砂漠の猛獣だ! ランボルギーニ「ウラカン ステラート」で米国西部を激走

1

2023年05月25日 11:42  マイナビニュース

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ランボルギーニがスーパースポーツカーの「ウラカン」をオフロード仕様に仕上げた? 実物を見てもにわかに信じがたい話だが、ランボの新型車「ウラカン ステラート」は本当に悪路を走れるのか。カリフォルニアの砂漠で実力のほどを確かめてきた。


○スタイルからして普通じゃない!



この世の中、「不可能を可能にした」事例は数あれど、今回のウラカン ステラート(以下、ステラート)は、まさにそれを地でいくハイパフォーマンスモデルだった。なにせ、地を這うようなスタイルのスーパースポーツカーの車高を上げ、さらにはオフロードタイヤを履かせることで、どんな場所にも最も速く到達できるクルマに仕上げたのだから。


ステラートのエクステリアは、フロントに取り付けられた角形2灯のLEDフォグランプ、四輪のホイールアーチにビス留めされた巨大なオーバーフェンダー(カーボンと樹脂の複合素材製)、オフロード走行時に埃を吸い込まないためルーフトップに取り付けられたエアスクープ、耐加重40kgの「Sterrato」ロゴ入りルーフレール、下回りでは前後のアンダープロテクションと強化されたサイドステップなど、オフロード仕様の特別装備が特徴的だ。最も目をひくのは悪路走行に対応するためブリヂストンと共同開発したランフラットの「DUELER AT002」タイヤで、サイズはフロントが235/40R19、リアが285/40R19となる。悪路走破に向け完全武装したその“ビースト”ぶりは、見るものを圧倒するほどの迫力がある。


2シーターの背後には頑丈なロールケージを装着。その後ろには、ランボルギーニ最後の純内燃機関モデルとなるべく5.2リッターの自然吸気V10エンジンを搭載している。最高出力610PS/8,000rpm、最大トルク565Nm/6,500rpmは今でこそ驚くような数字ではないものの十分に強力。7速DCTとの組み合わせで性能は0-100km/h加速3.4秒、最高速度260km/hとなっている。


○1粒で2度おいしい?



試乗コースは砂漠の真ん中にある「チャックワラバレー・レースウェイ」。通常は1周3.75kmのアスファルト路面コースなのだが、今回は半分が本コース上、残り半分はコースから脇にそれたダート路面になっていた。ステラートの試乗に合わせた特別なステージだ。



試乗前には、アスファルト上では「スポーツ」モード、ダート上ではステラートで新設定の「ラリー」モードを使用するようにとの指示があった。助手席にはテストドライバーのジャコモ・バッリ氏が座り、ヘルメット内のインカムを通じてシフトやアクセル操作、ブレーキングポイントなどを指示してくれる。


さて、肝心のダート路面でのステラートについて結論からいうと、もう「楽しい!」の一言。トルクベクタリングやダイナミックステアリング、オールホイールステアリングなどの制御装置を統合制御する改良型の「LDVI」(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)、高められた車高に合わせて増大したサスペンションのストローク、機械式のリア・セルフロッキングディファレンシャルを組み合わせた電子制御の四輪駆動システムなどにより、2速と3速(50km/h〜90km/h)で駆け抜ける砂地のコーナーではオーバーステア気味の姿勢のまま、コースを飛び出しそうな不安を全く感じさせることなく豪快に駆け抜けてくれる。といってもヘルメット内には「ガス! ガス! ガス!」というジャコモ氏の声が絶えず聞こえてくる。もっと踏み込んでも大丈夫。「ドント、アフレイド!」とのことだ。


それでは、ブロックタイヤによるアスファルトの高速コーナーでの身のこなしやいかにと思いつつ、最終のS字コーナーに120〜130kmで進入してみると、ノーマルのウラカンでは発生しないようなわずかなロールを許すものの、タイヤはヨレることなくスルリとクリアしていく。ストレートに入るとそのままグイグイと加速し、190km/h以上まで車速を伸ばしてくれた。


自分の走行シーンについては座席背後のカメラで撮影されていて、テレメタリーシステムと専用アプリを通じ、走行後すぐにスマホの画面でチェックできるのだが、これも楽しい。ギアやアクセル開度、加速度などの細かいデータが分析できるので、次の周回に向けての修正点などがただちにわかる。ちなみに、けっこう頑張ったと思っていた筆者の画面を見てみると、同じクルマを操っていた他国のジャーナリストの方が断然速く、ちょっと落ち込んだことも報告しておく。


○普通に走れば優れたツアラーに変身



その日の午後は、サーキット周辺に広がる砂漠地帯の「ジョシュア・ツリー国立公園」を縦断し、約200kmの一般路を走って帰路につくというドライブコースが設定されていた。公園内の道路は舗装の状態があまりよくなく、ところどころに凹凸があるので油断はできないのだが、車高が高いおかげでお腹を擦る心配がなく、けっこうなハイペースで駆け抜けることができた。タイヤのブロックパターンによるロードノイズは少々気になったけれど、エアボリュームのある19インチタイヤを履いているので、乗り心地がいいところは高評価だ。



途中の「ジャンボロックス・キャンプグラウンド」付近では、超巨大な岩を道路の奥に発見。そこにいくまでには砂地の小道を走行する必要があったのだが、ステラートなら朝飯前にやってのけられる。難なく到達し、無事に記念撮影をすることができた。


ホテル到着までの3時間半のロングドライブを全く疲れなしにこなせたのは、このクルマがツアラーとしての素質も十分に併せ持ったスーパーカーである証拠だ。設計メンバーの1人でイタリアから来ていたランボルギーニのミーティア・ボルケート氏は、「ウラカンはステラートの登場によって、異なる3つの個性が発揮できるようになりました。すなわちサーキットに向いたSTO、オンロードに向いたテクニカ、そしてあらゆる場所で速く走れるステラート、という住み分けです」と話していた。



最初に聞いた時は「冗談でしょ?」と思ったウラカンのオフロード版というコンセプト。実際に走ってみたら、それはそれはすばらしいクルマに仕上がっていた。ちなみにこのステラート、価格は3,165万円で1,499台の限定生産となっている。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)
    ニュース設定