。週刊連載のメリットはすぐに単行本が出るため、印税が入るスピードも早い。大手であればかつては新人の単行本でも初版3万部、多ければ5万部ということも珍しくなく、漫画家は印税で連載の赤字を補填できた。しかし、現在は単行本の初版が1万部を切ることはザラで、3,000部という例も聞く。これでは印税で赤字が補填できず、漫画を描けば描くほど赤字になりかねない。


 90年代までは、漫画を一秒でも早く読むべく雑誌の発売日に子どもたちが書店に押し掛ける光景が見られた。現在はどうだろうか。『ONE PIECE』などは雑誌よりも単行本の初版部数の方が多い状態だし、他の漫画も然りである。


 こうした状況において、週刊連載は時代に合わなくなったシステムという話もあり、そもそも必要かどうかという意見も上がる。


 雑誌は人気漫画を目当てに買った読者が新人の漫画を読んでファンになり、新人の単行本も売れるという好循環があり、格好の宣伝の場であった。


 そのため出版社は苦しい中でも雑誌を維持していたのだが、もはや雑誌にかつてほどの影響力はないとみていいだろう。昨今の漫画のヒットの法則といえば、アニメ化を機に単行本がバーッと売れたり、漫画好きのインフルエンサーや芸能人の紹介で重版がかかる例が多い。対して、雑誌がきっかけになることは稀と言わざるを得ない。


月刊連載なら無理のないペースでできる

 これまで、漫画家の間には「週刊連載がないと漫画が描けない」「毎週1回の締切があるスリリングな状況だからこそアイディアが浮かぶ」という意見もあった。漫画家によって執筆のペースは異なるため一概に何が正しいとは言えないものの、実際に週刊連載を経験したことがある漫画家がこう語ってくれた。


 「自分もそうですが、多くの漫画家さんはアーティストだと思う。締切がないと、際限なく手直しをしてしまうでしょう。大前提として、ある程度の妥協点を見出して、創作に区切りをつけるために締切は必要だと思います」


 しかし、そんな漫画家でも「週刊連載はハイペースすぎてキツイ」「二度とやりたいとは思わない」と言い、このような提案をする。


 「これが半年に1回、年に1回だと間隔があきすぎて、数か月はきっと遊んで終わっちゃう。週刊はハイペースすぎるけれど、1ヶ月に1回とかならアリなんじゃないか。要は月刊連載のペースなのだけれど、インプットとアウトプットのバランスがちょうどいいと僕は思う」


 ちなみに、この漫画家が危惧することがある。「週刊連載の漫画家と同じ状況に陥っているのがYouTuber」なのだという。


 「誰とは言えませんが、動画を毎週何本もUPしているYouTuberは明らかに疲弊しているし、顔色が悪く、さらに投げやりな企画が目立つ例もあります。果たしてYouTuberはどこまで続けられるんですかね。倒れなければいいのですが…」


  第一線で活躍するクリエイターにスピーディーな更新が求められる状況は変わらないのかもしれないが、果たして漫画の週刊連載は必要なのか。様々な方面から議論が起こるべき時期に来ているのではないだろうか。連載中に血を吐いた、何日も徹夜をしたなどのエピソードは、かつては漫画家自身もネタや武勇伝として語っていることがあったが、現代ではそうもいかない。漫画家の働き方改革も急務と言っていいだろう。


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  • 雑誌連載はないがラノベは短いサイクルで文庫を書いていかないと続かない。そしてどのレーベルも毎月新作がスタートする。そして多くの作家は消え去っていく
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