ドゥカティの異端児「ディアベル」が新型に! 4気筒エンジン搭載の理由とは?

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2023年05月22日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
スーパースポーツのイメージが強いドゥカティの中で、クルーザースタイルを持つ異色の存在「ディアベル」がモデルチェンジした。エンジンを2気筒から4気筒に積み替えるなど全面的な進化を果たした新型は、どんな仕上がりなのか。凝った演出の発表会を取材し、実際に乗ることもできたのでレポートしよう。


○発表会場にストレッチマシンが!



イタリアのボローニャで創業したドゥカティといえば、スーパースポーツの車種を中心に据えてきたことで知られる。レースでも活躍しており、2022年はロードレース世界選手権モトGPクラスでライダー、コンストラクターともにタイトルを獲得した。



だからこそ、2011年にデビューした「ディアベル」は、ドゥカティ初のクルーザータイプだったこともあって話題を集めた。



車名のディアベル(diavel)は「悪魔」を意味するイタリア語であり、かつてランボルギーニの車種名にも使われた「ディアブロ」のボローニャ訛りだという。ちなみにドゥカティは翌年、ランボルギーニと同じフォルクスワーゲングループのアウディ傘下になった。



車名が示すとおり、ディアベルはゆったりとクルージングを楽しむタイプのバイクではなく、1,198ccの水冷L型2気筒エンジンがもたらす強烈な加速や見た目以上にシュアなハンドリングなど、イタリアンらしいスパイスを盛り込んだ1台に仕上がっていた。



見方を変えれば、ドゥカティならではの走りの世界を、リラックスできるライディングポジションや低めのシートとともに味わえるマシンに仕上がっていたわけで、これまでのドゥカティとは違うユーザーを取り込むことにも成功した。



2016年にはフレームを一新するとともに排気量を1,198ccから1,262ccに拡大した「Xディアベル」が登場。3年後には基本設計を受け継いだ「ディアベル1260」に移行した。昨年までの12年間で販売台数は累計4.5万台以上というヒット作だ。



この流れを受け継いで登場したのが3代目となる「ディアベルV4」だ。インポーターのドゥカティジャパンはデビューを記念し、2023年3月に東京都内のホテルでローンチパーティーを開催した。



会場には車両だけでなく、同じイタリア生まれのフィットネスマシンが並び、トレーナーの指導で筆者を含めた参加者がストレッチを行うというメニューもあった。クルマやバイクの発表会は数えきれないほど参加してきたが、会場でストレッチしたのは初めてだ。


○エンジンをV型4気筒に切り替えた理由



発表会にはドゥカティ デザインディレクターのアンドレア・フェラリージ氏がオンラインで登場。同氏によれば、ドゥカティのデザインがユニークな理由は「明確なデザインガイドラインに従っている」からだという。デザインの哲学としては「極限まで減らす」という言葉を使った。



新型ディアベルV4のデザインコンセプトについては「スーパースポーツ」「スポーツネイキッド」「クルーザー」の3つを巧みに融合したとのこと。会場の演出もそうだが、ディアベルが癒し系クルーザーとは一線を画した車種であることが理解できた。



エンジンは車名が示す通りで、新型はV型4気筒エンジンを積む。モトGPマシン由来のこのエンジンは、スーパースポーツの「パニガーレ」にまず搭載された後、他の車種への展開が進み、今回ディアベルへの搭載が叶った。

従来は前にも紹介したように、ドゥカティのアイデンティティだった「Lツイン」を積んでいた。90度のバンク角を持つV型2気筒の、前側シリンダーを水平近くまで倒したレイアウトだ。



Lツインを採用していた理由は、後方シリンダーの冷却をよくするため。しかし近年は、水冷化されたことでメリットが薄れ、逆に前後長があり、エンジンを前寄りに積めないことがハンデになっていた。そこで順次、V4に切り替えつつあるようだ。



排気量は1,158ccとLツイン時代より小さいが、最高出力は124kW/10,750rpm、最大トルクは126Nm/7,500rpmと前者についてはアップしている。後ろ側のシリンダーを休止する機構も導入しており、燃費向上のほか、ライダーに伝わる熱の低減、デュアルトーンの排気音などを実現しているとのことだ。



昨年のミラノ国際モーターサイクルショーで「Most Beautiful Bike」の称号を獲得したデザインは、日本輸入自動車組合(JAIA)が4月に開催した輸入二輪車試乗会・展示会でじっくり確認することができた。


最初に感じたのは、イタリア車らしくディテールへのこだわりにあふれていること。とりわけ、リアカウルの裏側ほぼ全面がドットで光るテールランプは斬新そのものだ。マフラーもポイントで、右側に短く4本をまとめている。4気筒であることがひと目でわかる演出だ。


一方でエンジンがコンパクトになり、フレーム構造がパイプを溶接したトレリスタイプからV4各車に使われるモノコックになったこともあって、真横からの眺めはすっきりした。



エンジンのコンパクト化にともない、燃料タンクの前後長も短くなった。そのためもあってライディングポジションは自然。シートが前後に20mm長くなり、ハンドルは20mm手前に移動したとの説明があったが、その効果を実感した。



水冷4気筒化したにもかかわらず、車両重量は先代より13kg軽い211kgとなっている点もポイント。おかげで堂々とした見た目とは裏腹に、取り回しは苦労しなかった。



軽い車体にパワフルになったエンジンを組み合わせているわけだから、加速は強烈そのもの。4つあるライディングモードが標準の「ツーリング」のままでも、フル加速すると手がハンドルから離れてしまいそうなほどだ。


音も特徴的だ。基本的に同じエンジンを積む「ムルティストラーダV4」に乗った際は終始滑らかだったが、ディアベルは対照的。低回転ではLツインを思わせる「ドコドコ……」という鼓動を伝えてくる。



でもスロットルを大きく開けると滑らかに吹け上がった。おそらく気筒休止の作動によってフィーリングが変わるのだろう。それをドゥカティらしさの表現に使うあたりが面白い。



加速には驚いたもののハンドリングは素直で、乗り心地は硬すぎず、クルーザーらしい寛容性も備えていることがわかった。



前述のようにポジションは自然だし、シート高は790mmとドゥカティでは低め。デザインと加速は刺激的だが、それ以外はむしろ乗りやすさが印象的だった。これまで以上に人気を集めそうに思えた。



森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)
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