勝ちパターンに食い込めるか ヤクルト両右腕の見据えるカタチ【夢追うツバメたち】

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2023年05月02日 07:21  ベースボールキング

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リリーフの一角としてヤクルトを支える大西(左)と木澤(右)
◆ 第43回:勝利のバトンをつなぐ

 ヤクルトは4月最後のゲームとなった30日の阪神戦(神宮)で久々に勝ちパターンの継投で逃げ切った。

 7回に石山泰稚、8回に清水昇、9回に田口麗斗が登板。先発の吉村貢司郎から受け取った勝利のバトンをつなぎ、連敗を「7」でストップさせた。


 リリーフ投手の重圧は計り知れない。たった1球が敗戦の引き金になることもある。

 そんな過酷なポジションを担い、さらにその先の勝ちパターン入りを狙っている右腕がいる。プロ3年目の木澤尚文だ。昨季はリリーフで9勝を挙げ、今季はここまで10試合に登板して防御率0.93の成績を残している。

 4月20日の中日戦(神宮)では2−2と同点の6回に2番手として登板し、二死一・三塁のピンチを背負ったが、最後は左打者のソイロ・アルモンテを内角へのシュートで空振り三振に切って取った。

 最後の1球は、打者の体に近い位置からストライクゾーンへ曲げる「フロントドア」だった。

 木澤はこのフロントドアについて「去年のシーズンも試しながら使ってはいたんですけど、オフシーズン、キャンプ通して左の内側というのをちゃんと突けるように練習していたので、練習していたことがあの場面で出たのが良かったなと思っています。選択としてすごい信頼の置ける(ボールの)ひとつになってきた」と、自信を深めている。

 この試合は、木澤を含め5人のリリーフ陣がマウンドに上がり、無失点に抑え込んだ。そして延長11回、中村悠平のサヨナラ打が飛び出して3−2で勝利を収めた。

 試合後、木澤は「中継ぎが粘れば今日みたいに勝てる試合が転がってくると思う。そこも僕らのやりがいのひとつだと思うので、引き続き頑張っていきたい」と、力強く語った。


◆ 「寝て起きたら大丈夫」気持ちを切り替え

 スコット・マクガフが抜けたことで、今季のチームの勝ちパターンはどうなるのか、そして誰がクローザーを務めるのかがひとつのポイントとなっていた。

 木澤は2月の春季キャンプのときに「抑えのチャンスはそんなにない」と話し、「7回をまず掴めるように。勝ちパターンで去年は投げていないので、9回よりまずは7回を任せてもらえるようなピッチャーになっていかないと」と、冷静に自身の立ち位置を見つめていた。

 4月26日のDeNA戦(横浜)では1−1の同点で迎えた7回一死一・二塁でマウンドに上がった。カウント1−2と追い込みながら、4球目のカットボールを戸柱恭孝に打ち返され、勝ち越しの3ランを献上してしまう。

 「1、2球目もカットボールを投げていい追い込み方ができたんですけど、そのボールよりも高めに浮いてしまったので、(打者に)うまく反応されてしまった。次同じような打たれ方をしないように、うまく反省して次につなげていくしかないかなと思っています」

 翌日、反省点を口にした木澤。失敗も糧にしながら、気持ちを切り替えて次の登板に臨んでいる。

 「リリーフという立場上、毎日出番の可能性があるので、そこも強制的に切り替えられるというか、そういうところはリリーフとしての性に合っているところかなと思います。もう寝て起きたら大丈夫です」

 昨季はチームに流れを呼び込むための重要な局面でマウンドに上がってきた。今季さらなる飛躍を遂げ、勝ちパターンに食い込むチャンスを掴みたい。


◆ ロングリリーバーの大西広樹「上に、上に」

 強いストレートが持ち味の大西広樹も、勝ちパターン入りを目指している。ここまで7試合に登板して防御率2.31の成績を残しているプロ4年目の右腕だ。

 その大西にとって、4月12日のDeNA戦(神宮)は苦い登板となった。この日は、8回二死一塁から左打者の佐野恵太に内野安打を許すと、同じく左の楠本泰史には適時二塁打を浴びて2点を献上してしまった。

 左打者対策をしていた中での失点を悔やんだが、「その次の試合からは吹っ切れたというか、いい感じで投げられている」と、4月20日の中日戦(神宮)で2回をパーフェクトに抑えて、今季初勝利を手にした。

 ロングリリーバーとしての役割を果たす大西。イニングをまたぐ投球が続くが「仕事があると思ったら全然。気合い入れて投げるだけ」と話す。

 「今はロング(リリーフ)という役割なので、そこはそこで頑張って、上に、上に行きたいので、(勝ちパターンでの)6回、7回というところは目指したい」と、前を見据えている。

 伊藤智仁投手コーチは、勝ちパターンに関して「固定できればベストかもしれないですけど、チームの方針的にも連投したら違うピッチャーが行きますし、その辺は色んなピッチャーにチャンスがあると思うので、それを生かすかどうかというのは選手次第だと思います」と話していた。

 どんなカタチでもチームに貢献したいという思いは変わらない。それでも、ひとりのリリーフ投手としてさらなる高みを目指していくことが、チーム力の活性化につながっていくはずだ。


取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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