関西発のイノベーション、スタートアップを支援する施設が誕生1周年を迎える

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2023年05月15日 10:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
NTT西日本が運営するオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(以下、クイントブリッジ)」が開業1周年を迎え、新たにオフィスエリアをオープンした。同社はこれから、スタートアップとどのような共創を行っていくのだろうか。4月25日の成果報告会から探ってみよう。


○クイントブリッジ開業から1年間の成果



クイントブリッジは、スタートアップ・学生・企業・研究者たちが出会い、交流し、新たな価値を創造していく「共創拠点」として2022年に誕生。


開業1周年を記念した成果報告会では、3月に同施設3階にオープンしたテナントオフィスと入居者用コワーキングスペースも公開された。


NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員 森林正彰氏は、「私どもはクイントブリッジを使ったウェルビーイングな未来社会の実現を目指しています。業界の課題、地域の課題、そして未来社会を作っていくんだという大きな目標を掲げてやっております」と述べ、一年の活動を振り返る。


本施設の理念は「Self as We」。"「私たち」を主語に、より良い未来を共創する"という意味が込められているという。この1年で法人会員は670組織まで増加。うち68%がスタートアップであり、また企業のみならず大学や自治体の参加もある。



1万人を超える個人会員の年齢層は15〜81歳まで幅広く、他のオープンイノベーション組織やベンチャーキャピタル、地域金融機関との連携も進み、46組織がパートナーとなった。


会員の活発な活動も注目すべき点だ。昨年度はイベント・プログラムが384回開催され、延べ7.2万人が参加した。その約6割が会員主催・共催であり、“共創拠点”としての役割を存分に果たしていることが伺える。

○関西発のスタートアップを生む取り組み



クイントブリッジは関西市場の活性化にも寄与している。



スマートシティやロボティクス、モビリティ、AI、ヘルステックといった注目領域における多数のスタートアップが「この市場で何かやりたい、つながりたい」と訪れて講演したり、次世代を担う起業家の活躍の場を作るため、学生によるビジネスプランや商品開発アイデアのコンテストも実施したりする。



また、さまざまな主催のもと、関西からグローバルで活躍できるスタートアップを作るためのイベントも行われているのだ。


「NTTグループがいま推進しているコミュニケーション基盤『IOWN』のネットワークを使った、さまざまなイベントも行っています。ひとつは『サントリー1万人の第九』。メイン会場である大阪城ホールに合唱団を呼び、東京の別会場にも100人ぐらいの合唱団に来ていただいて、ネットワーク越しに合唱を行いました。それから吉本興業さんと共同でやらせていただいた『未来のお笑イブ!!』。等身大モニターを置いて、ボケとツッコミを別々の場所でする漫才を行いました」(森林氏)


続けて森林氏は、スタートアップとの共創によってNTT西日本グループの事業をバージョンアップさせるビジネス共創ピッチ「Business Match-up For Next Value」の取り組みについて触れる。



第1回ではビジネスチャット「elgana(エルガナ)」の連携サービスを募集し、18社の応募のなかから3社を採択。そのうちの1社であるSpecteeのサービスを実装し、4月20日に展開したという。



すでに第2回も行われており、今後も随時開催予定とのこと。NTT西日本グループが始めた事業をスタートアップが広げていくという試みは、いわば1を10にする取り組みと言える。


さらに、0から1に「新しいビジネス」を作り出す取り組みとして、未来共創プログラム「Future-Build For Well-being society」も進められている。

2022年度には健康・生活・経済・環境という4つのテーマでビジネスプランを募集。101社の応募の中から10社を採択し、うち2社の提案が事業化検証フェーズへ移行しているそうだ。



そして森林氏はクイントブリッジ2年目の提供プログラムについて言及。



共創のスパイラルを実現するため、NTT西日本は「学ぶ」「つながる」「共創する」という3つの軸を作った。このうち、「学ぶ」における新しいプログラムが「We Leb.」だ。会員が知識や経験を持ち寄り、教え学び合うことで、まったく新しい学びを得ることを目指している。


またグローバルと関西、最先端テクノロジーと関西との結びつき強化のため、6月1日に「Global&Technology Day」を開催すると言う。



イスラエル大使館との共催で行われるイスラエルベンチャーのピッチや個別商談、NTTコミュニケーション化学基礎研究所による最新研究成果の体験などが行われる予定だ。最後に、スタートアップに向けたファイナンシャルサポートについて触れ、森林氏は講演を終えた。

○3階はスタートアップが入居できるオフィスエリア



施設3階にオープンしたオフィスエリアは、テナントオフィスと入居者用コワーキングスペースとして利用される。



1〜2階は会員が交流のために一時的に使う無料スペースであるが、こちらはスタートアップが本拠地として入居し、事業を営むスペースだ。



コンセプトは「Nest(巣)」。ここでNTT西日本や他の会員とともに事業を作り、成長させ、将来的に外へと羽ばたいていってほしいという思いが込められている。


スタートアップが入居する個室「Nest Office」のうち、2023年4月末の段階で空き室6つ。これらの部屋の面積はおよそ11〜14平米で、入り口にはカードリーダーを用いたセキュリティシステムを完備している。NTT西日本やクイントブリッジに好影響を及ぼすと判断された企業が入居可能だ。


賃貸料は見積もり後に決定されるが、共益費、水道光熱費込みで概ね4〜5万円(税別)。契約期間は1年となる。1・2階の営業時間は9〜21時だが、3階は24時間365日利用可能だ。



ここを本社として登記することで、所在地を「NTT西日本 QUINTBRIDGE」にできるという。すでに入居済みの大きな部屋もあり、一番広い部屋の賃貸料は約20万円とのこと。


そして、NTT R&D(研究開発)の大阪オープンルームとして、「NTT IOWN総合イノベーションセンタ」も用意。



ここでは「IOWN」を初めとしたNTTグループの最先端技術にダイレクトに接続可能だ。発表会当日は、遠隔診療を可能とする「AI-テレ聴診器」が紹介されていた。体表面で捉えた電気信号と音を解析し、心機能の異常や心臓の状態を推定するというデバイスだ。こういった技術にいち早く触れることができるのも強みだろう。


スタートアップをアーリーステージから支え、関西という地域の活性化をも目指して作られたクイントブリッジ。



NTT西日本は、同社と一緒にサービスを作れる、社会課題解決ができるスタートアップへの出資に意欲的だ。3階のオフィスが手狭になるほどの成功を収め、ゆくゆくは世界へと広がるサービスがここから生まれることに期待したい。(加賀章喜)

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